初恋。産まれて初めてあんなに愛おしいと思える女性はいなかった。ただ、シャイだった俺は話しかけようとすることが難しく、親友のKに相談した。
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「愛を貫けば良いのさ!」
当たり前の様にKは言う。
『そんな勇気、俺にはないさ。』
簡単に言うなよ。と返答する。
「俺は愛を貫いたから、今、こうして最愛の彼女がいるのさ。お前は、俺と何処か似ているし、きっと出来る。」
『それは、お前がポジティブな頭をしているからさ。お前と一緒にすんなよ。』
確かこんな会話をしたっけ。
ただ、そんな事を言いつつ内心
《愛を貫く。愛を貫く…》
と復唱していた。
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場面は雨降る街中。そうだ。この時俺はやっとの事で彼女をデートに誘えたんだっけか。間近で見る彼女はいつも以上に綺麗で美しく、さらに俺の心を掴んでいった。
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「あら、あそこに子猫が!危ないわ!」
そう言うが早いか、彼女は俺の手を振りほどき道路に飛び出していった。
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俺の制止する声も聞かずに__
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ハッと暗く深い夢から覚める。
地につかない足。気分がいいとはとても言えない。
俺は、目の前にある、宙に浮いている俺の姿を目の当たりにしていた。
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《アイヲツラヌク》
作者Faust