私は、怖い話が大好きです。
見るのも、自分で話を想像して書くのも大好きです。
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毎日ホラー小説や漫画を読みあさり、時には投稿系のホラーDVD等を見て、またある時には自分でこんなシチュエーションだったら怖いなぁ、なんて考えながらお話を考えたり、とにかく怖いものに触れた時のあのゾクゾクとする感じを味わうのが私の趣味です。
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そのうち、次第に私の話を色んな人に聞いてほしい見てほしいと思うようになり、私の願望を満たしてくれる場所がないか携帯電話を使ってインターネットで検索したところ、あるサイトを見つけました。
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それは、全国の人から寄せられた怖い話を掲載しているサイトで、実際に投稿する事も可能でした。
これだ。ここにしよう。
吸い寄せられるようにそのサイトに興味を持った私は、早速利用登録をすませました。
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登録は全く煩わしくなく、メールアドレスとパスワードそしてプロフィールを簡単に入力するだけですぐに終わりました。
登録後、私はワクワクしながら話を書いてすぐに投稿し、逐一画面を更新しながら反応を待ちました。
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画面を更新する度に閲覧者数が増えていき、数時間後、1通のメールが届きました。
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××様
当サイトをご利用頂き誠にありがとうございます。
あなたの投稿に1ポイント投票されました。
現在の投票数は【こちら】からご確認ください。
編集部
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投票やポイント等のシステムを全く理解しないまま登録した私は、メールが届いた時は驚きました。自分が投稿した話をこんなに見てもらえて、投票までしてもらえてとても嬉しかったのを覚えています。
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私の作品は複数の人に受け入れてもらうことができ、一週間後には20ポイントまで投票数がふくれあがりました。
その後もメールは届き続け、どんどん投票数は伸びていきました。
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次の日、携帯を確認すると異常な数のメールが届いていました。差出人は全てあのサイトの編集部。内容は1ポイント投票されたというものが大量に届いていました。
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すぐにサイトを見てみると、私が書いた怖い話の投票数が120ポイント以上にはねあがっていました。
こんなにも自分が書いた話を怖いと思ってもらえるなんて……
自分の才能に驚きながら、もう1度投票数を見ると、おかしな事に気づきました。
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閲覧者数98
コメント0
投票126
……あれ?閲覧者の数って投票の数より少ないって事あるのかな?
おかしいとは思いながらも、人が作ったサイトだし、ちょっと表記が狂う事くらいあるだろう。
私はあまり深くは考えず、次のお話作りにとりかかりました。
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次の日、新しい話を書きかけのまま寝てしまった私は、携帯の画面を見て思わず、うわ……と声が出てしまいました。また異常な数のメールがサイトの事務局から届いていたのです。1つ1つ内容を確認するのも億劫なので、メールのタイトルだけサラサラ確認していると、コメントがつきました、というメールが届いていました。
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初めてのコメントだ!
私はすぐにサイトを確認しました。コメントには、私が書いた怖い話について、
とても面白かったですが、最後の意味がよくわかりません。雨とはどんな関係が?
という感想が書かれていましたが、どうも変なんです。
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私が書いた怖い話は、自分が過去に体験した心霊写真の話に少し尾ひれを付けて書いたもので、雨という部分には心当たりがないのです。
私は自分が書いた怖い話を確認してみる事にしました。
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やはり私が書いた文章、特に変わった部分は無いように見えましたが、最後に見覚えのない文が追加されていました。
心霊現象が無くなり、安堵して眠ったところで終わっているはずの私の話に続きが加わっていました。
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その文章は非常に短いもので、
『ふりしきるあめのなかでわたしは』という文章でした。
私は全く書いた覚えがありません。ふと閲覧者数も見てみると、
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閲覧者数152
コメント1
投票560
異常でした。
閲覧者数に対して投票があまりにも多すぎる。
投票数が多いのは嬉しい事ですが、見知らぬ追加文もあいまってさすがに少し気味が悪くなり、事務局からのメールを拒否して、しばらくサイトを見るのを控えました。
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数日後、久しぶりにあのサイトにアクセスしてみると、自分の投稿した話にコメントが数件ついており、その内容を見て体から血の気がサーっと引いていくのがわかりました。
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前半と後半の話が全く繋がっていないようにみえますが何か意図が?
後半気味が悪いです。
お話には続きがあるのでしょうか?気になります。
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恐る恐る自分が書いた話を確認してみると、最後に加えられていた文にさらに文章が加わっていました。
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ふりしきるあめのなかでわたしは
あなたをまちます
くるひもくるひもあなたをまちます
なぜあなたはこないのでしょう
あなたもわたしをうらぎるのでしょう
ゆるさないゆるさない
ふりしきるあめのなかでわたしはおまえをさがします
くるひもくるひもおまえをさがす
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書いてない、こんなの書いてない、私は恐ろしくなり事務局に連絡しました。投票数がおかしい事と、自分以外が投稿したものに手を加えることは可能なのかとメールを送り、ブロックしていた事務局のアドレスを解除して返事を待ちました。
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ブロックを解除した途端、すぐに大量の投票メールが届き、私はそのメールを破棄する作業に追われながら、事務局からの返事を待ちました。
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次の日、事務局から返事が来ました。他者が話を編集する事はできない、不正なアクセスもなく、私の携帯からのログインしか確認できないため乗っ取りも可能性は低い、システムも正常との事。
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私のアカウントで他の端末からはログインしていないとすると、追加された文章は全部私の携帯から……?
私はもう1度自分が投稿した話を確認しました。
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もう投票は1000を超えていましたが、やはり閲覧者数はそれ以下。誰かが投票している。
見ているけど見ていない何かが投票し続けている。
内容にもさらに変化がありました。
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ふりしきるあめのなかでわたしは
あなたをまちます
くるひもくるひもあなたをまちます
なぜあなたはこないのでしょう
あなたもわたしをうらぎるのでしょう
ゆるさないゆるさない
ふりしきるあめのなかでわたしはおまえをさがします
くるひもくるひもおまえをさがす
おまえをかならずさがします
み
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「み」そこで文章は終わっていました。
その時、なぜだかはわかりませんが、書き上げさせてはいけない。絶対最後まで書かせてはいけないと頭の中に警鐘が鳴り響きました。
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私は、名残惜しい気持ちはありましたが自分が投稿した話を削除し、サイトを退会して、丁度いい機会なのでスマートフォンに機種変更しました。
それ以降、閲覧だけは続けていましたが特に何も起きず事なきをえています。
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あのまま追加文が完成していたらどうなっていたのか、想像するのも恐ろしいです。
遠い昔の話ですが、数少ない私の不思議な体験でした。
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ふりしきるあめのなかでわたしは
あなたをまちます
くるひもくるひもあなたをまちます
作者杏奈-3