普通の概念というものは人それぞれあるが、もちろんわたしにも他人に理解されない"普通"があった。
それは普段生活している部屋の中で起こり、あたかもそこにそうあることが当たり前と言わざるを得ない。
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ある日、友人Aがわたしの部屋に初めて遊びにくると、彼女は「綺麗な部屋だねー!」とわたしの目も憚らず、カーペットの上にごろんと寝転んだ。
「ちょっと」
「あ、ごめん…つい」
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照れくさそうに笑う彼女は何処かあどけなく、Rとはまた違ったタイプの友人だ。
彼女は高校から一緒で、Rもその存在を知らないが、たまにこうして遊んでは仕事の話や(彼女は息子がいるので)家庭の話をしている。
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shake
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―パキッ
「え…」
「A?」
―パキッ パキ…
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「ね、ねえスーちゃん…この音なに…?」
「え、なんだろう?いつもしてるけど。Aの家はしないの?」
「…しないよ…」
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ハハ、とわたしが軽く笑うと、Aはやけに怯えた様子だった。
この音はわたしが実家にいたときも自分の部屋で鳴っていたし、わたしは聞き慣れた音だ。
だけど目の前の彼女はどうも怯えてる。
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「この音ってさ…ラップ音ってやつじゃ、ないの?」
「さあ、"普通"じゃないの?」
Aは少しだけ話すといつもより2時間も早く帰った。
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そしてこの音は今でもわたしの部屋では鳴っている。
作者Suche.
このあとAちゃんとはあまり話していません。
Rに話したら「普通家の中で木の枝が折れる音がしたらおかしいだろ」と笑われてしまい、わたしは「確かに」と納得するほかありませんでした。