【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編5
  • 表示切替
  • 使い方

音楽室B

wallpaper:1101

私が通っていた中学校は、100年を軽く超える古い中学校。

学校の七不思議も、いくつか知っている。

校庭に無数の手が生える。

学校が建つ前、お墓だったとか、そんな噂が流れた。

nextpage

体育館横の図書室が、夜9時になると電気がつく。

本が好きな生徒が夜9時に亡くなり、本を読みに来ているという噂が流れた。

その図書室の前の、外に建てられたトイレに和式トイレが四つある。

その一番端のトイレに、幽霊が出ると噂されたり。 

nextpage

技術室のノコギリが、本数を数えたら足らなくなるとか…。

様々な七不思議があったが、その中でも1番怖かったのが、校舎4階にある音楽室の噂だった。

nextpage

音楽室は、校舎中央の階段を挟んで、南側がA室。

北側がB室となっていた。

A室は、授業で使う為の教室で、後ろの壁に有名な作曲家等の肖像画が掛けられていた。

B室は、コーラス部やブラスバンド部等の部活などで使われる為の教室で、A室より狭かった。

nextpage

その代わり、A室はと違ってB室は、室内の奥に楽器をしまう部屋が設置されていた。

各学年の校内合唱コンクールが開かれる時のみ、B室が開放される。

私はコーラス部に入っていたので、B室は部活でよく使っていた。

nextpage

中学2年のある秋だった。

部活で使用するため、職員室にB室の鍵を借りに行った時だった。

しかし、既に誰かがB室の鍵を持って行ったのか、鍵置きの場所に鍵がかけてなかった。

合唱コンクールが近いからか、別のクラスの子が借りたんだろうと、仕方なくA室の鍵を借りる事にして、4階に向かう為に階段を登っていた。

nextpage

時間は、夕方4時前だった。

職員室で鍵を借りた時が、夕方3時55分だったので間違いない。

3階を過ぎ4階に行く時、階段に足を乗せた瞬間、上の方から凄まじい霊気を感じ更に寒くなった私は足を止めた。

すると、ピアノの音が聴こえてきた。

nextpage

多分、合唱で歌う課題曲なのだろうと、霊気を感じなからも、階段を1段1段登っていく。

しかし、一向に歌声が聴こえてこない。

聴こえてくるのは、ピアノの音だけ。

階段は、コの字型で上に登る感じの作りで…。

私は、コの字型の中央に差し掛かった時、急に足がすくんでしまった。

霊感とか全く無く、とにかく怖さだけが残る。

nextpage

その場で立ち尽くしていると、後ろからコーラス部の先輩が駆け上がって来た。

「〇〇さん。何してるん?鍵あるなら貸して?先に行っとくよ?」

先輩は、私から鍵を受け取ると、霊気など何も感じないのかそのまま4階へと登って行った。

私も先輩に続いて、急いで4階へ駆け上がり、A室へと向かった。

nextpage

A室に着いた数分後、コーラス部の部員20人が集まり、12月に開催される市の合唱コンクールの為に課題曲を3回程練習した。

練習が終わると、顧問の先生が持ってきたレモネードを部員みんなで飲んでいる時に、世間話程度でB室のピアノの話をしてみた。

「鍵借りに行った時に、B室の鍵が先に借りてあってね?階段登ってる時に、B室のピアノが鳴ってて…」

nextpage

途中まで話した時に、今まで聴こえてこなかったピアノの音がB室から聴こえてきた。

20人の部員はざわめいた。

そして、ピアノの奏でる音を聴いていた時、顧問の先生が言った言葉で部員全員がパニックになった。

nextpage

「B室のピアノ…壊れて弾けんはずなんよ…弾けるのはエレクトーンだけなんやけどな…」

……………!!!!!!

この時、悲鳴が上がり、数名の部員がA室を飛び出した。

A室を出る時に、B室の内部がガラス越しに見える。

「誰かがおる!」とか…。

「あんな人、知らん!」とか…。

叫びながら、階段を駆け下りる。

私含む数名は、顧問の先生とA室に立ち尽くした。

nextpage

シーンと静まり返り、皆の息遣いだけがハッキリと聞こえてくる。

すると、ピアノの音が再び聴こえてきた。

私は「ヒャッ!」っと、小さな悲鳴を出してしまった。

この学校の七不思議、夕方4時に音楽室のB室から、ピアノの音が聴こえてくる。だった。

nextpage

「ちょっと見てくるから」

顧問の先生は、A室を出てB室に向かった。

私と他数名の部員は、A室の扉のガラスからB室の方を見た。

しかし、顧問の先生は直ぐに戻ってきた。

「鍵がかかっとる。中にも入れんし、声も掛けたけど…よぉ分からん」

首を傾げるだけだった。 

nextpage

「幽霊なん?」

……………ガッシャーン!!!

一人の部員が顧問の先生に尋ねた時、A室の壁に掛けてあった作曲家の肖像画の両端二つが落ちて、額のガラスの割れる音がした。

「ギャーッ」

一人の部員が悲鳴を上げ「もぉ〜コーラス部止辞めるぅぅぅ〜!」と叫びながら、A室を飛び出した。

nextpage

顧問の先生が、落ちた肖像画を見に行くと、釘が腐っていたらしく、劣化して落ちたのだそうだ。

時間も夕方5時を過ぎて、辺りも暗くなってきた為、帰る事になって皆でA室を出る事にした。

nextpage

職員室に戻るまで、一言も会話もせず鍵を戻しに行くと、不思議な事にB室の鍵が鍵置き場に戻っていた。

職員室にいた先生に尋ねても、鍵を返しに来た生徒はいないとの事。

私等が先に鍵を返しに来た。

その間、B室から人の出入りはなかった。

顧問の先生も確かめたが鍵も掛かっていた。

私等より先に鍵が返す事は不可能。

これを目にした私は震え上がった。

nextpage

それから、今回と同じような事が何度か起こったため、コーラス部の部員は10人に減った。

私が卒業する頃は、2年の2人だけ。

新入生の入部もなく、来年度に廃部が決定となってしまった。

nextpage

今から2年前、学年合同の同窓会がお昼に開かれて、音楽室の話になり思い出話で盛り上がった。

同窓会の後、久し振りに中学校へ行ったら、色々な事が変わっていた。

校庭にあった、大きな大木が無くなっていたり。

職員の靴箱の場所が変わっていたり。

コ字型だった校舎が増築され、□の形になっていて、真ん中が中庭になっていたりと、18年も経てば変わるのも無理はない。

全校生徒も、私等の頃より少なくなった。

音楽室は職員室の隣に移り、音楽室として使われていた部屋は、物置部屋となっているそうだ。

nextpage

今でも、夕方4時にピアノの音はするのだろうか…。

nextpage

 わ

  り

Normal
コメント怖い
4
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

紅茶ミルク番長様。
コメントありがとうございます。

肖像画が落ちたのは、偶然なのか霊の仕業なのか、今となっては分からないですね。
古い学校なので、霊がいてもおかしくないとは思います。
ピアノを弾く幽霊…。
見てないのでなんとも…(苦笑)

返信

こんにちは まさりんさん。
肖像画が落ちるのは怖いですね…
わからず仕舞いのところも怖さの余韻が残りました。

ピアノを弾く幽霊…
同じくピアノを嗜む私としては、いてほしくないタイプですw

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信