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結婚当時住んでいたアパート。
そこで唯一体験した、怖くはなく心があたたかくなったお話。
その頃のアタシは、それまで同居していた義母や義姉からの、完全無視をはじめ、作っておいたご飯には絶対に手をつけない、洗濯しておいた衣類を夜中に洗いなおされる、などの仕打ちから、妊娠出産育児も重なりかなり精神的に病んでいた。
おまけに、当時の夫が持っていた負債が、軽く800万を超えていて、その支払いの為にホステスとして働いていた為、睡眠時間も足りず、限界はとうに超えている事を感じていた。
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その頃の夫は2交代制の工場勤務。
4日働いて3日休み、これを1クールで早番遅番が入れ変わるシフト。
アタシが限界を超えたあたりから、3日の休みを最大まで減らし、6日出勤して1日休み、シフト交代。。。という状態にしてくれていて、その週は、確か遅番だったと思う。
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午後4時頃に夫が出勤し、アタシも6時にお店に入れるように支度をしていた。
息子が喜ぶ小さい子向けの番組をつけ、赤ちゃん用ベッド兼椅子に息子を座らせ、台所の壁に取り付けた100均の小さな鏡を見ながら化粧をしていた。
後ろから、番組司会進行役の小さな女の子の声や、補助役のゆるキャラ達、番組に出演しているエキストラ(?)の赤ちゃん達の声が聞こえていたのだが、急に、大人の男の人の、抑揚のない淡々とした説明をしているような声が聞こえてきた。
チャンネルは、NHKに変わっていた。
んっ?息子クンがリモコン取っちゃったかな?
そう思って息子のそばへ行く。
リモコンはテーブルの上、しかもどんなに頑張ってもつかまり立ちどころか一人で座る月齢でもない息子には到底届かない遥か彼方。←息子にとって(笑)
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???偶然かな?
そう思いながら、チャンネルを元に戻し台所へ。
暫くするとまたチャンネルが変わった様子。
今度は民放のニュース。
???
リモコンのボタンの隙間に水でも入り混んでいるのかな。
そう思い、リモコンをくまなくチェック。
異常なし。
なーんか腑に落ちず、モヤモヤしたけどとってもビビリなアタシは、それ以上考えるのをやめた。
うん、多分ホコリか水がボタンの接触部分についてるんだよー←棒読み
と思うことにしてその日は出勤。
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ところが、その翌日も昼間っから同じ現象が起こり、アタシは若干パニックになりながらリモコン分解。
綺麗だったけど水滴やホコリのせいにしてお掃除。
これでどうだ!
と鼻息荒くリモコン放置。
その日はその後出勤まで何も起こらず。
やっぱホコリだよな!うん!
で解決したはずだった。
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そのまた翌日。その日は日曜日で、仕事も休みだし息子とラブラブチュッチュデーだぁー♡と別な意味で鼻息の荒かったアタシ。(この日は夫もシフト最終日で、最終日はいつもそのままパチンコへ行き閉店まで帰らない)
喃語しかまだ話せない息子と朝っぱらから蜜月しまくって、そろそろお昼寝しよっかぁー、とテレビを消した。
寝室に行き、息子に添い乳をしながらうつらうつらしていたら。
居間から
ブツン!
という音がして、直後から「いい○も!」らしきバラエティ番組の音が。
∑(ºロºlll)えっ!なんで???テレビ消してたよね???
アタシはものすごくビビリあがって、暫く硬直して動けなかったのだけど、このまま、
『消したはずのテレビの音が聞こえてくる』
状態が続く方が恐ろしくて、こわごわ居間へ行きテレビがついているのを確認してすぐ消した。
そして気を取り直して添い乳→うつらうつら。
また居間からしてはいけない音が!
今度はまたチャンネル変わってる。
おまけに音がどんどんデカくなっていく!!
((((;゚Д゚)))))))
もおおおおお!やだよやめてよ!怖いじゃん!!
そうブツブツ言いながら、リモコンの電源ではなく主電源切ったった。
これでどうだ!もうホコリがついてようが水滴がついてようが、つかないだろ!?つけられないだろ!?
もう誰に言ってるのかわからない、不気味なひとりごとを結構大きな声で呟きながら、耳栓して、息子と供に寝た。
この、勝手にテレビがつくようになった頃から、アタシはなんだかある気配を感じていた。
それは、アタシが21歳の時に他界した、実の父。
2歳くらいで両親が離婚したため、他界するまでの間数えるくらいしか会ってない父。
その父がそばにいるような気配がずっと続いていたのだ。
見えないので確信は持てない為、怖いのは怖いのだけど、正直そこまで「恐怖」って感じではなかったので上記のような様子だったのだ。
それは、その日の夜確信に変わった。
夜は無音だとさすがに怖いので、チャンネルがしょっちゅう代わったり音量がどんどん上がったりしたらどうしようという不安はあったものの、テレビをつけてみた。
案の定、チャンネルが代わったので主電源をまたしても切った。
すると、アタシの腕の中に抱かれていた息子が、天井に手を差し伸べ
「じぃじ。じぃじ。」
と言い出した。
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shake
えっ!?
ちなみに補足すると、息子はこの時まだ
あ~う〜
とか
んまんまんまんま
とかの喃語しか話せない月齢。
しかも「じぃじ」という言葉を教えてなかったどころか、じぃじの写真さえ見せた事がない状態。
やっぱりいるの!?
と嬉しくなる気持ちと、
いやいやまさかぁー
という気持ちで複雑になりながら、試しにアタシが持っている唯一の父の、亡くなるほんの少し前の写真を見せてみた。無言で。←
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すると息子は、その写真と天井を交互に見ながら、そして手を差し伸べながら、
「じぃじ。じぃじ。」
とニコニコしている。
あぁ。ホントに来てくれてるんだ。
アタシがこんなだから心配になったのと、アタシの息子の顔を見に来てくれたんだね。。。
そう思い、自然と涙がこぼれた。
それから暫くの間、多分2~3日は父の気配がしていたし、息子も家にいるとどこかに向かって笑い出したり、「じぃじ。」と抱っこをせがむような体勢をしていたりしていたけれど、ある時
ふっ。。。
と気配が消えた。
安心してもらえたのかな?
安心、できないだろうけど、頑張るからね。
そう心の中で呟いた。
作者まりか
アタシは父にとって一番最初の子供でもあるせいか、生前もとても心配していたそうです。
親の事業の失敗で、多額の負債が残った時、ホステスとして働いて返していったのですが、その時も、片道12時間もかかるほど離れているのに、ホステス辞めさせて自分が肩代わりしてやる!とものすごく怒っていたそうです。
自分が亡くなった後も、同じような事になっているアタシと、その渦中にいなければならない息子を心配して来てくれたんだろうなぁと、いつまでも安心させてあげられない事に切なくなった体験でした。