カラス
カラスと目が合うとその日の仕事はしない方が良い
というくらい、カラスは縁起が悪い鳥
私は、毎日会社に行く前に、空を眺めて深呼吸する
これをやると気持ちが引きしまる。
有る日いつものように家の玄関先で空を眺めて
深呼吸をした。
会社に向かおうと歩き出した。
何気なく電線を見たとき、カラスが此方を見て鳴いた。
見据えるように私を見ていた。
私とカラスの目が合ってしまった。黒眼を白黒させながら私を見る姿は
不気味で、思わず背筋が凍った。
私は気を取り直し、職場に向かった。
あと5分ほどで到着すると思い歩く足を速めた。
すると、角を曲がるのと同時にバイクが私めがけて突っ込んできた。
私は前輪に当たり倒れた。
バイクの運転手はバイクを止めて、駆け寄り「大丈夫ですか」と言って
私を抱え起こした。痛みはほとんどなくズボンの膝がきれたていどだった。
私は運転手に向い「大丈夫です。ズボンが切れた程度ですから心配はいらない。」
そういうと立ち治り会社に向い歩き出した。
しかし、私の近くにはあの先ほど目があったカラスが着いて来ていた。
カラスは、私を馬鹿にするように低空飛行をして私に向いカア、カア鳴いた。
そして私の向かう方向と同じ方向に私を追い越して行った。
私は、「ただの迷信だ驚くことはない」と自分に言い聞かせた。
そして会社の門をくぐったとき、また事故が起きた。
私の前の棚が落ちてきて私をはさむように倒れてきた。
これも偶然と心に言い聞かせた。
しかし、その考えは甘かった。
仕事が無事終わり帰り際のことだった。
もう暗くなるというのに目が見えるのか、
またカラスが私を待ち伏せしているかのように
電柱から電柱に飛び移り私の後をついて来ていた。
うっとうしくなり、急ぎ足で歩きカラスをまいた。
しかし、次の角を曲がると私のすぐわきの塀の上に
カラスが。
私は怖くなり逃げた。全速力で走り歩道を渡り
人気の多い繁華街へと向かった。
もう付いてこない。そう思った瞬間。
ドーンと音がして私は倒れた。
自動車に引かれたのである。
繁華街の真ん中で、大騒ぎだ。
野次馬が集まり私を囲んだ。
意識がもうろうとする中、人ごみの間にあのカラスを見た。
カラスはカーカー激しく泣き、まるで私をあざ笑うように
飛び去った。
私は救急車に乗せられ病院へと運ばれた。
気がつくとベットの周りに、カラスが私を囲む様に20匹ほど
ベットの上に居た。
私は思わずのけぞり、カラスを追い払い点滴の棒を振り回していた。
看護師や医者が駆け付ける中、カラスを追い払った。
しかしカラスは私にしか見えないのか、医師も看護師も憮然としていた。
医師は「カラスなどいない。頭をぶったせいか幻覚を見ているのか?」と叫ぶと
二人の看護師から押さえつけられて、鎮静剤を打たれた。
私は、打たれてもなお騒ぎを止めなかった。
意識がもうろうとして、倒れた。
気がついたのは、翌日の昼過ぎだった。
私の枕元にはカラスの真黒い羽が一本残されていた。
その3日後。
私は精神科に送られた。
作者退会会員
前のエレベーターじゃないけど、カラスですね。
この作品は2年前に書いたものです。
よもつさんとは、発想がまったく違いますので、
いや、似てるかな?です。