少年には親友がいた。
ネットで知り合った友人だ。
お互いに顔も本名も住んでる所も知らないけど、いつも近くにいる、そんな気がした。二人は毎日パソコンを挟んで会話をした。
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ある日、少年は母親に、『毎日毎日パソコンばっかり見て、あなたには友達がいないの!?』と言われた。少年は苛立ちながら、『うるさいな、友達ぐらいいるさ!』と返した。少年は親友を馬鹿にされたことに怒ったのだ。
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少年は親友に愚痴をこぼした。すると親友は、『なら、僕のところに来るといいよ。』そう告げた。
少年は、まだ見ぬ親友に会うのを夢見て、家を出た。
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少年は、指定された待ち合わせ場所についた。しかし、いくら待っても親友は来なかった。ふと、家のことが気になった。もし、家族が心配していたらどうしよう。などと考えながら帰路についた。
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家に帰ると、家族はいなかった。というより、家族は『生きて』いなかった。あれほど口うるさいと思っていた母親も、あれほど邪魔だと思っていた妹も、あれほど迷惑だと思っていた父親も、全部、いなくなっていた。
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少年は絶望した。もし、自分が家にいたら、家族を失うことはなかったのに。少年はそう思った。そして少年は、メモを残し、自ら命を絶った。
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『昨夜、○○県××市の民家で、1△歳の少年とその家族の遺体が発見されました。死後数日が…』
淡々とニュースは語る。そこに慈悲などないかのように。
『民家からは、少年のものと思われる遺書が見つかりました。遺書には、『ごめんなさい、僕の親友。』と書かれており、警察は事件との因果関係を…』淡々とニュースは語る。そこに意味などないかのように。
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少年には友達がいなかった。
せめてネットの中だけでも、と思ったが、結局出来なかった。
だから友達を『作った』。パソコンとケータイのあいだだけで行き来される言葉。それだけで充分だった。
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少年はいつしか、画面の向こう側の親友に会いたくなった。だから会いにいった。でも会えなかった。当然の結果だった。でも少年は信じなかった。
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少年は絶望した。自分の親友を否定した家族を恨んだ。だから、殺した、殺した、殺した。そして、親友に許しを請うた。でも、親友は何も言わなかった。
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少年は最期まで否定された。嘘をついた『自分自身』と、生まれてくるはずのなかった『親友』に。
少年はただ、友達が欲しかっただけだったのに。
作者都伝ハンター(仮)
今回はすこし長めです。
人間って恐い…