この話はアワードを受賞したロビンM太郎.comに贈ります。
しかも、始めての投稿で《小学生の作文》並の仕上がりです。
興味のない方はスルーしてください。
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関西へ引っ越した幼馴染みの兄貴が死んだ。
友人と俺は、とにかく毎日一緒にいた。
だから、この兄貴の事もよく知っている。
俺と弟同様に接してくれ、虫の捕り方や独楽の回し方など、とにかく色々な事を教わった人でもある。
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仕事の都合で、葬式に参列できず四十九日も過ぎてしまったが、やっと有給がとることができたので、友人の実家へお線香をあげに行くことにした。
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友人の両親は、遠路はるばる来た俺を大変歓迎してくれた。
その兄貴は、何度も手術を繰り返した末での結果だっとのことだった。
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夕飯時になると、友人が近所に旨い中華料理店があるからと連れ出してくれた。
歩いて中華料理店に向かうと、その店の看板には、まるで絵かと思うほどピクリとも動かない大きな大きな《蛾》がとまっていた。
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『ここのエビマヨはたまらないんだ』と、友人がいくつかの料理とビールを注文した。
友人はビールをチビチビ飲みながら何か考え事をしている様に、何も話さない。
いつもの明るい友人と別人のようだ。
兄弟を亡くし、落ち込んでいる親友へかける言葉も見つけれない自分が恨めしくなった。
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『…ひ…エビマヨです…ひひ…』
何故か、指三本に大袈裟なくらい包帯を巻いた店主が料理を次々と運んできた。
ビールをまたチビっと飲んだ友人が、ポツポツと話し始めた。
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『20年くらい前にさ、叔父が大手術したんだよ。
脳のさ。もう本当にヤバかったみたいで。
母ちゃんの兄弟も、従兄弟も手術前から泣いちゃったりして…
とにかく、親族一同大変だったんだ。
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そんな中、兄貴だけは昼過ぎまで寝ててさ。
家族からも大ひんしゅくだよ。
そしたらさ、兄貴がのほほんと言ったんだ。“叔父さんは助かるよ”って。
聞いたらさ、夢見たんだって。でっかい川の岸に男のひとの後ろ姿があって、川に入ろうとしてて。で、向こう岸にはじいちゃんやらばあちゃんやら、すごく沢山の人が“お前はまだ早い。戻れ戻れ”って追い返す仕草をしてるって。すると、その男のひとは、くるりと振り返って戻って来たと。その時の顔が叔父さんだったから助かるって』
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少し微笑みながら、兄貴の思い出話を語る友人を俺は黙って見ていた。
『で、兄貴の予言通り叔父は助かったのよ。もう、奇跡的だったって。
その後、兄貴と話しててさ。なんで、叔父と仲が良かった兄弟達や嫁さん・子供でなく、兄貴がそんな夢見たんだろうなって。もう何年も会ってなかったのにさ。』
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しばらくの沈黙のあと、友人がまた話し出した。
『今、思うんだ。三途の川の順番待ち…かな?って。』
『え?何の順番?』
始めて俺は、口を挟んだ。
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『あの世に行く…行きかける順番待ち…』
きょとんとする俺とは逆に、ギラギラした目で、既に聞いてないフリをやめた包帯を巻いた店主は、友人の話に聞き入っている。
何故か、自分のコップにビールも注いでいる…
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『叔父は死にかけた…川を渡りかけたけど渡らず帰ってきた。その《背中を見た夢》を見たのは兄貴だけ。で、20年ほど経って、今度死にかけた…死んだのは兄貴ってこと。つまり、叔父の後ろに並んでいた兄貴だけが見えたんじゃないかって。』
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固まる俺とは逆に、店主はウンウンと頷いているのが気になるが…
俺は、黙って話の続きを店主と待った。
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『実はさ…兄貴の最後の手術の日。俺見たんだよね。川岸に誰かが立っている夢。向こう岸のじいちゃん達はさ、ニコニコ笑いながら“苦しかったろう、もういいんだよ”と、手招きしてんの。すごく遠い所にいるのに、声は鮮明に聞こえてくるの。』
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友人は、少し微笑んだまま、冷えてしまったエビマヨを口に入れた。
そして…一言言ったんだ。
『次は俺なのかなぁ…』って。
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やっぱり、かける言葉が分からないガキな俺は、ビールをぐびぐびと飲んだ。
そんな俺を見て、ニカっと昔のままの笑顔を見せた友人は、店主に言った。
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『店主、タクシー一台。』
『ひっ…タ…タ…タクシー…』
作者mami-2
書…書いてしまいました。
お祭りに乗じて…どさくさに紛れて…
こんな作文載せて、すみません。
最初で最後です。お許しください…
もう、ドキドキと脇汗が止まらない…
半分くらい、実話です。
とても、フィクションなんて想像できなくて…
ロビン様、本当に本当におめでとうございます!
まだまだこれからも、楽しみand期待してます!
最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。