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中編6
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霊症

15年ほど前に起きた出来事です。

当時私は駐在員をしていて日本とタイを

時々往復してました。

帰国すると1週間ほど休暇が出て

どこにも行く事が無かったので、家でのんびりしてるか

近くのパチンコ屋に出かけて暇つぶしをしてました。

3日ほどしてパチンコも飽きてきて

昼ごはんを食べに街の食堂に出かけました。

食堂でご飯を食べ終わると帰宅するのですが

その日は町の中が騒がしく「どうしたのか?」と思い

騒ぎの方向に足を向けると30mほど向こうで

火事があり野次馬が大勢見に出向いてました。

私もその中の人ごみに混じり「暇つぶしにいい」と思い

消火作業を見学してました。

当たりは消火のためのホースと消す為にまいた水

それと人ごみでごった返してました。

私は火事の現場を見るのは初めてでしたので

興味深く、人ごみを掻き分けて

消火作業の先端まで進み出て見てました。

繁華街のど真ん中の小さな料理屋が燃えてました。

火は消し終わり柱の燃え残りがくすんで

白い煙を出してました。

しばらくすると、救急隊員がタンカで煙でまかれて

死んだらしい人を2名、運び出してきました。

野次馬の中でこの店の近所の店員らしき人が

運ばれる死体を見て、つぶやきました。

「かわいそうに夫婦で焼け死んだか?」と言って

タンカで運び出される人に向かい、回向してました。

私はその運び出される人を見た瞬間。

一瞬、白い布の中から自分が運ばれているような

錯覚を覚えました。

しかし1分もすると元に戻り、火事場を後にして

帰宅しました。

その日の夕方から左肩が重くなり痛み始めました。

風呂に入り痛みのある箇所をもんだりしましたが

直りませんでした。

痛みは朝になると痛くなくなり普通に戻りました。

しかし首のところが重くのしかかられるように

重みを感じています。

また「日にちが過ぎれば直る」と考えてました。

そして一週間が過ぎまた。

私はまた会社の仕事でタイに向けて出発しました。

タイの空港に着くと暑さとまた明日からの仕事のプレッシャーから

首の重みなど忘れてました。

そして瞬く間に10日が過ぎて、ようやく2日の休暇が出ました。

私はタイで仕事するのが精一杯で

今まで休日はどこにも遊びに行きませんでした。

初めて地元のワーカーに案内されて

大きなお寺に案内されました。

金色のバコタを眺めたり遺跡めぐりをしました。

そしてあるお寺に行くと

ワーカーは「この寺は病気を治す寺です。」と教えてくれた。

「どこか痛いところや病気の箇所を仏様の体の同じ部分をさすると

仏様が吸い取ってくれる」と言いました。

私は日本で痛かったところを思い出し

仏様の左肩と首をさすり祈りました。

寺院の中を歩くと人ごみにまぎれてしまい

一人、案内人からはぐれて、お寺の裏の僧侶が寝泊りする

高床式の住居の前に来てしまいました。

また戻ろうとすると

木陰で本を読んでいた年取った僧侶に声を掛けられました。

「そこの若いのこちらに来て、少し私と話をしましょう。」

流ちょうな日本語で話しかけられました。

タイに来て、現地人からそれも僧侶から日本語で話しかけられるは

初めてでしたので、物珍しさもあり近づいて行きました。

僧侶はシワクチャナ顔で、私を下から見据えました。

そして、「少し私と話をしませんか?」と言ってきた。

好奇心から私は僧侶と話し始めた。

「どうしてそんなに日本語が上手なのですか?」

「誰から習ったのですか?」と立て続けに質問した。

老僧は「昔日本軍がタイに着た時、私は普通の若者で

通訳をするとお金が普通の人より貰えると判り、

日本兵から一生懸命習った」と話してくれました。

「日本兵が引き上げると今度はイギリス軍がやって来て、

こん度は英語を教えていった。しかし日本は仏教国で

イギリスはキリストだ、どっちが良いかと言ったら

やはり土地に根を下ろしていた仏教を選んだ。

それで私くらいの年の人は、対外日本語を話せるようになった。」

「しかし今は自分が思って良い人以外は

めったに日本語でしゃでったりしない。」と言うと

また経本を読み出した。

私は「色々有難うございました、大変ためになりました。」と

丁寧に頭を下げた。

すると老僧は「あんたは良い人じゃ。ひとつあんたを助けてやろう。」と言うと

曲がったこしをさすりながら「私と一緒にそこの部屋まで着なさい」と言うと

先にたち高床式の階段を一段、一段登り始めた。

その姿は5年前に死んだ、おばあさんの後ろ姿に似ていた。

後を着いて登ると、薄暗い部屋の中には小さな仏壇があり

その扉が開いていて、中には金色に輝く小さな仏様があった。

私は「どうして助けられるのか」判らないまま老僧の後ろに座った。

仏壇の前に座り「お前さん肩はこらないか?左肩は痛くないか?」と

尋ねられた。

私は「その通りです。一週間ほど前から肩が痛くて、左腕が上げられないぐらいでした」と答えた。

「お前さんを見て私が呼んだのは、その肩に二人の霊が着いて

離れていかないのが見えたからじゃ」

「お前さんは霊能力が強い。だから霊も着きやすい。

これからその霊を除霊してあげようと考えている。どうかな?」

と言うと、後ろに座った私に向かい聖水をふりかけ拝み始めた。

その途端。

私の肩は重みで「ガクン」と下がり、ものすごい重みと痛みがはしった。

そして次の瞬間。

「ギャー」と言う声がどこからとも無く聞こえた途端。

私の肩は嘘のように軽くなった。

老僧はお経が終わると振り返り「どうじゃ?」と問いかけてきた。

私は「あの「ギャー」と言う声は誰ですか?」とたずねると

「お前さんについていた、男女二人に老人の霊じゃ。」

「どうやらタイまで着いてきたようじゃ。」

「もう心配要らない。退散したからな」

「もう肩は痛くないじゃろ」

と言うとしわくちゃな顔に笑みを1杯浮かべて

私を部屋に残して部屋の奥へ立ち去っていった。

それっきり出てこなくなった。

後ろから会社のワーカーが追ってきて

私を見つけ声を掛けてきました。

私はワーカーと一緒に帰宅した。

それから一週間。

腕の痛みは無くなり快適に仕事をこなしていた。

ワーカーたちにタイの慣わしを聞き

老僧にお礼を上げようと色々な引き出物を買い込み

あのお寺に向かった。

お寺に着くとあの年取ったお坊様を捜した。

寺中探し回ったがどこにも居なかった。

最後にあの最初に会った場所に行くと

別のお坊さんがめがねを掛けて

前の老僧と同じように木陰で本を見ていた。

私は除霊してくれたお坊さんの事を日本語で尋ねた。

やはり前の老僧と同じように日本語がうまかった。

色々話してるとその坊さんは「私の師匠かもしれない。」と

言い出すと私を案内して

私がこないだ行っていない、本堂の奥の間に連れて行った。

そこにはまさしく私が一週間前に除霊をしてくれた

老僧の座禅を組んでる姿の蝋人形が置かれていた。

弟子の坊さんは、その蝋人形に丁寧に挨拶すると

話し始めた。

「私の師匠は15年前に死にました。その業績をたたえる為に

このような蝋人形やお守りを作り偉業をたたえてます。」

「どうしてあなたの前に現れたかは知りません。しかしながら

あなたについていた悪霊を払いあなたを助けた事は事実です。

生前も同じでした。自分の身を帰りみず、多くの人を助けた

私も見習わなくてはいけないが中々できない。」

と話すと拝み始めました。

私は「幽霊から幽霊を除霊されたのか?」

老僧の蝋人形のシワクチャナ顔を目の前に、唖然としたまま

座り回向をし続けました。

Concrete
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ひのたまさん
事実です。海外では聞かないのは
解らないのがほとんどだと思います。
タイのアユタヤはおばけの宝庫ですよ
夜は怖くて出歩けない。
何処の国でも同じように居ます。ただ報告されないだけです。

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光道さん

やはり、同情し過ぎると あまり良く無いのですね。その高僧に出逢え、そして話まで出来た、と言う事実は本当に良い経験でしたね!
「情けは人の為ならず」とは、こういう徳を積む御仁の事にも当てはまると、私は思いました。

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あんみつ姫さん
早いですね載せたか載せないうちにご覧になるなんて。
でも、やはりお経が違う。日本は大上仏教、タイは昔ながらの小上仏教です。
死んだら、土葬か火葬しかし火葬は焼くだけ、普通の庶民は焼かれると骨は土に返される。
日本のように、骨壷は無いと言うか、偉い人と華僑だけ。
私が死んだら海に流してもらいます。流れ流れて、日本につくかもしれません
しかし、途中で竜宮城や人魚と遊ぶから着くのは送れそうです。

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