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これは、一軒家に移る前。
かれこれ5年ほど前の話、旦那と別居中のお話しです。
ある日、朝上の子を幼稚園に送り出した後ゴミを捨てに行った時の事。
そこには、捨てられてた大きなテディベアが座ってた。
大きな大きなテディベア。
昔友人にあげてしまったモノと似たような私よりかも大きなテディベアだった。
「わあー、可愛い。」
少し汚れてはいたが洗えばまだ使える、何よりかも下の娘にいい手土産になるなとその時は思ってしまった。
そんなテディベアを抱き抱えて私は家へと戻った。
「ママ、見て!拾って来ちゃった!!」
当時、別居中の私は母と暮らしておりソレを母に見せたのだ。
その瞬間、母は余り良い顔をしなかった。
「汚いし、返して来なさいよ。何かあったらどうするの?特に人形なんて…。」
それは、忠告にも取れたが私は気にせずに洗うし大丈夫だよー。」
と、そんな風に気にもせずに良いものを拾った子供のような感覚になっていた。
さて、その夜。
そんなテディをバルコニーに置いて、私はやるべく事を全て終わらしベットへと潜った。
その時も、良いものを拾った。
嬉しいなと言う感情の中まどろみに落ちて行った。
そして、真夜中ふと目が覚めた。
窓の外がさわがしいのだ。
何事だと思い、窓の外に目をやると黒い影が蠢いてる。
ぼーっとしてた焦点が合った時、ソレの正体が分かり始めた。
何本もの腕が生え、頭を振り乱して左右に揺れてる髪がボサボサな何かだった。
ソレはあからさまにこの世のモノではないと象徴するかのように窓の外で中に入ろうと必死だった。
「ひあっ!?」
叫び声にならない声を出して、私は意識が遠のいた。
ダメだ、アレに入られたらダメだ!そう思いながら。
その後、気づいたら眠っていたらしい。
夢の中にいたのだ、相変わらず外ではソレが蠢いてるのが解る。
必死だった、私は仏壇の前に行き題目を唱えだした。
ヤバイ、夢の中でもヤバイ。
夢の中でもソレに入られたらヤバイ。
それしか頭になかった。
そして、どの位題目を唱えてたかはわからない。
いきなり玄関のドアが開かれて、何人もの従者を引き連れた綺麗な黒髪の白い着物を着た女の人が入ってきた。
彼女は光り輝いていた、そんな彼女を見て私はふと気が抜けた。
そして、そんな私に彼女は言った。
「大丈夫、大丈夫よ…私がついてます。 貴女はそのまま題目を唱えていなさい。」
その一言で、私は気が抜けて涙を流してそれでも言われた通りに題目を唱え続けた。
すると、外にいたソレが一段と叫び声を上げた。
あげると同時にさっきまで窓の外は暗かったのに、明るくなっていた。
ほっと気が抜ければ、意識が戻ってく。
戻ってく中声が聞こえた。
「もう、大丈夫…」
それは、すぐに他のノイズにかき消された。
目覚ましの音だった。
起きてすぐに分かった、夢だけど夢ではない事を。
バルコニーに置いてあったテディが、昨日はそんなに汚れてはなかったのにボロボロに見えたのだ。
「ママが言ってた事聞いとけば、よかった。」
そう思って軽くなった心と共に私はそのテディを元あったゴミ捨て場へと戻しに行った。
そして、思った。
子供達に矛先が向かなくて良かったと。
ただ、一つ心残りが出来た。
それは、捨てに行って2時間足らずで再度ゴミ捨てに行った時にはもう既に他の誰かが持ち去っていた事だった。
それを含めて昨晩の事を母に伝えれば。
「だから言ったのに、その方に感謝するのね。」と言われてしまったのは言うまでもない。
作者リエ
数ある実話の一部です。