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中編5
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コトドワタシ

今回は私の大好きな日本神話より、美しくも恐ろしいお話をご紹介します。

有名なお話なので、皆さんも一度は聞いたり読まれたりしていると思いますが、私はこれを読んだ時、「.夫婦って何だろう?」と考えさせられました。

それでは、始まり始まり…。

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伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)の二柱の神は、別天津神(ことあまつがみ)たちに地表を漂っていた大地を完成させるよう命じられました。

そして、別天津神たちは天沼矛(あめのぬぼこ)を二神に与えました。

伊邪那岐・伊邪那美は天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛で渾沌とした大地をかき混ぜます。

このとき、矛から滴り落ちたものが積もって淤能碁呂島(おのごろじま)となったのです。

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於能碁呂島に降り立った伊邪那岐と伊邪那美は、結婚をします。

まず、伊邪那岐は左回りに、伊邪那美は右回りに天の御柱を巡り、出会った所で伊邪那美が「あぁ、なんて素敵な殿方でしょう」と伊邪那岐を褒め、その後に伊耶那岐が「あぁ、なんと美しい女性(ひと)なのだろう」と伊邪那美を褒め、二神は交わりました。

しかし、女性である伊邪那美の方から男性の伊邪那岐を結婚に誘ったために、ちゃんとした子供が生まれなかったのです。

二神は、最初に産まれた子供である目も耳も鼻も口も耳も手足さえない水蛭子(ひるこ)を葦舟に乗せて流してしまい、次にアハシマ(淡島)が産まれました。

困った二神は別天津神のもとに赴き、なぜちゃんとした子供が生まれないのかを尋ねました。

すると占いによって、女性から結婚を誘うのがよくなかったと告げられたのです。

そのため、二神は淤能碁呂島に戻り、今度は男性の伊邪那岐から結婚を誘って再び交わりました。

こうして、無事に国産みはされていったのです。

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次に、国を護る神々が必要だと考えた二神は神産みを始めます。

この時、哀しい事故が起こりました。

神産みの最中、火の神である火之迦具土(ヒノカグツチ)を産んだ伊邪那美は陰部を大火傷して命を落としてしまったのです。

愛する妻を失った伊邪那岐は、怒りに任せて火之迦具土を十拳剣(とつかのつるぎ)で斬り殺してしまいました。

それでも伊邪那岐は美しく愛しい妻の伊邪那美を忘れることなど到底できず、伊邪那美を取り戻そうと黄泉国へ赴くことにしました。

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黄泉に着いた伊邪那岐は、真っ暗な闇の中、戸越しに伊邪那美に言いました。

「愛する妻よ、貴女と一緒に創った国土はまだ完成していません。黄泉を出て一緒に帰りましょう」

しかし伊邪那美は、

「ごめんなさい、あなた。もうすでに黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、生き返ることはできません」

と答えました。(注:黄泉の国のものを食べると、黄泉の住人になるとされていました。これを「黄泉竈食ひ(よもつへぐい)」といいます。)

それでも伊邪那岐は、諦めずに伊邪那美を説得し続けます。

すると伊邪那美は、

「分かりました。そこまでおっしゃるのであれば、黄泉神に帰っても良いか相談して参ります。ですが、その間…お願いですから、私の姿は見ないで下さいね」

と言って、家の奥へと入って行きました。

愛する妻を連れて帰れる!

喜んだ伊邪那岐は、伊邪那美が戻ってくるのを今か今かと待ちました。

ですが、待てども待てども伊邪那美がなかなか戻ってこないため、痺れを切らした伊邪那岐は自分の左の角髪(みずら)につけていた湯津津間櫛(ゆつつなくし)という櫛の端の歯を折って、それに火を灯し、つい家の中を覗き込んでしまったのです。

すると、そこで見た伊邪那美の姿は、身体は腐ってあちこちに蛆がたかり、声はむせびふさがっており、蛇の姿をした8柱の雷神(八雷神)がまとわりき、かつての美しい妻の姿はもう、そこにはありませんでした。

変わり果てた妻の姿に恐れ慄いた伊邪那岐は慌てて逃げ出し、それに気付いた伊邪那美は自分の醜い姿を見られたことを恥じて、黄泉醜女(よもつしこめ)にすぐ伊邪那岐を追わせました。

迫り来る黄泉醜女に伊邪那岐は、蔓草(つるくさ)を輪にして頭に載せていたものを投げ捨てました。

すると葡萄の実がなり、黄泉醜女がそれを食べている間に逃げたのです。

しかしまだ追ってくるので、右の角神(みずら)につけていた湯津津間櫛(ゆつつなくし)という竹の櫛を投げました。

するとタケノコが生え、黄泉醜女がそれを食べている間にまた逃げました。

「えぇい、何をしているのですか!早く、あの男を捕まえなさい!」

伊邪那美はさらに、8柱の雷神と黄泉軍に伊邪那岐を追わせました。

伊邪那岐は十拳剣で振り払いながら逃げ、ようやく黄泉の国と地上の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)の坂本に辿り着いた時、その坂本にあった桃の実を3つ投げたところ、追ってきた黄泉の国の悪霊達は逃げ帰っていきました。

ここで伊邪那岐は、桃に「人々が困っているときに助けてくれ」と言って、意富加牟豆美命(おほかむずみのみこと)と名づけたのです。

最後に伊邪那美本人が追いかけてきて、あわや捕まりそうになった伊邪那岐は千人がかりでなければと動かないような大岩(千引岩(ちびきいわ))で黄泉比良坂を伊邪那美の目の前で塞ぎ、黄泉から悪霊達が出れないようにしました。

大岩の向こう側で、伊邪那美は悲痛に叫びます。

「かつては愛し合った夫婦であるのに、妻の私にこのようなむごい仕打ちをするなんて…ひどい人!」

そう伊邪那岐を責めました。

それから、こう言い放ちました。

「このような酷い仕打ちをするならば、これから私は貴方の国の人間を一日に千人殺しましょう!」

それを受けて伊邪那岐は、

「ならば私は、人間が決して滅びぬように千五百の産屋を建てよう!」

と返しました。

このやりとりを『ことどわたし』と言います。

日本ができて初の離婚成立の瞬間でした。

そして同時に、人間に死が運命づけられた瞬間でもありました。

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スケールは違えど、なんだか昼ドラを見ているような感じがします。

最初は愛し合った夫婦が、生まれた子が原因で夫婦間に亀裂が生じ、ついには別れる。

神様は人間よりも人間くさい、なんて思いました。

こうしてみると神話は実に面白い。

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人間にとっての教訓も、たくさん織り込まれています。

伊邪那岐と伊邪那美によって人間の生死が決まり、この後、瓊瓊杵命(ににぎのみこと)によって人間は短く儚い寿命を運命付けられる。

神とは宇宙や大自然を表すとも考えられています。

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私達人間は、そんな大自然に翻弄されながら生きている…。

それにしても…、離婚の際に互いの顔が見えない状態で自分達の子でもある人間を「殺してやる」とか、穏やかじゃないですよね…。

神様は怖いです。

[おわり]

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