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これはアタシがまだ人妻だった頃に、勤めていたお店でのお話のひとつ。
まだレギュラーに返り咲いて間もなくて、アタシはあまり指名客を持っていなかった為、数少ない指名のお客様が帰られたら自動的にヘルプにつかされる。
ただ、アタシはその頃、指名獲得にこだわり過ぎて潰れかけた経験から、何も本指名にこだわらなくても、「ヘルプならあの子を呼んで!」と言われるくらいになればいいのだ、と、ヘルプ指名をされることに命をかけていた(笑)。
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ヘルプ。
それは、自分の指名のお客様につくよりも、指名のないお客様につくよりも、はるかに難しい。
なぜならそのお客様はお目当ての嬢に会うために来店しているのであって、それ以外の嬢など眼中にないからだ。
しかし人気の嬢を指名していれば、嫌でも嬢が移動してしまう。
次に嬢が席に帰ってくるまでは、ヘルプの嬢が代わりにお相手をする。
しかしお客様にとって、興味のない嬢と長々話す事ほど苦痛なものはない。
なにせ興味がないのだから、共通の話題も、よほど何度もヘルプしている嬢でなければないのだ。
その、お客様からしてみれば「お呼びでない」嬢が、話に詰まったり興味の全くない話を延々したり、果てはテーブルサービスがなってなかったりしようもんなら、もう拷問級だ。
お目当ての嬢が帰ってこないイライラと、目の前の嬢の面白くもない話に付き合わされるイライラで、限界点も近い。
そんな時に、そのヘルプが
「○○ちゃん遅いですね~」
とか、指名の嬢を思い出させるような話を振ろうものなら、お客様の我慢も限界点を超え、指名嬢が席に戻る前に帰ってしまう事もあるのだ。
それは、この後延長したかもしれない可能性を潰しただけでなく、次に来なくなる可能性も作ってしまう、指名嬢にとって迷惑極まりない行為なのだ。
だけど、それを逆手に取って、ヘルプ指名されるようになれば、その時自分のポイントにはならなくても、後々自分の為にもなるのだ。
何よりも、たとえヘルプであっても、お客様や嬢から
「ヘルプならまりかちゃんつけて」
と言われるのは、とても嬉しい。仕事もやりがいが出て楽しい。
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その日は、年末商戦に入っていて、たくさんお客様を持つ嬢が呼んだお客様でごった返していた。
アタシのお客様は基本的にサービスタイム中の安い時間帯に殺到し、延長はしない人が多い。
アタシが、延長を望まないからだ。何回も延長してたくさんのお金を使い、しばらく来なくなるよりも、その日は安くても短時間でも、長く来てくださる方がアタシは嬉しいから。
なので遅い時間帯は、ヘルプに徹する事が多い。
その日も、ある女の子のヘルプについていた。
不思議なもので、一度誰かのヘルプにつくと、あとのヘルプもずっと同じ女の子のヘルプになる事も結構ある。
その時もたまたまそうだったのだが。。。
非常扉のすぐ前、グランドピアノのステージ横にあるボックス席に、その時はついていた。
お客様と楽しく談笑しながら、時折指名の女の子があちこち動きまわるのを横目に見ていた。
あくまでも、お客様には悟られないように。
アタシとお客様はL字型のボックスに、向かい合う形で座っていたのだが、しばらくするとアタシの左後ろ、視界の端に目の覚めるような艶やかな碧いロングドレスを着た、髪の長い女の子がしゃがんでいるのが見えた。
うちのチェーンでは、女の子が入れ変わる時、後に来た女の子は先に座っている女の子が席を出るまで、ボックスの入り口でしゃがんで待つ決まりになっている。
その時ついていたお客様はおひとり様。
なのでアタシは指名の女の子が帰って来たのだと思い、
「おかえりー」
と言いながら振り返った。
お客様「えっ?」(きょとん顔)
アタシ(振り返ったままの姿勢で)「え。。。?(硬直)」
そこには、まるで最初からそうであったと言わんばかりに、誰もいなかった。
?????気のせいだったのかな?
アタシはお客様に向き直り、
「あははー、誰か座ってるように見えたんだけど気のせいみたいー(笑)」
と言ってとりあえず誤魔化し、また嬢が戻るまで場を繋ぎ始めた。
しばらくすると、また左後ろ、視界の端に碧いドレスの女の子がしゃがんでいるのが見える。
今度は無言で振り返る。
。。。誰もいない。
頭に???をいっぱい咲かせながら、またお客様と談笑。
視界の端に碧い女の子。
振り返る。
誰もいない。
さすがにお客様も不審に思い始め、どうしたのか訊いてきた。
アタシが仕方なく経緯を話していたら、
「ただいまーっ!ありがとーーーっ!」
と後ろから勢いよく指名嬢に抱きつかれ、今の今までちょっと怖くなり始めていたアタシは、
「ぎゃーーーーーーーーーっ!!!」
と悲鳴をあげてしまった(笑)
お客様大爆笑。
あまりの驚きように嬢までびっくりして、おまけにウェイターまで飛んできたので、嬢にも説明したのだが。
結局、あの碧いドレスの女の子がなんだったのか、わからずじまい。
ちなみにその日、碧い色のドレスを着た嬢は一人もいませんでした。
しかもこの碧いドレスの女の子、その後も色んな子に目撃されてたらしいです(((((´°ω°`*))))))
まぁ、何か悪さをするわけではなく、まるで指名の嬢が帰って来たかのような錯覚をさせられる程度なんですけどね。
作者まりか
他にもいるんですよー女の子((((;´・ω・`)))ガクガクブルブル