あれは、私が10代の頃の話です。
当時私達はいつも決まった友達とA子の家で遊んでいたのですが、たまたまその友人が家族旅行に行ってしまったので、B子の家に集まる事にしました。
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B子の家は新しく綺麗な家なのですが、なんというか生活感がなく、ドラマのセットのようなモデルハウスのような印象だったのを覚えています。
B子以外の家族はその日居らず、若かった私達は大騒ぎして楽しんでいました。
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初めて違和感を感じたのは一階の冷蔵庫からジュースを持ってきてと頼まれた時でした。誰もいない家のはずなのに、いくつもの吐息のようなものが聞こえた様な気がしたのです。
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少し怖くなった私は2階へ走っていき、また皆の輪に戻り、怖かった事など徐々に忘れていきました。
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ふと時計を見るともう21時を回っていました。
泊まっていく流れになってはいたのですが、流石に親に連絡しないとと思い。皆思い出したかのように携帯をかけ始めました。
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私はそこでまた違和感を感じました。
私の母がどうもB子の家に泊まらせたくない様な言い回しをするのです。いつもA子の家に泊まる時にB子だって一緒にいるのに。
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母の心配を鬱陶しいと感じ、半ば強引に電話を切りました。コップに口をつけながら皆の顔をふと見ると、私と同じように中々許可をもらえないようでした。私と同じ様に強引に電話を切った他の友人が、親ってうるさいよね〜と言った時。
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本当に少しだけB子がその子を睨んだような気がしました。
その後私達は他愛もない会話を続け、一人づつお風呂を借り。私の番が来ました。B子の家のお風呂はとても綺麗で大きく、1人で入るには少し寂しいほどでした。2人くらい余裕で入れるなぁなどと考えながら頭を洗っていると
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じゃぽんと誰かが浴槽から上がって行く音が聞こえました。私は驚いてすぐに振り返りましたが、もちろん誰もいません。しかし冷蔵庫の前で感じた様な吐息と、何より誰かがとても近くにいるような気がして、急いで頭を流し湯船につかりながらお風呂の磨りガラスのドアを見つめていました。
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お風呂から上がる時リビングの前を通り2階へいくのですが、そこにB子がいました。次はお風呂B子の番かぁと思いつつ、お先に〜と2階へ上がりました
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B子の部屋では私が言い始めるより先に、この家おかしいよ。とか黒い影見たんだけど〜など、大変な騒ぎでした。私もお風呂での事を話し、会話に混ざりました。
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すると友人の1人が、この家自体ちょっと変じゃない?と言い出しました。どういう事か尋ねると、その友人はお風呂に行く途中、半分ドアの開いた部屋が目に入り、好奇心から中を覗いたらしいのです。
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その部屋には一切の物がなく、まるで引っ越した後のように片付いていたそうです。
いくらなんでも家族がみんなで住んでいる家で、1室丸々使わない部屋があるでしょうか?
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………………家族?
そういえばB子の家族はなぜ家を空けているのだろう。あれ、聞いた気がする。
確かおばあちゃんの家に行くとか……b子を置いて?
そんな事を考えていた時に、そいつは目の前にいました。
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真っ黒に焦げた顔。見開きながら左右に私たちを舐め回す目。そいつは外から窓ガラスにへばりつき、んーーー!と口を硬く結びながら声を出し、こちらを覗いていました。
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私達は悲鳴を上げ部屋を飛び出しました。階段てB子と会い、無理矢理一階まで連れて走りました。
みんな泣きながら、なにあれ…なにあれ…と混乱が収まらないようでした
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…ごめんね。B子が言いました。
もっと早く伝えなきゃいけなかったよね。
あたしの家族みんなこの間の事故で亡くなっちゃったんだ。だからこの家の中にはまだみんなが生活してるんだと思う。ビックリしたかもしれないけど悪さはしないから、どうか許して。
まだこの家から出られないみたいで
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私達はB子を責めることが出来ませんでした。すっかり片付いた家で寂しい想いをしながら頑張ってたんだなぁって思うと、涙が止まりませんでした。
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朝がきました。私達は玄関まで見送ってもらい、それぞれ靴を履き玄関を開けた時、私はすべて思い出しました。涙が止まりませんでした
「さようなら。B子」
もう2度と会えない私の大切な友達
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自宅に着き、なんとなく物思いにふけっていると、電話がなりました。出てみると、昨日一緒に泊まりに行った友人の1人でした。その友人は泣きそうな声で私に言いました
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ねぇ…B子達って家から出れないって言ってたよね?
じゃああいつは?家の外から覗いてたあいつは誰?
今日の夜は…大丈夫だよね?
作者ゆな