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中編4
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真夏の夜の夢

あれは夢だった。そうじゃなければ俺は現実を受け入れられない。

8月、お盆のど真ん中、富士山の麓の村だからか、その日はやけに冷んやりとした夜だった。

その日、村には、一人の行方不明者が捜索願いを出されていた。

小さな村だから、当然のように良く知っている女の子。17才だった。

地域の消防団に入っている俺は、昼間から捜索に駆り出されていた。

決して不良では無いけれど、今風の女の子。

どうせ親とでも喧嘩して、友達の家にでもいるのだろうと、普段事件など皆無な村の住人たちは、一応捜索してはいるが、心の片隅ではそうたかをくくっていた。俺も含めて。

その日女の子は見つからなかった。

22時で捜索が打ち切られた。

お盆休みだったため、その夜は仲間の家で飲むことになった。

初めこそ居なくなった女の子の話をしていたが、当時若かった俺たちは、酒が頭を支配しだすと、下品な話や、女の話で、昼間の事など頭の片隅にも無くなっていた。

ひとしきり酔っぱらい、深夜一時に徒歩で帰路に着いた。

仲間の家から俺の家までは約400メートル、直進する経路と、大通りを迂回する経路があるのだが、普段俺は迂回する道で家に帰っていた。

当然迂回なので距離は倍近くなるのだが、直進する道は民家も無く街灯すらもなく、右手に深い森、左手に草原、在るのは森の梺のくたくたにくたびれた稲荷神社と、その神社のすぐ下から道路の脇まで広がる直径100メートルほどの柳の木に囲まれた深い池だけだ。神社に付けられた申し訳程度の裸電球が、そのロケーションの恐ろしさを二割増しにしている。

そんな道を夜中に通る気には到底なれない。

だがその日は、勝手が違っていた。いつもなら決して通らないその道を、何故かどうしても通りたくなってしまった自分がいた。

酔いのせいだと思っているが、、、

深夜、仲間の家から100メートル程歩くとすでに辺りは闇と静寂が支配している。

件の池が神社の裸電球に照らされているのが確認できるぐらいには、もうかなり引き返して大通りに出たかったが、何故か後200メートルなのに情けないという思いに駆られ、足は前に出続けた。

酔いのせいだと思っているが、、、

僅かな光の中に一瞬女性らしき影を見た気もするが、特に何も無く家に着いた。

ただ、季節に似合わない鳥肌が立っていたが、これも酔いのせいだ。

家に着くなり何か首から肩にかけて違和感を感じ、鳥肌は一向に消えない。同時に冷んやりとした、

まるで水の中にいるような嫌な感じが体にまとわりついていた。

俺は、居間で親父の焼酎をストレートでがぶ飲みしていた。そしてそのままそこで寝入ってしまった。

ここからは恐らく酷く鮮明な夢なのだが、、

深夜2時過ぎに、居間の引戸が静かに空いた。

台所の非常灯の明かりで逆光になっていてシルエットしか見えない。

女?

姉ちゃん?…違う……誰?

そのシルエットは引戸を開けて暫く微動だにせずこちらを覗いていた。ような気がする。

俺は体を起こして誰なのかを確かめようとするが体が動かない。夢なのか現実なのか、酒のせいなのかもわからない。

でもそのシルエットから目が離せない。5分、10分、

いや数秒だったかも知れない。

ふとその影から視線が外れ左を向いた。すると目と鼻の先にいたのだ。今ここを覗いている影とは別の3才位の子供が。

その子は俺の顔を覗きこむように見ていた。興味深そうに。

おかっぱに近いボサボサ頭で、とても可愛い顔をしていたが、男の子なのか女の子なのかは、解らなかった。

俺は何かを話そうとしたが、全く声が出なかった。

そしてこの辺りで気付いた。

この状況は恐怖でしか無いと。。

暫くこちらを覗き込んでいたそのこはおもむろに俺の顔を触りだした。

最初はぎこちなく、そうっと恐る恐るだったがだんだんと大胆に、愛しいものを撫でる様に。

俺はぞんぶんに恐怖を感じているが、全く動けない。

そしてその子の手は、俺の顔から首へ移動して行った、、

依然興味深そうな顔で俺を覗く様に見ているが、表情はそれ以外全く変わらない。

俺は少し前から、いや恐らく最初から気付いていたんだ、この子の手は酷く冷たいことを。

その手が俺の首にかかって間もなく、あえて案の定と言おう。

俺の首を絞め始めた。凄い力で。世界中どこを探してもこの世の3才児にこんな力は出せるはずが無い。

意識が遠のいて行く……

その時、お盆で閉まっていた仏壇の扉が空いた音が聞こえた。

と同時に体が動いた。そして激しい怒りを覚えた。

こんな所で連れて行かれてたまるか、その一心で俺はその子の手を振りほどき、そして頭を掴んで全力で下に叩き付けた。

この世のものでは無いと分かってはいても、小さな子供を。。

しかし罪悪感に駆られる前に俺の記憶はパタリとここで無くなって、気が付けば朝を迎えていた。

首には真っ黒なアザがあり、仏壇の扉は空いていたが、昨夜のシルエットは幽霊で、襲ってきた子供も幽霊で、それをご先祖様が助けてくれたなんて思っていない。

あれは酔っていて変な寝相で寝てしまったからだと思っている。

何故なら俺は霊なんか信じていないから。

ちなみに、行方不明になっていたその子は、家の近くの池から死体で見つかった。

妊娠して、男には逃げられ、親にも責められて、追い詰められた末に自殺したらしい。

明るい笑顔の可愛い優しい子だったから酷く悲しい結末になってしまった。

ちなみに死亡推定時刻は、午前1時。

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まりかさんありがとうございます。
友達の本当にあったお話です。
飲んでたのが家で、友達視点で書いてみました。

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