昔の話です
地方では秋になるとあちこちの神社やお宮で、
お祭りが開かれますその時の話です。
お祭りは近くの神社で行われてます。
そこには縁日がでて、綿あめや、金魚すくい等がでて
見ていても楽しいものです。
その年には珍しく、神社の片隅にお化け屋敷がでてました。
お化け屋敷は昔ながらの「ろくろっ首や一つ目小僧、かさお化け」です。
彼女と一緒に入りました。
中からは、女性の悲鳴や鳴き声、笑い声が聞こえてきます。
私は普段から怖い目に会ってるので、人が演じるものは、あまり怖くありません
好奇心だけで入りました。
お化けはやはり「ロクロッ首。ミイラ男、ドラキュラ、一つ目小僧、傘お化け」
と続き、時折糸のついた人魂が飛び交います。
私は面白くて笑ってばかりいました。
彼女は「キャー、キャー」言って怖がってます。
それも終わりに近づき
最後に口裂け女に扮した人がでてきて終わりでした。
でも私にはその口裂け女が出てくる前にもう一人、女性の影を見ていました。
彼女や他の人には見えないようですが、私には見えてました。
口裂けの隠れていた壁の横に、もう一人の女性が居たのです。
私はそれを見た途端。
体に電気が走るのを感じました。
自然に危険信号を出していました。
彼女は怖がり、しがみついて出口に私を引っ張って行きます。
私の見た女性の影も一緒に私たちの後をついてきます。
どうしたら良いかわからず
お化け屋敷を出て屋台の人の多い方に彼女を誘い歩き出しました。
私は彼女にとっても一番安全だと思ったからです。
少し行くと彼女はお祭りに飽きてきて
「帰りたい」と言い出し彼女の家まで送って行きました
その後にあの女性の影が私の跡を追うように
着いてきます。
どうして着いてくるか判らず、私は家に戻りました。
家の門をくぐるとさすがに影は着いて来ないようです。
安心して風呂に入り寝ることにしました。
時計を見ると12時前です。
寝ようとして電気を消した途端。
押入れの戸に女性の影が。
私は怯えました。
すると次に布団の上で金縛りになり身動きできません
影は近づいて来ます。
恐怖でどうしたらいいか判らずお経を唱えだすのがやっとでした。
すると影は少し他事のいた気がしたのを感じました。
何か言ってますが私の心はもう閉ざしたまま、
恐怖に怯えることで精一杯です。
少しすると金縛りは解けました。それと同時に影が消えました。
次の日。
影の話をお婆さんに話すと「今度着たら影に話しかけてあげなさい。」
可愛そうな自縛霊かもしれないと言いました。
「あの世にも行けずこの世にも戻れない霊が助けを求めてきたのかもしれない」
との事でした。
その日の夜、やはり12時を回った頃、押入れの戸に影が映り,
また金縛りです。
私の目の前に来ると、黒い影は女性に代わり、私にまた話し掛けてきました。
「お化け屋敷が建っている舞台の裏のサクラの木の下の骨を移してほしい。」
そう言うと消えました。
私は今言われた事を、お婆さんに告げにまっしぐらに部屋に行きました。
お婆さんは布団から起きると眠い目をこすり、
私に「出たのかい。どうだった?怖くなかったろ。」と言うと
笑顔で迎えてくれました。
今しがたの出来事をお婆さんに話すと
「知っていたかのように、やっぱりサクラの木の下に骨があるのかい。あそこは、
以前、壕が掘られていて爆弾が落ちて、ずいぶん人が死んだ。
その死んだ人の多くの体はバラバラになり、遺体の回収が出来なかったんだ。」と言うと
仏壇の扉を開け、「お前も一緒に供養しなさい。明日骨を引き取り成仏させてやるから。」
と言うと、1時間ほどおばあさんと一緒に拝み次の日の朝から私は学校を休み、
サクラの木の下をお婆さんが言う通り掘って行った。
桜の根に傷をつけないように掘るのは大変だった。
お婆さんの指差す方向を掘るのも大変だった。次々に場所を変えて掘って行く。
5箇所ほど穴を開けた。6箇所目の穴を掘って30cmほど掘ると
シャベルに「コトン」と当たる音がした。
手で泥を掻き分けるとそこには金属製の真っ赤にさびた半円形の板が出てきた。
お婆さんにその板を見せると「それだ。その下に骨がある。」そう言うと
両手を合わせ拝み始めた。
私はその半円形の板を掘りおこした。その板には小さなカスれ字でUSAと書かれていた。
30cm四方は在った。その板を剥がすと、
下からボロボロの布に包まるように白骨化した骨が一杯出てきた。
お婆さんにその骨を見せると、
「ヤッパリあったかい。」と言うと「このままにして、警察を呼びなさい」
と言うとまた骨に向かい拝み始めた。
警察を呼ぶと、桜の木の周りは立ち入り禁止になった。
大勢の野次馬があつまり、あの静かだった神社もお祭りのような具合だった。
その骨は、第二次大戦で爆弾を受け逃げ遅れた人たちであることがわかり、
丁重に無縁仏として葬られる事になった。
お婆さんは、その骨の一部をお寺に頼み、預かり女の霊を退散される
事にした。
しかし、一度自縛霊になった者を元の状態に戻すのは容易な事では無かった。
浮遊している者を呼び戻し、それを成仏させる作業でした。
私は、おばあさんから言われたように、私の部屋で霊が現れるのを待ちました。
12時、1時、2時、時計が2時半を指したときに、部屋の明かりが暗くなり
彼女が現れました。
私は、案内するように,階段を降り、お婆さんの部屋に案内しました。
お婆さんは、おびえる彼女を部屋に入れると、仏壇を開けて部屋の電気を全て消しました。
それから、彼女が部屋の隅に入る事を確かめるとお経を上げ始めました。
私もそのお経に加わり、二人の合唱です。
そうして30分。彼女の影が薄くなり、お辞儀をする姿が見えたとき
彼女は、スーと消えて行きました。
お婆さんは、「これで成仏してあの世に行ける。」と言うと眠くなったのか
お婆さんは、私のひざに頭を乗せて寝てしまいました。
きっと成仏した霊に気を使って居たのでしょう。
お婆さんの寝顔は子供のように安らかでした。
作者退会会員