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【十物語】第九夜 トロールの顛末

中編5
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【十物語】第九夜 トロールの顛末

トロールはインターネットにおける俗に言う『荒らし』のこと。

語源は「トローリング(釣り)」から来ている。

トロールの特徴として、カナダのマニトバ大学が研究して出した結果、以下の特徴があると判明。

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①ナルシスト(自分が大好き!なので基本は自己中で排他的)

②サディズム(他者を貶めたり傷つけることに快感を覚える)

③サイコパス

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現実世界では大人しい、または他者に対して意見を言えずに内に溜めてしまう内弁慶ならぬネット弁慶が、匿名性のあるインターネットで暴れるのがトロールの本性。

現実世界でのストレスを現実世界で晴らすことができないので、顔も素性も隠せるインターネットでストレス発散するのである。

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対応方法としては徹底的な無視。

また、最近は親切丁寧に話を聞いたり肯定するのもトロールの気を削ぐという意味で有効な模様。

トロールの実態を数値化すると、実質は5.6%ほどで、街ですれ違った100人中5、6人がトロールであると考えると個々の感覚にもよるかもしれないが、自分的には決して少なくない数字だとは思う。

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…と、まぁ、前置きはこのくらいにして、世の中「人を呪わば穴二つ」とか「因果応報」という言葉があるように、やりたい放題やっちまってるトロールにも恐ろしい天罰が下ることはある、という僕の友人が実体験した話をしたいと思います。

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パケ放題とかいうのが登場して携帯電話でインターネットを見放題できるようになった頃だから、もう十数年は前になるかな。

僕の友人はスレッド式掲示板を運営していて、主に趣味を語り合う場を提供していた。

管理人である友人も、その掲示板で大好きな洋楽についてユーザー達と和気藹々、盛り上がっていたようだった。

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そんな時、洋楽仲間が集まるそのスレッドに「つまらない話ばっか」とか「洋楽なんかダサいし、見てると昔のバンドばっかで意味不明」等の心無い書き込みがされるようになったそうだ。

結構、そのスレッドに集まっていた仲間は多くて、すぐそのトロールを叩いた。

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でも、叩けば叩くほど反応してくるのがトロール。

そのうち自分でスレッドを立てて、掲示板に対する暴言や意味不明な愚痴なんかを書き始めた。

それに対して、これまた反撃する人間が出てくるのも事実。

友人がスレッドを削除しても、何度も立てられたとのこと。

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しかし、そんな時、奇妙なことが起こり始めた。

今までは罵詈雑言を書き立てていたトロールが、「人のメルアドどっから探ったんだよ!?やめろよ、気味悪い!」とか「メルアド変えてもすぐ探り当てられて、殺すとか呪うとかマジでキモいんですけど!」とか、意味の分からない書き込みを始めたらしい。

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IPアドレスから本人のメルアドなんて探れるはずもなく、友人はどうしてこんな書き込みをするのか不思議だったそうだ。

ある時、大学時代に同じサークルだった後輩が久しぶりに尋ねてきて、夜はプチ飲み会になった。

男二人の飲み会とは、ちと寂しいかもしれないが。

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したたかに飲めば生理現象も近くなるのは当然のことで、友人はトイレに立った。

スッキリしてトイレから出てくると、後輩は携帯でインターネットをしていたようで、何となしに後ろから画面を覗き込むと、友人は驚いた。

後輩が、友人が管理人をしている掲示板で書き込みをしていたからだった。

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トロールの正体は後輩。

後輩も掲示板の管理人が友人だと知って、驚いたらしい。

どういうことか問いただそうとしたが、後輩は友人を振り払って逃げてしまったそうだ。

その翌日、掲示板を覗いてみるとスレッドが立っていた。

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「なんなんだよ!先輩の仕業なのか!?殺すとか、マジやめろよ!」「はぁ!?なんだよ、どうせお前は死ぬから、って!キチガイなんじゃねーの!?」という書き込みが。

後輩がトロールだったことはショックだったが、書き込みを見て心配になった友人が後輩に連絡を取ろうとするも、なかなか取れないでいた。

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しかし、スレッドは毎日のように立って意味不明な書き込みがある。

業を煮やした友人は、後輩の家を訪ねた。

インターホンに反応はなく、試しにドアノブを回してみると玄関のドアはあっさり開いた。

家の中に灯りは点いておらず、玄関のドアを閉めると薄暗い。

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手探りでスイッチを探して灯りを点けると、後輩は奥のリビングでタオルケットを頭から被って携帯電話を握りしめ、ガタガタ震えながらブツブツ何かを呟いていたそうだ。

友人が近付いても振り返ることはなく、後輩に耳を近づけてみると、どうやら「メールが途絶えない…メールが…」と呟きながら、震えて泣いていたらしい。

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肩を揺すっても、何かに取り憑かれたかのように泣きながら、しきりに「メールが…」と呟くので、友人は後輩から握りしめている携帯電話を取り上げて見てみると、画面が真っ赤に染まり、そんな中、本当に途絶えることなく次々とメールが着信していた。

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全てのメールの件名は「死ね」。

本文は無し。

友人は送信主のメルアドをメモして控えると、救急車を呼んで後輩を病院へと搬送した。

後輩は、そのまま精神に異常をきたして廃人のようになり、精神病棟へ入院。

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友人は自宅へ帰ってメモして控えたメルアドへメールを送ってみたが、エラーで戻ってきてしまった。

何度やってもエラー。

掲示板を覗くと、不思議なことに後輩が乱立させたスレッドは綺麗になくなっていたそうだ。

友人が削除したわけでもないのに。

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ただ、一つだけ見慣れぬスレッドが立っていた。

スレッド名は「排除完了」。

IPアドレスは何故か文字化けしていて、気味が悪くなった友人はすぐに掲示板を閉鎖したとのこと。

その後、例の後輩は病室でシーツを使っての首吊り自殺で亡くなったそうである。

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文字通り、この世から「排除」されてしまったわけだ。

誰がどうやって後輩を追い詰めていったのか、そのカラクリは未だに分からないが、しっぺ返しが思いのほか大きかった、ということだけは言えるんじゃないかな。

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この世の中には不思議なことがたくさんあるけれど、インターネットにも何かの歪みがあって、それが牙を剥くこともあると思うと、おちおちネットサーフィンもできやしないよね。

…とはいえ、誰かを言葉で傷付けたりするモラハラなトロールは、今日も懲りずにどこかで暴れ回ってるのかもしれないね。

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今度はどこで誰が消されるんだろう…?

[おわり]

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