中編3
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浅間サンライン

以前にもここで書かせていただいたが、私の夫の仕事は海上コンテナの運搬である。

昨年末に労働条件の良い会社に引き抜かれ、今は遠方まで配達に行くことはなくなったが、それまでは新潟や長野、福島なんかにも配達に行っていた。

そんな前の会社にまだいた時のお話。

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その日は長野の千曲市まで配達へ行くことになった。

夫は遠方へ配達の時は、必ず前日の夜には出る。

その日も翌日8時着の仕事だったので、仕事から夜の7時くらいには家に帰ってきて夕飯とお風呂を済ませて出かけて行った。

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長野へ配達に行く時は、いつも浅間サンラインを通ってるそうだ。

そばには川が流れて森があったり、田園風景があったりと、長閑な風景が続く道らしい。

途中には道の駅もあって、そこで良く土産を買ってきてくれていた。

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仕事に出た翌日の朝6時ちょっと前に、いきなり夫から電話が入った。

眠い目を擦りながら携帯電話に出ると、興奮した夫の声が耳に飛び込んで来る。

「見た!本物!見た!初めて見ちゃった!」

「…声でかいよ、とりあえず落ち着け」

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夫をなだめてから、改めて詳しく話を聞いた。

前日に配達に出た夫は、いつも長野までの途中にある道の駅「おかべ」で仮眠を取る。

仮眠を取って再び走り、浅間サンラインに入った時はまだ夜明け前だったとのこと。

梅雨入りしていたこともあり、その日は雨が結構降っていた。

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このまま走ると予定よりもかなり早く到着してしまうので、トイレ休憩も兼ねて浅間サンラインの途中にある道の駅に寄ることにしたそうだ。

雨が降っていることもあって、徐行運転でスピードも落としていたらしい。

やがて道の駅が見えてきた時のことだった。

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道の駅の入り口付近に、白い服装で、よくある半透明の雨合羽を着ている女が目に入ったそうだ。

夫が言うには、

「マジ、見た瞬間、氷水を背中にタラ〜っと垂らされたようなゾクッとした感覚と腕の毛が総毛立つゾワッとした感じがいっぺんに来た!」

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…とのことで、

「上手く言えないけど、ホント、その時は本能的にヤバいって感じた!」

と、興奮気味に話してくれた。

「最初は白い看板だと思ったんだ。けど、近付いていくにつれて人の形してきて女だと分かって、しかも、周りの景色から浮かび上がってるような感じで、そこだけ空気が違うんだよ」

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怖がりな夫は、道の駅に入るのを諦めて雨合羽を着た女と目を合わせないように通り過ぎた、とのことだった。

通り過ぎざまにサイドミラー越しにチラリと見たが、やっぱりゾクッとしたらしい。

「やっぱさ、こういうのって自分が実際に体験してみないと分からんもんだね」

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まだまだ初めて幽霊を目撃した興奮が冷めやらぬのか、朝だというのに声のトーンが盛大だった。

「ねぇ、まさか憑いてきちゃったりしてないよね?」

不意に不安そうな声で言うので、私は電話の向こう側に意識を集中してみる。

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特に雑音も聞こえないし、それらしい存在も感じなかったので、

「うん、大丈夫みたい。でも、雨だし帰りも通るなら気を付けるに越したことはないと思う。幽霊だけじゃなくて、運転にもね」

そう答えると、夫はホッとしたようだった。

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人間というのは、自分の目で見て自分で実際に感じたものしか信じない生き物だとホラーテーラーの稲川淳二も言っている。

だからこそ、視えない人間は自分が実際に霊体験した時、初めて視える人の世界を理解することができるんだ、と。

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長野の配達から無事に何事もなく帰ってきた夫も、

「お前みたいに視える人間って、いつもあんな身の毛もよだつような体験してるんだな。怖いもの見たさってあるけど、俺は2度とゴメンだね」

そう私に言った。

零感な夫が幽霊を見たとあって気になった私は、ネットで浅間サンラインを調べてみた。

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すると、浅間サンライン終点付近に「野竹トンネル」という心霊スポットがあるのを知った。

その心霊スポットが今回の霊体験に関係してるのかどうかまでは私には分からないが、心霊スポットの近くでは幽霊に遭遇しやすいとよく言われているので、なるほど、と思った。

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あれから夫は、よほど自分が体験したことが衝撃的だったようで、今でも時折、思い出したかのように私に話して聞かせる。

夫曰く「妻の視てる世界観を共有できたのは嬉しいが、もう幽霊は勘弁してほしい」…とのこと。

[おわり]

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来道 様

コメントありがとうございます。

女性の着替えを見れちゃったら、それはそれで後で怖い目に遭うかも…ですよ?(笑)
望遠鏡を覗いたら誰も居ないはずなのに、望遠鏡の反対側に目が…なんて怖話もありますね。

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ほんと、見えないものを見ようとして望遠鏡をのぞいても、
女性の着替えはみれませんが、
突然悪意ある霊がみえたら間違いなくちびります……

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