40年以上前の話です。
当時、私は小学校の5年生ぐらいだったと思います。
学校に行くと宿題や問題に答えられなくて、
何時も居残り組みのお世話になってました。
先生には怒られっぱなしだし毎日学校に行くのが嫌で、嫌で、
たまりませんでした。
そんなある日。
宿題を家に忘れて先生に家から持ってくるように言われて
取りに行きました。
家を出て学校に戻る途中、時間があることを良いことに
気が変わり近くの神社でサボってました。
神社の社の軒で腰をかけて「ボー」としていると
「ミン、ミン、ミン、ジー、ジー、ジー」とせみの声がやけに
耳障りなほど響いてきました。
セミの声をジーと聞いていたら眠くなり
いつの間にか学校のことなど忘れ寝てしまいました。
1時間。いや2時間。
どのくらい寝たかわかりませんが、
起き上がると神社の軒で寝ていたはずが
お堂の中に居ました。
どうして中に居るのかわからず少しボートしてました。
お堂の中から出ようとするとお堂の扉には
外から錠がかかり出ることが出来ませんでした。
しばらく泣いてましたが誰も来てくれません。
それどころか夜になり外は真っ暗です。
お堂の隙間から見える外灯の明かりがやけに明るく感じました。
真っ暗なお堂の中はまるで別世界です。
神棚や神輿に使う道具がやたらと置いてあります。
私は正気に戻り一生懸命出口は無いか探しました。
しかしねずみ一匹入る隙がありませんでした。
お堂の前の扉の外に向かい叫びましたが、だれも答えてくれません。
月の明かりが正面の扉の隙間から入るだけでした。
このまま助けが来ないと思うと、悲しくなり泣きました。
「このまま見つからなくて死んでしまうのでは」と考えると
叫び声を上げました。しかし誰も来ません。
いくら叫んでも誰も助けに来てくれない。この事を自覚すると
「月明かりの差し込むお堂で僕は死んでしまうのか?」そう思ったり
「真っ暗な世界は嫌だ。どうせなら明るい世界で死にたい。
もう悪いことはしませんから許してください」そう祈り続けた。
何時間祈り続けたかわからない。
闇の中を近づく足音がした。
外のほうで話し声も聞こえてきた。
3人の人の気配がしてきた。私はお堂の扉に近づき声を上げました。
懐中電気の光が近づいてきた。私は大声を上げて助けを呼んだ。
「助けて、ここに居るよ、助けて」
消防団の服を着た人が3人、網戸越しに声をかけてきました。
「大丈夫か?」「お前この前居なくなった小学生か?」
その声を聞くと「早く出して」と大声を上げました。
一人が戸を「ガチャ、ガチャ」したが扉には大きな
南京錠が掛かっていてびくともしない。
「今開けてやるからな。体は大丈夫か?扉には大きな何斤錠がかかってる。」
「早く神主に行きカギを借りてこい」というと一人が駆け出しました。
まもなく神主が駆けつけて私は無事出してもらいました。
神主は「何かない限りはこのお堂の鍵は開けないから入ることができないはずだ。
子供だからどこかお堂の隙間から入ったのではないか」と言うと
すぐさまお堂の中を調べました。
しかし床や壁に至るまで隙間や入るところがありませんでした。
まもなく親や学校の担任、警察がやってきてお堂周辺は
すごい人ごみになりました。
警察や担任、親に、色々聞かれましたが、
答えられるのは、「せみの声を聞いていて眠くなって寝たらお堂の中に居た」
と言う事だけでした。
驚いたのは私が3時間ほど寝たつもりが、丸4日経っていたことです。
空腹感もなく、私自身が4日間お堂の中に居た事を自覚してないことでした。
おばあさんは「悪いことばかりするから神様が怒って神隠しをした」
と言ってました。
私はおばあさんの言ってることは「本当じゃないか」と思いました。
私のように丸4日で解放された子も居れば、
いまだに何年も見つからない子も居る。TVで探してる子供や家出は
この神隠しも含まれているのではないでしょうか
作者退会会員
よもつさんの
小説を私が書くとこうなってしまいます。
昔ながらのタイムトラベルです。