私には娘が2人居ます。
上の娘は12歳。
下の娘は2歳。
最近は、下の娘もたくさん言葉を覚え、会話が出来る様になって来ました。
ある日、家の近くの公園に、娘達と遊びに行きました。
下の娘のお気に入りのおもちゃやお人形を持って、お弁当もこしらえて、
ちょっとしたピクニックです。
天気も良く、夏の暑さもどこ吹く風、
下の娘は、公園を走り回り、遊具で遊んでいるかと思えば、私がレジャーシートを引いて座っているところに戻って来て、
おままごとをし、また、何の拍子か思い出した様に、遊具へと走って行きます。
上の娘は、そんなオチビに振り回されながらも、同じ様に遊んで楽しく時間を過ごしていました。
お弁当を食べようと言うことになり、
3人がレジャーシートに座って、
汚れた手と足を濡れたタオルで拭いていると、下の娘が、
『この子も拭いて?』と人形の足を私に差し出して来ました。
『お人形も遊んだもんね。拭き拭きしよう。』
私はそう言って人形の足を拭いてやりました。
下の娘は、それがとても嬉しかった様で、
他の人形の足も拭いてと、私に差し出して来ました。
すると、上の娘がそれを可愛く感じて、
『じゃあ、ネエネはこの子を拭いてあげよ!』と言い、
人形用のベビーカーの車輪を拭き始めました。
下の娘は、一瞬、わぁっ、と呟き、嬉しそうに笑いながら、その素振りをキャッキャッと声を立てて見ていました。
ネエネが、何だか面白いことをしてるよ、といった感じです。
上の娘が
『はい!ぜぇんぶ、綺麗になりましたよぉ』
と言い、レジャーシートの上に人形用のベビーカーを置いた時、
下の娘は、上の娘に…
『ネエネ!この子も!』
と、言いました。
しかし、
そこには、人形やおもちゃは愚か、
誰1人として立ってもいません…。
私と上の娘が、えっ?と、
何も無い、しかし、下の娘の指差す方を見ながら固まっている間も、
『ネエネ!キレイキレイしたげて!
いーですよ(シートに上がって)したげてよぉ〜!』と、言い続けます。
上の娘は、あまりに必死なオチビを見兼ねたのか、
『どこかな〜?どこかな〜?』と、足を探してるフリをし出しました。
すると、下の娘が、
『ダメだ…。
この子、アンヨ、ないもん。』
と、何も無いところを指差して、言ったのです。
更に、固まる私をよそに、
上の娘は、
『あんよが無いなら、拭けません。
お帰りください!』と、
下の娘が指差すところに向かって、お辞儀をしたのです。
すると、
『あーあ、いっちゃった…。』
と言い、
下の娘は、まるでそこに誰かがいて、彼方に走って行ったかの様に、それを、目で追いかけていました。
そして、私達の方を見て、
『いっちゃったよ〜?あんよ、ないもんねェ。どうしてあんよがないの?』
と聞いてきました。
なんと答えていいか答えに詰まっていると、上の娘が、
『あんよ、無い子と遊んでたの?』と聞き、
下の娘は、嬉しそうに
『たたたーってした(かけっこをした)!』
と、嬉しそうに言います。
上の娘は、
『楽しかったね、良かったね。
でも、ネエネが、ごめんね!して、バイバイしたからね。』と言いました。
下の娘は、じっと上の娘を見ていましたが、
少しして、
『うん、分かったぁ。バイバイねぇ〜。』と、先ほど何者かを見送った方を見て、
小さい手を振っていました。
ただのお遊びなのか、小さい子独特の感覚のものなのか、はたまた本当にあんよの無い、何者かがいたのか…。
私には全く分かりませんが、
不自然でありながら、なんてこと無く、その場を受け入れ、切り抜ける子供の心の広さに、ただただ、驚かされた出来事でした…。
作者にゃにゃみ
私をよそに、娘2人が交わした会話のやりとりが、
可愛くもあり、
怖くもあり…。
また、上の娘の柔軟さに頭の下がる思いをしました。