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短編2
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キツネの火とタヌキの火

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伯父の話です。

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私の家は山奥の集落にあるもので、夜遅く帰るとなると、

真っ暗な森の中、車の明かりで照らしながら、山道をうねうねと登っていくしかありません。

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そんなある日、朝方山道を下って行くと、昨夜車にはねられたのか、道の傍らに何かの獣の死体が転がっていました。

かわいそうだな、と思いながらも良くあることですので特に気にもせず、そのまま通り過ぎました。

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それから集落で奇妙な噂が聞かれました。

山道にキツネの火が出るというものです。

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キツネの火は丁度自動車のテールランプのように見え、

おや先に車がいるなとついていくと、急カーブで加速し山影に隠れてしまう。

そしてこちらがカーブを曲がるともう先の道路には何の光も見えなくなる、というものでした。

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ただそれだけであって害も何もないのですが、さすがに気味が悪いという人があるもので、

お寺に頼んで供養をお願いしたら出なくなったということです。

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伯父はこういった話に余り興味がないものでしたが、祖父がこんな話を付け加えてくれました。

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昭和の始め頃だと思います。

山奥の集落にもバス道が通り、やっと車が通るようになりました。

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1日何本も無いバスですが、遅い便だとやはり暗い山道を走ることもあったらしい。

今と違って街灯もカーブミラーもありませんから、ひたすら暗い道を下っていくしかありません。

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するとバスの前にぽん、と明かりがともる。

や、誰か道を歩っているものかと慌てて急ブレーキをかけたものの間に合わず、どん、とそれに当たってしまったらしい。

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運転手と車掌さんが慌てて確認に行くと、タヌキがひかれて死んでいたとのことです。

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「ここいらの人間でもバスなんて初めて見たんだもの、タヌキだってバスなんて知るはずも無かったろう。

いつもの調子で提灯もどきの明かりをつけて化かしてやろうと思ったんだろうが、相手は鉄の車だ、化かすも何もなくひかれちまったんだろうなあ」

そう言って、どうせ化けるなら死んだ後にしたほうが、ひかれる体も無くて良かったろうに、と気の毒そうに話を終えました。

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