心霊スポットというのは行きたくて行くばかりではなく、行かざるをえない場合もある。
それは普段の生活に直結している場所であったりするからだ。
年上の友人の長男が車を買い替えたらしく、自分の友達を連れて海へドライブへ行ったらしい。
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友人の長男…タカ君は、買い替えたマークIIを運転して朝早くから友人達とドライブを楽しみ、海沿いのレストランで夕食を済ませてから帰ることにしたそうだ。
行きは遠回りで海まで行ったが、帰りは少しでも早く帰ろうと小坪トンネルを通るルートを選んだとのこと。
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後部座席には夕飯時に酒を楽しみ、つい先ほどまでどんちゃん騒ぎをしていた友人達が車の揺れに身を任せて眠りこけていた。
一人で黙々と運転するのはつまらなかったが、楽しかった1日を思い出しながら自宅への帰路を急いでいたそうだ。
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タカ君の運転するマークIIは、やがて小坪トンネルへと入って行った。
入ってすぐに違和感を感じたそうで、ハンドルを取られているわけではないのに、車体ごとトンネルの壁へと引き寄せられるのである。
タカ君はこの時、相当焦ったそうだ。
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そのうち、後部座席で寝こけていた友人達も尋常ならぬ車の揺れに目を覚ました。
車体が左右に大きく揺れ、蛇行して走る。
「おい、どうした!?」
「…ハンドルを取られているわけじゃないのに、車体が壁に引き寄せられる!」
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幸い、車通りもなくて対向車線を走る車もいないのでハンドルを切りすぎないように何とか壁に車体が追いやられるのを堪えて走ったそうである。
そうこうしているうちに車はトンネルを抜け、車体を引き寄せる力もなくなった。
車内が緊迫から一気に解放される。
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「…何だったんだ、いったい…」
ホッとした友人の一人が後ろを振り返ると、短く「ヒ…ッ!」と悲鳴を上げた。
タカ君がバックミラー越しに友人の方を見やると、後部座席の後ろの窓に無数の手形が目に入った。
さすがに怖くなって、市街地のガソリンスタンドで洗車したそうである。
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なんとか無事に友人達を、それぞれの自宅へ送り届け、タカ君は帰宅した。
しかし、いつもそのまま自宅へ入るはずが、その時はなぜかチャイムを鳴らしたそうだ。
タカ君の母親である私の友人が玄関を開けると、タカ君の後ろに目だけがポッカリ黒く陥没した中年男性が立っていたとのこと。
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霊感も強く、祓うことにも慣れていた私の友人は息子のタカ君からその中年男性の霊を祓うと、
「振り向かないで家の中に入りなさい」
と言って家の中へ入れたそうである。
私の友人の家には、邪気を祓う水晶玉が祀られているのだが、その水晶玉が真っ黒になっていたとのことだった。
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翌日すぐに水晶玉を菩提寺で清めてもらったそうだが、友人は私にこう語った。
「いやーぁ、生きてるかわいい女の子を連れて来るならともかく、死んでるオッチャン連れて帰って来たから驚いたのなんの!」
面白半分で心霊スポットに行くのは感心しないが、こういう場合は仕方ないのかな、と思う。
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郊外の廃墟やら取り壊し予定の廃施設なら、自ら行かなければいいわけだが、道路やトンネルとなると我々の生活に直結している場所であるし、どうしても利用しないといけない時もある。
身近に心霊体験してしまえる場所があると思うと、ちょっと怖い。
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ちなみにマークIIは、川崎大師で車祓いをしてもらったそうだ。
車に幽霊が乗り込んでくるのも怖いが、私的には何もなさそうで不可思議な力が働いて事故りそうになったりする方が怖いと思う。
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皆さんも、ご自分の生活圏にある心霊スポットにはご用心を。
[おわり]
作者ゼロ
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
年上の友人は、以前「DQN親よもやま話」で書かせていただきました生保の仕事をしている友人です。
友人の勤める会社の入っているビルも、昔は処刑場だった場所の一部に建っているせいで日常茶飯事に幽霊を目撃するそうです。
そういうわけで、友人は私と同じく幽霊慣れしてしまっている人間であります。
タカ君が無事に帰って来て良かった、と思う話でした。