短編2
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妄想フレンド

少年には親友がいた。

ネットで知り合った友人だ。

お互いに顔も本名も住んでる所も知らないけど、いつも近くにいる、そんな気がした。二人は毎日パソコンを挟んで会話をした。

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ある日、少年は母親に、『毎日毎日パソコンばっかり見て、あなたには友達がいないの!?』と言われた。少年は苛立ちながら、『うるさいな、友達ぐらいいるさ!』と返した。少年は親友を馬鹿にされたことに怒ったのだ。

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少年は親友に愚痴をこぼした。すると親友は、『なら、僕のところに来るといいよ。』そう告げた。

少年は、まだ見ぬ親友に会うのを夢見て、家を出た。

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少年は、指定された待ち合わせ場所についた。しかし、いくら待っても親友は来なかった。ふと、家のことが気になった。もし、家族が心配していたらどうしよう。などと考えながら帰路についた。

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家に帰ると、家族はいなかった。というより、家族は『生きて』いなかった。あれほど口うるさいと思っていた母親も、あれほど邪魔だと思っていた妹も、あれほど迷惑だと思っていた父親も、全部、いなくなっていた。

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少年は絶望した。もし、自分が家にいたら、家族を失うことはなかったのに。少年はそう思った。そして少年は、メモを残し、自ら命を絶った。

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『昨夜、○○県××市の民家で、1△歳の少年とその家族の遺体が発見されました。死後数日が…』

淡々とニュースは語る。そこに慈悲などないかのように。

『民家からは、少年のものと思われる遺書が見つかりました。遺書には、『ごめんなさい、僕の親友。』と書かれており、警察は事件との因果関係を…』淡々とニュースは語る。そこに意味などないかのように。

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少年には友達がいなかった。

せめてネットの中だけでも、と思ったが、結局出来なかった。

だから友達を『作った』。パソコンとケータイのあいだだけで行き来される言葉。それだけで充分だった。

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少年はいつしか、画面の向こう側の親友に会いたくなった。だから会いにいった。でも会えなかった。当然の結果だった。でも少年は信じなかった。

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少年は絶望した。自分の親友を否定した家族を恨んだ。だから、殺した、殺した、殺した。そして、親友に許しを請うた。でも、親友は何も言わなかった。

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少年は最期まで否定された。嘘をついた『自分自身』と、生まれてくるはずのなかった『親友』に。

少年はただ、友達が欲しかっただけだったのに。

Concrete
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明けましておめでとうございます! いろいろあって出てこれなかった都伝ハンター(仮)です。
mamiさん、前回に引き続きありがとうございます!
今年も精一杯頑張っていきたいと思います。

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読むペースが遅くて、今頃のコメントですみません。
切ないお話しですが…
この手のお話しは大っ好きです‼

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コメありがとうございます!
やっぱり、話し相手がいる方が人生楽しいですもんね♪
これからも、どんどん投稿していきたいと思います!

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沙羅さん、ありがとうございます!
前作も今作も似たような雰囲気の作品になってしまいました…
私の深層心理の中に何か同じようなものがあるのでしょうか…(実際、私がここに来た理由は話し相手が欲しいというものなんですけどね。)
恐いか怖くないかと言われれば怖くないかもしれませんが、見てくれて感謝です!

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