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私が通っていた中学校は、100年を軽く超える古い中学校。
学校の七不思議も、いくつか知っている。
校庭に無数の手が生える。
学校が建つ前、お墓だったとか、そんな噂が流れた。
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体育館横の図書室が、夜9時になると電気がつく。
本が好きな生徒が夜9時に亡くなり、本を読みに来ているという噂が流れた。
その図書室の前の、外に建てられたトイレに和式トイレが四つある。
その一番端のトイレに、幽霊が出ると噂されたり。
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技術室のノコギリが、本数を数えたら足らなくなるとか…。
様々な七不思議があったが、その中でも1番怖かったのが、校舎4階にある音楽室の噂だった。
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音楽室は、校舎中央の階段を挟んで、南側がA室。
北側がB室となっていた。
A室は、授業で使う為の教室で、後ろの壁に有名な作曲家等の肖像画が掛けられていた。
B室は、コーラス部やブラスバンド部等の部活などで使われる為の教室で、A室より狭かった。
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その代わり、A室はと違ってB室は、室内の奥に楽器をしまう部屋が設置されていた。
各学年の校内合唱コンクールが開かれる時のみ、B室が開放される。
私はコーラス部に入っていたので、B室は部活でよく使っていた。
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中学2年のある秋だった。
部活で使用するため、職員室にB室の鍵を借りに行った時だった。
しかし、既に誰かがB室の鍵を持って行ったのか、鍵置きの場所に鍵がかけてなかった。
合唱コンクールが近いからか、別のクラスの子が借りたんだろうと、仕方なくA室の鍵を借りる事にして、4階に向かう為に階段を登っていた。
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時間は、夕方4時前だった。
職員室で鍵を借りた時が、夕方3時55分だったので間違いない。
3階を過ぎ4階に行く時、階段に足を乗せた瞬間、上の方から凄まじい霊気を感じ更に寒くなった私は足を止めた。
すると、ピアノの音が聴こえてきた。
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多分、合唱で歌う課題曲なのだろうと、霊気を感じなからも、階段を1段1段登っていく。
しかし、一向に歌声が聴こえてこない。
聴こえてくるのは、ピアノの音だけ。
階段は、コの字型で上に登る感じの作りで…。
私は、コの字型の中央に差し掛かった時、急に足がすくんでしまった。
霊感とか全く無く、とにかく怖さだけが残る。
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その場で立ち尽くしていると、後ろからコーラス部の先輩が駆け上がって来た。
「〇〇さん。何してるん?鍵あるなら貸して?先に行っとくよ?」
先輩は、私から鍵を受け取ると、霊気など何も感じないのかそのまま4階へと登って行った。
私も先輩に続いて、急いで4階へ駆け上がり、A室へと向かった。
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A室に着いた数分後、コーラス部の部員20人が集まり、12月に開催される市の合唱コンクールの為に課題曲を3回程練習した。
練習が終わると、顧問の先生が持ってきたレモネードを部員みんなで飲んでいる時に、世間話程度でB室のピアノの話をしてみた。
「鍵借りに行った時に、B室の鍵が先に借りてあってね?階段登ってる時に、B室のピアノが鳴ってて…」
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途中まで話した時に、今まで聴こえてこなかったピアノの音がB室から聴こえてきた。
20人の部員はざわめいた。
そして、ピアノの奏でる音を聴いていた時、顧問の先生が言った言葉で部員全員がパニックになった。
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「B室のピアノ…壊れて弾けんはずなんよ…弾けるのはエレクトーンだけなんやけどな…」
……………!!!!!!
この時、悲鳴が上がり、数名の部員がA室を飛び出した。
A室を出る時に、B室の内部がガラス越しに見える。
「誰かがおる!」とか…。
「あんな人、知らん!」とか…。
叫びながら、階段を駆け下りる。
私含む数名は、顧問の先生とA室に立ち尽くした。
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シーンと静まり返り、皆の息遣いだけがハッキリと聞こえてくる。
すると、ピアノの音が再び聴こえてきた。
私は「ヒャッ!」っと、小さな悲鳴を出してしまった。
この学校の七不思議、夕方4時に音楽室のB室から、ピアノの音が聴こえてくる。だった。
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「ちょっと見てくるから」
顧問の先生は、A室を出てB室に向かった。
私と他数名の部員は、A室の扉のガラスからB室の方を見た。
しかし、顧問の先生は直ぐに戻ってきた。
「鍵がかかっとる。中にも入れんし、声も掛けたけど…よぉ分からん」
首を傾げるだけだった。
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「幽霊なん?」
……………ガッシャーン!!!
一人の部員が顧問の先生に尋ねた時、A室の壁に掛けてあった作曲家の肖像画の両端二つが落ちて、額のガラスの割れる音がした。
「ギャーッ」
一人の部員が悲鳴を上げ「もぉ〜コーラス部止辞めるぅぅぅ〜!」と叫びながら、A室を飛び出した。
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顧問の先生が、落ちた肖像画を見に行くと、釘が腐っていたらしく、劣化して落ちたのだそうだ。
時間も夕方5時を過ぎて、辺りも暗くなってきた為、帰る事になって皆でA室を出る事にした。
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職員室に戻るまで、一言も会話もせず鍵を戻しに行くと、不思議な事にB室の鍵が鍵置き場に戻っていた。
職員室にいた先生に尋ねても、鍵を返しに来た生徒はいないとの事。
私等が先に鍵を返しに来た。
その間、B室から人の出入りはなかった。
顧問の先生も確かめたが鍵も掛かっていた。
私等より先に鍵が返す事は不可能。
これを目にした私は震え上がった。
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それから、今回と同じような事が何度か起こったため、コーラス部の部員は10人に減った。
私が卒業する頃は、2年の2人だけ。
新入生の入部もなく、来年度に廃部が決定となってしまった。
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今から2年前、学年合同の同窓会がお昼に開かれて、音楽室の話になり思い出話で盛り上がった。
同窓会の後、久し振りに中学校へ行ったら、色々な事が変わっていた。
校庭にあった、大きな大木が無くなっていたり。
職員の靴箱の場所が変わっていたり。
コ字型だった校舎が増築され、□の形になっていて、真ん中が中庭になっていたりと、18年も経てば変わるのも無理はない。
全校生徒も、私等の頃より少なくなった。
音楽室は職員室の隣に移り、音楽室として使われていた部屋は、物置部屋となっているそうだ。
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今でも、夕方4時にピアノの音はするのだろうか…。
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お
わ
り
作者真砂鈴(まさりん)
読んで頂きありがとうございます。
中学2年の頃の体験談です。
霊感はないのに、気配やらを感じるのは逆に怖いです。