このお話は先月、見事に二度目の月間アワード賞を受賞された、よもつひらさか先生に捧げる「色情をもたない田分つくると、彼の除霊の年」のオマージュ作品です。
興味のない方はスルーして下さい。
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田分つくるは母親に連れられて、とある神社を訪れていた。
つくるはもともと色情というか女性に対する性欲がほとんどなかった。
そのため両親の勧めでイタコによる「除霊」を受けたのだが、それがきっかけでつくるは今までとは正反対の女たらしとなった。
いたるところで女性と関係をもち、無責任に妊娠させて両親にも大いに迷惑をかけた。
母親は変わってしまった息子を「正常に」戻すため、人づてに聞いた霊視のできるというある巫女さんのところに一緒に行くようつくるにお願いした。
つくるにその気は全くなかったが、美人の巫女さんという一言を聞いて俄然「やる気」が出てきたのだった。
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通された神社の応接間でつくるはくだんの巫女さんと対面した。
その巫女は真央さんという名前だった。
美人という評判通り、長い黒髪の清楚な女性だった。
彼女はつくるをじっと見つめて霊視を行った後、霊視の結果を説明し始めた。
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「あなたはとても珍しい気をまとっていますね」
「珍しい気?」
「特に美形というわけでもないのに、関係した女性達から好意を寄せられるオーラをもっています」
「どういうことですか、それは?」
「しいてわかりやすく説明するなら、恋愛物語の主人公のオーラというようなものでしょうか」
そう言われると、性欲がなかった時にさかのぼって考えても心当たりがあった。
つくるの方から積極的にアプローチすることがなかったので、ハーレムのような状況にはならなかったが、今思うと一押しで落とせそうな状況が何度もあったように思う。
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「しかし、このオーラをもつ人間は同時に性欲的には淡白な場合がほとんどなんです、
それで状況的にはうまくバランスが取れているんです」
「それならなぜこの子は女性にだらしなくなったんですか?」
付き添いしていた母親がたまらず問いかける。
「今、霊視した結果、つくるさんには性強壮の秘術がかけられています、
以前別れた彼女から不能の呪いをかけられた男性は見たことがありますが、つくるさんの場合はその逆ですね」
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その言葉にもつくるは心当たりがあった。
最初につくるを視たイタコ、あの女がいい加減にかけた術がどうもその性強壮の術だろう。
つまり、今のつくるは精力旺盛でヒロインを手当たり次第誘う主人公ということだ。
状況は理解したつくるだが、そんなことは別にどうでもよかった。
目的は最初から目の前の美人の巫女さんを孕ませることだけだった。
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「真央さん、でしたっけ、歳は25歳くらいに見えるけど、巫女さんをするのもそろそろ無理がある年齢だよね
神社の娘として跡取りを作らないといけないと思うけど、あてはないんでしょ、真央さんからはおぼこな匂いがプンプンするもの」
かなりの暴言だったが、つくるは構わず続ける。
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「分かるよ、相手の本質が視えすぎたから、いい関係になりそうだった男が離れて行ったんだろ
でも、俺なら大丈夫、そんなの気にしないから、優しくリードして神社の跡取りをすぐにでも孕ませてあげるよ」
つくるの言葉を黙って聞いていた真央さんが口を開く。
「さすが・・・たらしオーラをもつだけありますね、客観的に聞けばとんでもない放言ですが、私の心に突き刺さるように響いてきましたよ」
真央さんの言葉を聞いてつくるは満足げに笑みを浮かべる。
ふふ、これでこの巫女さんも喰えるな、そう思った次の瞬間思いがけない説示が発せられた。
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「しかし、この性強壮の術は生気が無尽蔵に放出される外法です、
身体への負担が大きすぎるためこのままにしておけば早晩心臓発作などの臓器不全で突然死してしまうでしょうね」
衝撃の事実につくるはうろたえた。
彼女の言う通り、確かに最近身体がどこか疲れ気味で激しい動悸に襲われることもあった。
このままでは自分は死んでしまう、冗談ではなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、困るよ、俺まだ死にたくなんかないよ!」
「・・・でしたら、今ここで術を解いて元の状態に戻ることですね」
真央さんの言葉につくるはがっくりとうなだれた。
「あなたは野放図に女性を孕ませるという人の道を踏み外す行為をしてきました、
これからは反省して生まれた子供達とその母親に責任を果たしていってください」
真央さんの諫めるような強い言葉にようやくつくるは自分のしてきたことを後悔する念が湧いてきた。
「わかりました、これからは無責任に産ませてきた子供のために生きていきます」
つくるの言葉を聞いて、真央さんは微笑んだ。
「そして、すべての子供が成人して責任を終えたら、そのときはあなたの娘を口説きに行くよ」
真央さんの表情は笑顔のままだったが、つくるの脳を揺さぶる張り手が左ほおを貫通していた。
途切れていく意識をつくるはどこか他人事のようにゆっくり感じていた。
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次に目が覚めた時、つくるの性強壮の術は解呪されていた。
正気に戻ったつくるは床に額を擦り付けて真央さんに土下座をしたのだった。
作者ラグト
よもつ先生!受賞おめでとうございます!
ロビン様の作品に促されて、こんな作品ですが書かせていただきました。
色情をもたない田分つくると、彼の除霊の年
→http://kowabana.jp/stories/25860