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おばあちゃん、いつ死ぬの?

中編4
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おばあちゃん、いつ死ぬの?

中学生になったばかりの年の夏、友達のミサちゃんに誘われてミサちゃんのお婆ちゃんの家へ遊びに行きました。

「中学生になったお祝いも兼ねて、ささやかなパーティーをしよう。だから、お友達も連れといで」

そう、お婆ちゃんに言われたそうです。

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ミサちゃんのお婆ちゃんの家に行くと、ミサちゃんの従兄弟達も来ていました。

同じように中学生になった子、高校生になっ子もいて、無事に進学できた身内を集めてパーティーをやるんだな、と理解しました。

ミサちゃんのお婆ちゃんは、ミサちゃんのお父さんのお姉さんの家族と暮らしていました。

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そのお姉さん夫婦には、ケンちゃんという小学5年生の男の子がいました。

パーティーの料理が出揃うまで、そのケンちゃんも交えて遊んでいました。

テレビゲームがいい、と言うので私とミサちゃんもそれに付き合うことに。

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当時はまだスーパーファミコンも出ていなくて、ただのファミコンでした。

ゲームで遊んでいると、料理が出揃ったので集まりなさい、と集合がかかりました。

テレビとファミコンの電源を切って、大きなテーブルのあるリビングへ。

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テーブルの上には、ちらし寿司や煮物、サラダ、サンドイッチにポテトフライ、ハンバーグ等々、子供が大好きなメニューが並んでいました。

私もミサちゃんも朝ご飯を抜いてきていたので、お腹ぺこぺこ。

みんな、思い思いに席に着きます。

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「えー、みんな、無事に進学おめでとう。来てくれた友達もありがとう」

お姉さん夫婦の旦那さんが祝辞を述べ、乾杯の音頭を取りました。

『かんぱーい!』

ジュースの入ったグラスを掲げて言うと、周りでグラスを軽くゴッチンコ。

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喉を潤すと、豪華な食事にみんな手を伸ばしました。

こういうホームパーティっていいな、と思いながら私もご馳走を食べました。

育ち盛りのせいか、料理はあっという間になくなっていきました。

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食事が済むと、一人一人お菓子の詰め合わせをもらってお開きになりました。

私とミサちゃん、ケンちゃんは、お婆ちゃんの部屋へ行きました。

今日のお礼を言うのと、おしゃべりを楽しむためでした。

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お婆ちゃんの部屋に入ると、なぜか背筋がゾクリ。

何かいるのかと部屋を見回しましたが、特にこれといって何もなく、部屋自体が陰鬱としている感じなのです。

悲しくなるような、寂しくなるような…。

何とも言えない気分になりました。

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お婆ちゃんの住む家は、お婆ちゃんとお爺ちゃんで購入したもので、お爺ちゃんが亡くなった後、お姉さん夫婦がお婆ちゃんの面倒を見るために引っ越してきたのだそうです。

お婆ちゃんの部屋には万華鏡やら紙ふうせんやら、子供心をくすぐるものが置いてありました。

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お婆ちゃんはロッキングチェアに座ると、編み物を始めました。

「それ、何を編んでるの?」

ミサちゃんが尋ねると、

「ケン坊のマフラーだよ。間もなく秋が来るからねぇ。そしたら、冬なんてあっという間さ」

お婆ちゃんは、そう答えました。

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青いマフラーの端には、水色の自動車が描かれていました。

ケンちゃんは自動車が好きなんだなー、と思っていると、自分のマフラーだと聞いてしげしげとマフラーを見つめていたケンちゃんが、

「おばあちゃん、いつ死ぬの?」

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私もミサちゃんも、その場で固まりました。

お婆ちゃんも「え…?」という顔で、編み物の手を止めています。

ケンちゃんは続けて言いました。

「おばあちゃんが死んだら、僕、この広い部屋をもらえるんだ。お母さんが、僕にくれるって約束してくれたんだよ」

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子供は正直だと言うけれど、これはあまりにも残酷だと思いました。

「ケンちゃん!お婆ちゃんに、なんてこと言うの!謝りなさい!」

ミサちゃんが叱ります。

ケンちゃんは、あからさまに不機嫌な顔をすると部屋を出て行きました。

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「…大丈夫だよ、ケン坊。そんなに長生きはしないから…」

ポツリと言ってマフラーをギュッと握りしめるお婆ちゃんに、私は心が痛みました。

それから、やっと部屋の陰鬱な空気の正体が分かったのです。

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お婆ちゃんが亡くなれば、この家は必然的にお姉さん夫婦のものになります。

だからケンちゃんにも、お婆ちゃんが使ってる広い部屋をあげるなんて言ったのでしょう。

人間の欲望…、私利私欲がこの部屋には強く渦巻いている。

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親切なお姉さん夫婦を、鬼のように感じました。

優しい顔の下には、ドロドロした欲望。

ケンちゃんの残酷な発言に、お姉さん夫婦の本性が垣間見えて背中が寒くなりました。

「お婆ちゃん、気にしちゃダメだよ?」

ミサちゃんが言いました。

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「そうですよ。お婆ちゃん達お年寄りの知恵は、何よりの宝です。だから姥捨山も、なくなったんでしょう?お年寄りを大事にしないとダメだって」

ミサちゃんのあとに私が続けて言うと、お婆ちゃんはミサちゃんと私の頭を撫でてくれました。

「2人は良い子だね」

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それから目元をそっと手で拭うと、微笑んでくれました。

「長生きして、お婆ちゃん」

ミサちゃんの言葉に、お婆ちゃんは「うん、うん」と何度も頷きました。

そんなお婆ちゃんの部屋には、もう夕方のオレンジ色の陽射しが射し込んでいました。

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お婆ちゃんやお姉さん夫婦にお礼を言って、その日は帰りました。

なんだかやるせなくて、私もミサちゃんも無言で帰ったのを覚えています。

こんな残酷なことが、世の中まかり通っていいものなんでしょうか…。

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残酷なことを平気で言える子供に育てた親にも、そんな親を生み出した世の中にも、私は疑問を感じます。

このまま進んで行った先に、本当に人間にとって幸せな未来はあるのか…?

これって、人間全体で考えていかなければならない問題なんじゃないでしょうか…。

[おわり]

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おばあさんに極楽での最高の暮らしを願い、
鬼嫁とその愚息の最大級の不幸をご祈念申し上げます。

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