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ある一軒の家に住むおじいさんから依頼が届きました。
「娘を探してほしい」
その依頼の詳しい内容を訊くために、私はその家へ向かいました。
その家には周りが草木一本も生えていない荒れ地となっていた。家は色が剥げてしまったコンクリートに茶色く変色してしまった鉄板の屋根が不気味に模様を描いたかのようにして私を誘ったような気がした。
住所ではこの場所であっていた。
地図には一軒の家と周りになにも書かれていなかったからだ。
その家に「お邪魔します。依頼を見てきました」とあいさつを交わしながら中へ入ると、そこにはブオーンと機械の音と、シャーという水が流れる音が部屋中から聞こえていました。
部屋の中は茶色に変色してしまったものが壁や屋根、床までへばりついていて何とも不気味に見えました。
「……ッ…」
誰かが呼ぶ声が聞こえました。依頼主だと思い、奥にあった扉に手をかけたとき、奥から腰あたりまで水が勢いよく吹き込みました。水は薄茶色に濁っており、匂いもかび臭かった。奥から誰かが私を呼んでいるような気がして、水のこともなるべく忘れる気持ちで奥へ歩きます。
じゃぶじゃぶと水をかぎ分けながら奥へと進んでいく私に「…だ……か…」と、再び声がした。その主が老いた男性の声だと分かった時、信じられない光景を見た時だった。
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私は部屋に入るなり「依頼できました」と、「……ッ…」と声にならない音で返してくれました。わたしは「依頼できました。詳しい内容を…」
私は足を止め、何気に足元からあふれ出る蛇口から流れていたコップに目を疑いました。
蛇口から勢いが止まらない薄茶色い水が止まることなく放出し続け、そこに白いなにかが一緒に飛び出ているのを見かけました。その姿を目視したとき、私は思わず吐きそうになりましたが、人の家だったのでこらえました。
「…て……がみ…」
声がカサカサになりながら必死で力も入らない手で私の隣でベッドに寝たままの老人が私に手紙を差し出してきました。その老人がそこにいたのも私はびっくりしましたが、それはほんの数秒間の出来事でした。
落ち着きを取り戻し、その手紙を受け取る否か、老人は必死に声を振り絞り依頼の内容とは別の話を聞きました。その老人からはもはや生を感じることができないようにも感じた。
片言だった。まとめると以下の内容となった。
「その水は汚染しておったが、わしが稼働した機械で少しは食い止めた水ができておる。しかし、虫はこびりつき、昔のような水はもう作れないと悟った。その水のおかげでわしは中から食われ、長生きできないと悟った。その手紙がわしの願いと依頼だ。わしがいるあいだ、依頼を聞き届けてほしい」
と、老人がそこまで言うと、突然何も言わなくなった。
老人の口にわたしが近寄ると、息をしていないことに気が付いた。老人は依頼を言い、その場で終えた。わたしは受け取った紙を握りしめ、老人の家を後にした。
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帰宅後、受け取った依頼紙にはこう書かれていた。
「娘を探しておくれ。2年前に喧嘩してしまい、その後消息が分からない。わしが病気で終える前に娘に会いたい。どうか探しておくれ」
と、言う内容だった。わたしがこの紙を胸に置き「依頼承ります」と思いを込め、自宅を出た。その紙を丁寧に折りたたみ、仲間が作ってくれた老人の墓と一緒に紙も埋葬した。
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私はとくに涙を流さないまま、私はただ一言「すまない。その依頼はもう終えております」と、手を合わせて静かに礼をした。
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元旦に見た私の夢の話。
作者退会会員