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長編8
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白い毛

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これは実母と私が体験した不思議な出来事です。

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実家では、20歳の高齢の雌猫「トントン」を飼ってました。

真っ白い毛並みで、実母が溺愛してました。

自分は結婚で数年前に実家を離れたのですが、実家は同じ市内だったので、実家を訪れた時に、名前を呼ぶと膝の上に乗ってくる可愛い猫でした。

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ある日の事です。

寒い師走も近い、11月の終わり頃でした。

高齢のトントンは、風邪を引きそこから体調が悪くなりました。

高齢という事もあり、免疫力も低下していて、ビタミン剤等を服用していたのですが、実母の介護も虚しく、師走に入った12月の初め、老衰のために亡くなりました。

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ペット霊園でのお葬式も済ませ、遺骨を持ち帰り小さな仏壇を用意しました。

小さな仏壇にトントンの写真を飾り、毎日毎日、トントンに語り掛ける実母。

そんな毎日が、半年ほど続いた梅雨の6月の事…。

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実母から、家で変な事が起きていると、連絡が入り、休みの日に朝から実家へ出向きました。

部屋に入ると、実母からこう聞かされました。

「トントンが愛用してた小さな座布団なんやけど、いくらコロコロしても白い毛のようなモンが付くんよ。

コロコロした日の次には、必ず白い毛が付いてるんよ。

トントン…まだこの家におるんやろか…」

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余程悩んでいたのか、憔悴しきった表情で、目をウルウルさせながら話してくれた。

仏壇の横に、トントンが愛用していた小さな座布団が置いてある。

座布団を見ると、確かに猫の毛のようなモノが付いている。

気のせいだと思ったが、そうでもなさそう。

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実母は座布団を見ながら泣いてるし、明日も休みという事で、旦那に実母の事を話した。

「泊まっておいで」

という事で、旦那の了承も得たので、一晩実家に泊まる事にした。

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その前に、旦那と子供達の夕飯を作る為に、一旦自宅へ戻り、子供達に事情を話し、再び実家へと向かった。

久し振りに、実家に泊まる。

軽く夕飯を済ませ、実母が出してきた私の子供の頃のアルバム等を見ながら居間で話をしていた。

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写真には、必ずと言っていいほど猫が写っていた。

幼稚園の頃から猫を飼い始め、亡くなったトントンは5代目。

5匹のうち、一番長生きしたのはトントンだった。

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最初飼っていた猫は「みぃ」という、茶トラの雄猫だった。

外を行き来する猫で、私が小学2年の夏、車に跳ねられて亡くなった。

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次に飼った猫は「チェリー」と名付けた雌猫。

このチェリーは、みぃが亡くなった3ヶ月後、近くの公園で私が学校帰りに拾ってきた猫だった。

このチェリーもみぃと同様、車に跳ねられて亡くなった。

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私が小学5年の頃だった。

ほどなくして、再び猫が家にやってきた。

白と黒の毛並みの雄猫で、近所の人が迷い猫で飼えないから飼って欲しいと連れてきた。

名前を「マイケル」と名付けた。

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このマイケルは、完全な家猫で外を怖がり絶対外へは出なかった。

それが良かったのか、14年も長生きしてくれた。

マイケルが13歳の時、隣のアパートに住む女性が5歳の2匹の猫を飼っていた。

真っ白な毛の「トントン」と真っ黒な毛の「カンカン」という、どちらも雌猫。

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2匹とも避妊は済ませていたらしく、結婚で県外に行く女性は、猫を一緒に連れて行けないという理由で、愛猫を猫が大好きな実母に飼ってもらおうと頼みに来た。

マイケルの事もあったが、穏やかな性格のマイケルともすぐに打ち解け、新たに2匹の猫が家族となった。

翌年マイケルが老衰で亡くなり、その5年後、カンカンは内臓系の病気になり他界。

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そして、トントンだけとなった。

私は、トントンが6歳の時に結婚して実家を出た。

それから、実母はトントンと共にこの実家で暮らしていた。

書き忘れたが、父は私が幼稚園に通う前に、事故死している。

それなので、悲しいことに父との思い出は殆ど無い。

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アルバムを見ながら、昔話に花を咲かせて、時間も夜10時を過ぎていたので、床に入る事にした。

私が使っていた部屋は物置になっているので、居間に布団を敷いて寝る事にした。

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深夜2時。

世間では丑三つ時と呼ばれ、霊などが活発に動きまわる時…。

その時、居間の硝子戸が、風もないのにガタガタ音を立てた。

その音に私は目を覚まし、起きてしまった。

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暗がりで、部屋の周囲が良く見えない。

暫くすると目が暗さに慣れてきて、部屋の中が薄っすら見えてきた…。

すると、キッチンに通じる硝子戸が少し開いている。

変だな…。と感じながら、居間の周囲を見渡すと、フワフワした白い浮遊物が床上5センチ辺りで動いている。

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その浮遊物が、居間の扉をすり抜けた。

物音を立てないように扉を開けたら、浮遊物が一つの部屋の前で止まっている。

その部屋は、実母が寝ている和室だった。

和室に入るか入るまいか迷っているかのように、左右をウロウロしている。

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私は思い切って声を掛けた。

「トントンなん?」と…。

私の声に反応したのか、浮遊物は一瞬だけ動きを止めた。

その瞬間、母の寝室の和室へ一度入り、その後出てきたと思ったら、猫のような形になったと思った時、凄い速さでキッチンの方へ消えていった。

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部屋の灯りをつけて、キッチンへ行ったがそこは何もなかった。

しいて言えば、トントンが食事をしていた場所があるくらい。

当然、餌入れや水入れは置いてないが、マットはそのままの状態で敷いてある。

そして、キッチンに敷いてあるマットを見たら、マット全体に真っ白な毛が付着しているのに気付いた。

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時間は夜中の3時。

私は寝ている実母を起こし、キッチンのマットについて尋ねた。

実母は起き上がり、寝ぼけた状態で私と一緒にキッチンへ行き、マットを実母に見てもらった。

すると、突然泣き崩れた。

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このマットは、一畳ほどの大きさがあり、夏の暑い時期は、このマットの上でトントンが寝ていたそうだ。

「お母さん、トントン成仏してないんじゃないの?」

「どうして?」

実母に事情を話した。

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硝子戸のガタガタ音。

閉めていた硝子戸が開いていた事。

白い浮遊物が居間の扉をすり抜けた事。

浮遊物が、実母の寝室の前で部屋に入るか入るまいか迷っていた事。

そして、私に名前を呼ばれ、その瞬間、寝室に入った事。

その後、浮遊物が一瞬猫のような形になった事。

その後キッチンに向かった事。

見た事全てを話した。

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実母は泣きながら「ちゃんとお葬式したんよ?成仏してないやなんて…」

「お母さん、それ違う!

毎日毎日トントンの事ばっか考えてたんよね?

それで身体も疲れてるよね?

そんなお母さん見てたら、トントンも天国に行けんよ!

虹の橋を渡れずに、この家から出られんとよ!」

「そんなぁ〜…」

実母は、その場に崩れ落ちた。

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「お母さんの事が心配で、お母さんが居間にいる時は座布団に座って、

キッチンで料理作ってる時は、このマットに座ってお母さんの事を守ってるんだと思う」

「じゃあどうして寝室には…」

「お母さん昔から、トントンが寝室に入らないように強く叱ってたよね?」

「…そうやったわ」

だからあの時、寝室に入るのを躊躇っていたのだろう。

「お母さん…新しい家族を迎えたら?」

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そうなのだ。

今まで、飼っていた猫が亡くなると、新しい家族が必ず現れる。

拾ってきたり。

他の人から託されたり。

しかし今回は、実母のショックが大きく、猫すら寄せ付けなくなっていた。

「でも、トントンが…」

「トントンが亡くなって、お母さんの辛い気持ち分かる。

分かるんやけど、死んだトントンは戻らん。

今も部屋のどこかで、トントンは見てるんよ?

お母さんの事が大好きだったトントンがっ!」

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「トントン…新しい家族…必要?

アンタはそれでいいん?」

実母がこの言葉を発した時、居間から何かが倒れる音がした。

二人で居間へ行くと、仏壇に飾ってる写真立てとその横に置いてあった遺骨を入れた袋が、座布団に落ちていた。

前に倒れるなら分かるが、真横の座布団に落ちているなんて不思議な事が起きた。

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「トントンも辛いんよ?」

私が話したら、居間の電気が一瞬点滅した。

「ほら、トントンやっぱりこの家に居るんよ。お母さん!」

私は、そばで泣き崩れる実母を抱き締めた。

「な?新しい家族、迎えよう?」

「そうやな…そうするわ…」

これで、新しい家族を迎える事にして、この日はそのまま朝まで寝た。

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翌日、実母と話し合って、その日の内に街中にある猫カフェを尋ねた。

すると、真っ白な毛並みの猫が、受け付けをしている実母の足元にきて、実母の足を猫パンチしている。

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係の人が、その猫を抱き上げようとしたら「シャーッ」と、猫パンチをして威嚇している。

「あらあら、普段は穏やかな子なのに…」

係の人は、申し訳ないという表情で、実母に謝った。

「普段はどんな子なんですか?」

私が尋ねると、猫カフェには10匹の猫が居るが、その中でも一番大人しく、懐いてない人には近寄らないらしい。

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これは、ひょっとして…と思い、猫カフェに来た理由を係の人に話してみた。

すると、納得したのか、その場で里親の話が即決した。

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通常はトライアル期間もいうモノが設けられていて、猫と飼い主の気が合うか合わないかを一ヶ月ほど試験的に飼育をするという。

それでその後、飼い主に相応しいという事が分かった時点で、晴れて里親になれるというモノだった。

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しかし今回は、異例中の異例で、その場で里親に決まる事はまずないらしい。

実母が里親になれた理由は、懐かない猫が実母に即座に懐いてしまった事。

現に、実母の膝の上に座り!喉をゴロゴロと鳴らして安心しきった状態で寝ている。

この猫は何度かトライアルを経験してるが、猫の方が飼い主に懐かずトライアル終了という結末を迎えていた。

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キャリーケースを持ち合わせてなかったから、後日実母だけ猫カフェを訪問し、無事に真っ白な毛並みの猫は実母の愛猫となった。

名前を「マシュマロ」と名付けて、現在も実母と暮らしている。

当然だが、私には懐いていない(笑)

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座布団とマットの白い毛付着の件は、マシュマロが現在使っている為、真相は闇の中…というか、マシュマロが来たことで、トントンは成仏し無事に虹の橋を渡っていると思ってます。

トントンの遺骨はペット霊園に納骨して、命日の日に実母と共に手を合わせに行っています。

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ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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ちゃあちゃん様。
コメントありがとうございます。
トントン、母が溺愛してましたからね。
本当、猫を亡くした時の辛さは、猫でしか癒せないと思います。
亡くなった猫が可哀想と思う人も居ると思いますが、亡くなった猫を思いふけるのも、亡くなった猫が可哀想だと私は思いますね。

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トントン、お母さんが心配だったんですよね‥私も1人暮らし始めて最初に猫が亡くなった時は毎晩泣いてましたが、獣医さんに、「そんなんじや安心して天国に行かれんやんか」って言われました‥猫を失った悲しみは、猫でしか癒せないって、ある漫画家さんも仰ってました。猫って愛おしですよね(^^)

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光道進さん。有難う御座います。
私のなんてまだまだです。
体験してない人にしてみれば、やはり怖いないようだと思いますよ…自分でも(笑)
今、猫の怖話を下書き中ですが♪
書いたらお知らせしますね!

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まさりんさん
すごいですね。14も恐いが着いてる
でも、本当に怖いですね。
また、私もめげずに載せました。
読んでください

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まさりんさん
新しいもの載せました
読んでください。

返信

光道 進さん。コメントありがとうございます。

いい話だと書いて下さりありがとうございます。
猫の話で思い付く話は沢山あります。
他にもあるので書き溜めたら載せるつもりです。

新しいお話、書かれたら読んでみたいです。

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みけさん。コメントありがとうございます。
マシュマロ。
可愛いのに、私が実家に行くと、物陰に隠れて出てきてくれません(笑)
母命なので、大切に育てています♪

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初めまして。
良い話でした。猫にまつわる話は2つほど書いてますが、まだ載せてないです。
3つ目の話を書こうと迷ってましたが、マリさんの話を読んで、書こうと思いました。
内にも猫が2匹居ます。まだ生後6ヶ月の
マネキ雌と2歳位のスワイ雌です。
書いたら載せますので見て下さい。

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そのうち マシュマロちゃんと仲良くなれるといいですね(笑)

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