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短編2
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ひとりこっくりさん(前編)

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クラブが終わって三年二組の教室に戻ると、

クラスメイトは誰も残っていなかった。

期末試験が終わって、夏休みが始まるまでの短い期間。

みんな、クラブに遊びに勉強にと忙しいのだろう。

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わたしは窓を開けると、身を乗り出すようにして、

青い空を見上げた。

「あーあ、帰りたくないなあ・・・」

思わず心の声が口からもれる。すると、

「菜々美ちゃんも?」

思いがけず、すぐ近くで声がした。

びっくりして振り返ると、髪をツインテールにした女の子が、

小首をかしげて笑っていた。

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「あ、うん。えっと・・・」

私は言葉に詰まった。とっさに名前が出てこなかったのだ。

だけど、その女の子は、気にする様子もなく、私の隣に並ぶと、

「わたしも帰りたくないの」

そういって、わたしの顔を見つめた。

「お母さんとうまくいってなくて」

わたしはまるで心をのぞきこまれたような気がして、ちょっとゾッとした。

わたしが帰りたくない理由も、お母さんだったのだ。

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わたしを産んでくれたお母さんは、わたしが小学五年生のときに

病気で亡くなっている。

それ以来、わたしとお父さんは

二人で助け合いながら仲良くやってきたんだけど、

半年前にお父さんが再婚したのだ。

相手の女の人も再婚で、わたしより二つ下の女の子がいる。

つまり、わたしにとっては、新しいお母さんと妹がいっぺんにできたというわけだ。

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二人とも悪い人じゃないんだけど、お父さんをとられたような気がして、

正直、わたしはあんまり嬉しくなかった。

お父さんは仕事で帰りが遅いので、夕食はたいてい、

新しいお母さんと妹と三人でとることになる。

それが寂しくて、勉強机の上に飾った、

写真立ての中のお母さんに話しかける日々が続いた。

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だけど、それだけだったら、わたしも我慢できた。

shake

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三日前、新しいお母さんが、その写真立てを落として割ってしまったのだ。

掃除してるときに手が当たっただけで、わざとじゃないっていってるけど、

わたしには許せなかった。

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それ以来、新しいお母さんとは口を利いていない――――

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