これは、俺が高校生の頃、肝試しに行った時の話。
俺自身は霊感なんて無いし、その日起こった事は、結局何のせいだったのか未だにわかっていない。
だから、この話は不完全燃焼なまま終わってしまう。
それでもいいなら読み進めて欲しい。
最初に肝試し、と言ったが、これは俺の友人とかと行った訳では無い。
俺は、その頃は結構なオカルト好きで、その手の本雑誌もよく読んでたし、オカルト好きで集まってチャットしたりするサイトにも登録していた。
そういうサイトでよく話していれば、だんだん親しくなってくる人も出てくる。
そうして出来た、親しく話す人(仮にAとする)に、あるグループを紹介された。
そこはAさん+4人の男女で作られたグループで、Aさんはよくそこで話していて、もうそのグループに俺をいれるという話はグループのメンバーにしていたらしく、俺さえ良ければいつでも入っていいらしい。
怖い話をするにしても、オカルト語るにしても、人数が多いほうが楽しいと思ったので、俺はそのグループに入った。
結構すぐにグループのメンバーとは親しくなり、次第に「皆と会いたい」と考えるようになってきた。
それは皆も同じだったようで、ある日、俺が「肝試しに行こう」と提案すると、すぐに皆から「行く」との返信があり、どこに行き、いつやるかの話になった。
結局みんなのおおまかな住所(なになに県に住んでるとか)を教えあって、全員がそれほど時間をかけずに行ける心霊スポットを探して、後はそれぞれの日程を確認して日取りが決まった。
男3人、女3人のグループだったので、少し、いや大きい期待を抱いていたのも確かだ。
当日、心霊スポットのある市の一番デカい駅の改札に集合という事になった。
集合時間に遅刻することもなく、全員集まった。
多少緊張はしていたものの、会ってからすぐに普通に話せるようになった。
お互いにあまり生活に関わることは聞きすぎないように、と事前に決めていたので気楽に行けた。
談笑するのも程々に、件の心霊スポットへ向かう。
せっかく肝試しするのであれば丑三つ時を狙って行きたい、という話もでたが時間的に問題があるので、午後8時ごろに肝試し開始と決めていた。
少し早くついたが問題ない。
せっかく男女が同じ数なので、くじ引きでペアを作ったらどうか、と提案したらすぐに受け入れてもらえた。
早速くじ引きをし、ペアが決まる。
初めから目をつけていた娘とペアに慣れたことで浮かれていたのは秘密だ。
俺達のペアは2番目に行く事となった。
自分たちがいった心霊スポットは、交通事故だか落盤事故があったとか無かったとか言うトンネル。
そこら辺が曖昧だが、この真っ暗闇なトンネルを抜けるのはそれだけでも十分怖いだろう。
トンネルはそんなに長くもないので、トンネルを抜けて2人で写真を撮って戻って来る、という事になった。
早速1組目。
5分後、ぶっちゃけ、特に何もなく戻ってきた。
写真の確認をし、早歩きで戻ってきたことをからかいながら2組目、俺達の番が来た。
内心ビビりまくっていたが、男としての威厳を見せるべく、平静を装って進んで行った。
時折、なにか生き物が通ったのか、物音がしたり、落ちている空き缶を蹴って、その音が響いたりして、その度ペアの女の子が抱きついてきたお陰でなんか頭がフィーバー状態。
後半はずっと腕に抱きついてきてくれたので、最高の気分で凱旋。
多少、その事を囃されたりもしたが、3組目もすぐに出発。
・・・・
・・・・
・・・遅い
既に30分は経っている。
いったい何をしているんだ?
ちょっとだけ、様子を見に行こうか、なんて話題が出てきた頃、やっと帰ってきた。
そうして、しばらく自分たちの肝試しがどうだったかについて、話す。
そのうち、女の子の1人が気づいた。
「なんで5人しかいないの?」
そういえば、そうだ。
なぜ気が付かなかったのか、5人しかいない。
辺りを見回すが、どこにもいない。
飲み物を買いにいくにも、この辺りは自販機すら無いし、そもそもトイレに行くにしても、何かしら声をかけてから行くものではないのか。
3組目の女の子に聞くと、「皆が見えるところまでは一緒にいた・・・はず」
と何とも曖昧。
お〜い、と呼びかけてみる。
返事がない。
なにか、物でも落としたのかな?
そう考えて、皆でトンネルの中へ入る。
携帯のバックライトを頼りに探すが、見つからない。
「どこにいるんだよぉ」
声をかけるが、先程のように、返事がかえってこない。
周りをライトで照らしながら進むうちに、トンネルを抜けてしまった。
その先は、樹海になっている上に錆びた鉄網と扉で通れなくなっている。
どこに行ったのか。
トンネルの入口に戻ったが、結局解決策は浮かばない。
被害届をだそうにも、それぞれネットであった人物に本名を言うのは抵抗があったようで、ネット上のハンドルネームで呼びあっていた。
メールアドレスも、特に親しい人が出来れば交換してもいいかな、ぐらいにおもっていたらしく、連絡手段もない。
どうすればいいか決めかねているうちに、突然「ひっ」と、3組目にでた女の子が、悲鳴をあげた。
どうしたんだ、いったい。
そう声をかけると、女の子は「○○(ハンドルネーム)さんが、誰か調べるのに、肝試しのゴール地点で撮った写真があるといいと思ったんだけど、これ・・・」
その写真は、とても気持ちの悪いものであった。
女の子のほうは普通だ。しかし、男の方が問題だった。
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そいつは、首だけが180度回転していた。
結局、そのまま自分たちは解散した。
警察に、名前も連絡先もどこに住んでるかもわからない、顔じゃしもない人が失踪しました、と届けでたところで、取り扱ってもらえないだろう。
後できいたところ、3組目の女の子は、5・6分でトンネルの入口には着いていたという。
彼女と俺達との時間の食い違いはなんなのか。
結局、あいつはなんでいなくなったのか、わからないままであった。
作者チェル公
まめのすけさんが投稿された「誰かさんが消えた。【姉さんシリーズ】」のタイトルを見て思いついた話です。
やりたい展開のために、かなり無理のある話になったかも知れません。
幽霊?そんなのいる訳ないじゃないですか。
いや、姉さんシリーズに言った訳では無いですよ。