怖い話とは違うのだが、これはぼくが実家にいたころの話だ。
仕事の関係で都会に出る前は田舎(名前は教えられないよ)にいた。
実家の裏にある旧家には祖父の前の代(いつごろかは明白ではない)から”壺につけたなにか”を地下においてあった。
この”壺”は、幼いころから気になっており、祖父に訊いても答えてくれなかったりした。
ある日、実家に戻る機会があり、長年気になっていた”壺”の中身を知ることができた。
ただ、壺の中身は鼻につく酸っぱいにおいと白い粉末のものがこびりついたなにかだけだった。
さすがに、勇気もなくて中身を取り出せなかった。
中身を調べずにそのままに自宅(都会)に帰るとき、駅で祖父から「お土産だよ」と、くれたのがあの”壺”だった。
大きさは子供でも持てるほど小さく、旅行鞄に入れるぐらいの大きさだった。
「この中身は何なの?」
「それは帰ってからのお楽しみだよ」
と言って、結局は中身を知らないまま家に帰った。
家に着くなり、勇気を振り絞って壺のふたを開けた。
相変わらずの鼻につく酸っぱいにおいと、白っぽい粉末のなにか。
手をゆっくりと壺の中に入れ、それを取り出した。
「お宝?」
そう言って、一口舐めた。
強烈な酸っぱみがのどから頭へと導き、通り抜ける。
長年つけてあった分だけあって味はよかった。ごはんにも向いている代物だった。
まさか、おなじみの”アレ”とは知らなかった。
この感動を幼い自分にも話したいと思った。
作者退会会員