その日、私はビデオを見ていた。
稲○淳二さんの、怖い話のビデオだ。
よりにもよって、深夜2時。
夏だったが、クーラーを持っていなかったので、ドアは開けっ放しにしていた。
すると突然、ザザザッと、ビデオの映像が乱れ始めた。
あ、いる。
玄関に、なにかがいる。
なぜだかそう感じたし、絶対にそうだ。
私は玄関の近くに金魚をいれた水槽を置いてあるが、その金魚は近くに人がいないと餌をねだらない。
そして、私は玄関から離れた場所でビデオ見てるにもかかわらず、金魚がパシャパシャと跳ねて、餌をねだっているのだ。
振り向けない。だって怖いし。
どうしようか。どうしようか。
と、そう思っていると、無意識のうちに、私の手はビデオデッキからビデオテープを取り出していた。
その途端、玄関にずっとあった気配が、スウッと消えた。
じりりりりりりリン
と、電話が鳴る。
死ぬほどビビったあと、電話を取ると、その向こうにいる人物はこう告げた。
「どうして電話とったのに黙ってたの?」
後で電話の主に話を聞いてみると、1度電話をかけたところ、「がちゃり」と音がして、確かに電話をとった音が聞こえたのだが、サーーッというノイズが聞こえるばかりで、何を話しかけても答えない。
いったん電話を切り、もう一度かけ直すと、今度は私がでた、ということらしい。
電話などかかってきた覚えはないし、当然電話をとってもいない。
だから今でも、私は真夜中の訪問者が電話をとったのだろうと思っている。
作者チェル公
漫画家の冨樫義博さんが幽遊白書の話の間に載せていた話を文章化してみました。