工事監視員
雨の日の車の運転は視界が悪く運転しづらいものです。
運転手になって2年。無事故無違反で来ましたが
あの出来事が起きてから私は運転手の仕事を辞めました。
有る雨の日。
私は有る工場からの依頼で
荷物をトラックにフォークリフトで着けて360km離れた
第2工場まで運ぶ仕事を請け負いました。
道のりは山形から埼玉県側の
戸駄橋の近くまで運ぶ作業でした。
一人で運転するのには距離が長く
当時は給料も安く
運送会社の誰もが運ぶのに難を示して
結局初心者である私に回ってきました。
雨の日は視界も悪く疲れるため
会社では特別手当を付けてくれます。
それをあてに私は引き受けました。
夜の7時に出発して翌朝の6時には
荷を降ろしている手はずでした。
私は予定通り出発して12時を過ぎたころ
郡山市を通過しました。
予定よりも早かったので
郡山の県道ドライブインで休息を
取っていました。
午前1時を少し回ったころまた出発しました。
黒磯を過ぎたころ予定には無い道路工事に出くわしました。
雨の中、周りを見ると車は私以外には通行してる車は無かった。
私はこんな人気の無いところで
夜中の2時を過ぎたころに「道路工事?」と首をかしげた。
道路工事の赤い電球と左斜線に入る指示の標識が雨の中光っていた。
私は気を取り直して、その指示に従い車線変更をして100mほど
進んだ時、私の車の前に工事指示をしている人が2名現れた。
私は車を徐行させて、運転席の窓を雨が入らない程度開けて
その指示を出している二人の脇に止まった。
「雨の中、大変ですねー」と声を掛けた。
すると一人が「ここから先は通行止めだ」とぶっきらぼうに答えた。
もう一人が窓の側に来て「運転手さん郡山のバイパスまで引き返すか、
10kmほど戻り山道を通るかしてください。
道は明日の朝まで通行止めです。」というと頭を下げた。
私は時間がなくなることで手当てを引かれる事を考えて
10km戻ることにした。
親切な事に作業員の一人が
その回り道まで戻るとの事で同行することになった。
濡れたカッパを脱ぎ助手席に乗ると愛想よく挨拶して
U-ターンできるように窓から顔を出し誘導してくれた。
年はもう60歳ぐらいはなってるだろうと思うほど
顔にはしわが目立った。
脇に座っているところをちらちら見ると
前を向いて身動きひとつしない。
まるで人形を連想させた。
10分ほど無言のまま運転し続けた。
左側に標識らしきものが見えてきた。
ライトを上目にして確認した。
すると男は「そうです。そこのわき道を入ってください」
と言うとまた黙り込んだ。
わき道で降りるのかと思っていたが、無言のまま乗っているので
そのまま曲がった「途中に何か休憩所があるのか」と思い車を走らせた。
道は舗装されていて運転しやすく反対車線の対向車も一台も来ない上体だった。
10分、20分一行に「降ろしてくれ」と言う様子も無く、
男は時々眠くなったのかコクリコクリと首をうなだれて
ねむカキをはじめていた。
私は「何だこいつは」と思い
だんだん腹が立ち徐行気味にブレーキを踏んだ。
男はトラックの振動でフット目が覚めて周りを調べだした。
車のライト先意外、外は見えない。
道路ワキに見える標識以外は闇が広がっていた。
フロントに広がる闇をくびを乗り出し眺めると
「すいませんこの辺で停めてください」
と私に言った。
私は「あなたは10分ぐらいと言ったが、
もう30分は道を曲がりくねっていて、中に入りましたよ」
「ここはどこですか?」と逆に男に聞き返した。
男は気分を悪くしたのか、私の顔をしげしげと眺めて、
「ここでお別れです。」と言いなおすと
いきなり走ってる車のドアを開けて外に転がり落ちた。
私は驚き急ブレーキを掛けて車を停めた。
そして今男が落ちたばかりの道路に戻り
確かめた。
そこには男の姿は無かった。
「私はどこに行ったのだろう」と車の周りを
10分ほど捜し歩いた。
どこにも見当たらない。
私は「まさか、今の男幽霊???」と思うと、
鳥肌が立ってきた。
車の中に戻ると助手席のシートの上には
濡れたカッパがシートの上においてあった。
「夢や幻覚じゃない私はそう思った。」
しかし理由も無く動いているトラックから
後ろ向きに飛び降りる男など居ない。
気を取り直して運転して、10分
先ほどと同じ道路工事の標識と赤い電球が目に入った。
「どうしてまた。」私は驚いた。
また同じところに戻ってきたのか?
そう思うと同時にまたあの先ほどの二人が現れた。
私は怖くなり、工事を無視してアクセルを吹かし突き進んだ。
作業員は前と同じ二人。
その停めるのも聞かず、突き進んで15分。
と前方に山のように積んだ砂がライトの先に見え、
私はその砂の手前でブレーキを踏み気を失った。
気が着くと、周りには6人ほどヘルメットをかぶった
作業員がトラックを囲むように居た。
私はドアを開けて降りると周りを見渡した。
「周りは鉱山のようなところにどうして着たか?」
私は呆然としてわからなかった。
工事の責任者らしき人が来て私に言った。
「また道を間違えた」「ここは福島の石川町の鉱山跡地だ」
運転手さんどこに向かってました。と聞き返されて
「埼玉県です。」と答えると
「またとんでもない逆方向に来てしまったな?」
と言うと、「ここは福島県の山奥だよ」
と念を押すように言うと、みんなが笑い出した。
私は何がなんだかわからなくなり、
鉱山に紛れ込んだ事に気が着くまで
20分ほどかかった。
別の工夫が近づいてきて、
「あなたきつねか幽霊に騙されたんだよ」と言うと
仕事に戻っていった。
もう時間は朝の6時を過ぎていた。
私は言うまでも無く仕事を首になった。
作者退会会員
この話は、丁度飢餓トラックの跡に起こった事です。