昔々、あるところに、おじいさんとおばあさん・・・・・・とは言っても、現代で言うと初老くらいの老夫婦が住んでおりました。
なお、初老とは40歳からなので、この時代の平均寿命を考えると、この夫婦も立派なじいさんばあさんなのでした。若干口が悪いのは、おそらく気のせいです。
ある日、おじいさんは山へ林業に、おばあさんは、おじいさんを見送ると、洗濯板とたらいを器用に頭に乗せて、一週間分溜まった洗濯物を両手いっぱいに抱えながら、川へと洗濯へ行きました。
この頃、洗濯機というのは大変高価なもので、ばあさんをはじめ、多くの主婦達は川で洗濯をしており、垂れ流された洗剤で、後に水質汚染が問題となるのです。
まあ、そんな話は関係ないので置いておくとして、川で洗濯していたおばあさんは、いつもと違う、何か不気味な気配を感じ取り、手は洗濯物をゴシゴシしたまま、その気配のした川上へと導かれるように視線を向けると・・・・・・。
「ばあさ~ん、助けてくれーーーーーー!」
なんと、川上からじいさんが大きな桃に圧されて、為す術もなく、ばあさんに必死の形相で助けを求めているではありませんか。
「じいさん!大変じゃ・・・すぐ助けてやっからじっとしとれ!」
ばあさんは一瞬、状況が飲み込めずにいたものの、なんとかじいさんを助けるべく、桃としてはありえなでかさの桃形というより尻に近い何かに、突進していきます。
「主婦なめんじゃねぇぞ!」
そう叫んで、その桃を食い止めたばあさんでしたが、桃を食い止めるに夢中になる余り、じいさんをその手から離してしまいます。
この川は、この辺から激流になっているので、じいさんはあれよあれよという間に川下の彼方へと消えていってしまいました。
「じいさん・・・」
激流の波間に消えていくじいさんを、ただ呆然と眺めていたばあさんでしたが、一先ず目の前の大きな桃を、洗濯物と一緒に持ち帰りました。
帰ってから洗濯物をたたみ終えると、ばあさんは持ち帰った桃を切ってみる事にしました。
ですが、桃としてはありえないでかさの代物であるため、なかなか上手く包丁が入りません。
何回も格闘している内に、苛立ち始めたばあさんは、全体重をかけて、目の前の桃と思わしき物体に、どりゃあああああ!と気合いを入れて、包丁を振り下ろします。
すると・・・・・・。
「・・・ッぶねー!ばあさん、てめえ包丁は優しく扱えって母親に習わなかったか・・・」
桃と思わしき物体の中から出てきたのは・・・・・・。
「やっぱり桃じゃなかったな」
「そっち?!」
もうめんどくさいので、桃ということにしておいた物体の中から出てきた人間が、ばあさんのブレなさに驚嘆させられています。
「ちゅーか、じいさんを殺したんは貴様かぁぁぁぁぁ!」
ばあさんは、突如叫んで、包丁を振り回しているが、桃太郎(仮)が必死に説得し、落ち着かせる。
「いや、まあ結果的に殺した・・・・・・ようなものか・・・。でもあれは、じいさんがこの桃型船を持ち上げようとして足を滑らせて・・・・・・・。」
すっかり青ざめている桃太郎(仮)が、説明をしたが、ばあさんは主に前半しか聞いていません。
「やっぱりおめぇが殺したんかぁぁぁぁ!」
そこからのばあさんは、もう誰にも止められず、近隣の住民全てを冥土に送った後、自らも川に身投げして、命を絶った。
それ以降、この集落では夜な夜な助けて・・・・・・助けて・・・・・・と叫ぶ老夫婦の声と、めそめそ泣いている桃っぽい霊が目撃されるという・・・・・・。
作者ゆっぴー
若干ネタに走ったせいで肝心の怖さが・・・・・・。
それはそうとお久しぶりです。今ね、ちょっと怖い話書き溜めてます。某タダ読み縦読みのところに投稿してたらいつのまにかベストチャレンジになってたので、考えるのも大変です。