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短編2
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写真の中の祖父

俺が中学一年の時に、祖父が突然死んだ。

祖父は祖母と二人で行った温泉旅行から帰ってきたその日に

心筋梗塞かなにかで死んだ。

祖父は今まで病気一つしたことのない人だったので

そのあまりにも突然の死にみんな吃驚していた。

葬式が終わり、家族で祖母の家に行くと

旅行から帰ってきて、そのままになっている祖父の旅行鞄を見つけた。

母が旅行鞄を開けて整理していると

祖父が今回の旅行のために買ったインスタントカメラが出てきたので

母は夕飯の買い物のついでに近くの写真屋でそれを現像してもらってきた。

出来上がった写真を見てみると

旅行先の観光名所だけが写った写真か

祖母一人がこちらを向いて微笑んでいる写真ばかりで

祖父が写っている写真が全然、見当たらなかった。

祖母が言うには、祖父は写真を撮るのは好きだが

自分が撮られるのはあまり好きではないらしく

見ず知らずの人に「すいません、シャッター押してもらえますか?」と頼むのも

照れくさがって嫌がるらしい。

「こんなことなら、無理してでも一枚、二人で写った写真を撮ればよかったねえ…」

と祖母が漏らすと

弟が、じいちゃんが写ってる写真あったよ!と写真の束から一枚の写真を取り出した。

その写真には、展望台で、疎らにいる観光客を背に微笑む祖母と

祖母から少し離れた後ろで、こちらを無表情で見つめている祖父が写っていた。

その写真を手に取った祖母は

「変だねえ、確かに、ここに行っておじいさんは写真を撮っていたけど

誰かにシャッターを頼んだ覚えはないいんだけどねえ…」と怪訝な顔をした。

確かにその写真はちょっと変だった。

祖父は、たまたまそこを通りかかったらカメラに写ってしまったといった感じだった。

父が、「そっくりさんじゃない?」と笑ったが、写真の人物は誰がどう見ても祖父だったし

着ている服も祖父の服だった。

祖母は、「私の思い違いかしらねえ。」と言って写真を元に戻した。

祖母の家から帰る車中で父が、

「この世には自分とそっくりの人間がいるって言うじゃない?きっとそれだよ」と冗談っぽく言った。

それを聞いて俺は

「たしか自分とそっくりの姿をした人間に出会ったら死ぬんじゃなかったけ…?」と思ったが、

母が「馬鹿なこと言わないで。お母さん、最近忘れっぽいから。誰かにカメラのシャッター押してもらったの忘れてるのよ。」と怒った。

この話はこれ以上家族でしないことにした。

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