中編5
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人魚伝説 X-3

music:1

ダンピール、レオンの二人は

サラザール家を目指すべく路線バスに乗り込んだ。

レオンは煌めく海を窓から眺め呟く

「この海に怪物が…」

ダンピールも外を眺め

「海には数百を超える怪物、魔物が生息している。ほとんどは人間と同じ様に賢いがな」

ダンピールは視線を本に戻し読み始める。

路線バスに揺られて2時間半が経過し、終点に着いた。二人以外の乗客はいない。

レオンは不安げに看板の前に立つ

「ここ…ですか?」

路線バスは二人を降ろし

クラクションを鳴らして走り去っていった。

ダンピールは銃を取り出し

「そうだ…腐海の森。様々な怪物が根城としている森だ」

腐海の森には普通の人間は近付かない

、存在自体を知らぬ者がほとんどである。

ダンピールは自慢げに笑いながら

「まあ安心しろ、私がいる限り奴らは手を出さない。」

music:2

そう言った瞬間に野生化したグールのお出ましである。

ダンピールは銃の引き金を引き

グールの頭を撃ち抜いていく。

「グールが…なぜ?この森も時の流れには勝てないか…」

レオンは、これからの道のりを心配するように

「サラザール家まで、どれくらい掛かります?」

ダンピールはグールの死体を眺めながら

「6時間半は最低でも掛かるな」

レオンはため息をこぼし

「そんなに!?ハァ〜…」

ダンピールは笑いながら

「まあ怪物だらけのジャングルを探検すると思えば否応無しに楽しくなってくるさ」

二人は腐海の森の入り口に足を踏み入れた。

なんとも言えぬ生暖かい風、何かが腐った臭いが向かい風となり押し寄せる

まだ朝の8時半だ…やけに薄暗い腐海の森を歩く二人は何者かの視線を感じながら腐海の森の奥を目指す。

「まだ付けて来てるか?」

レオンは辺りを見渡し

「まだいますね…この気配は一人じゃない…」

聞こえないザワつきが木霊する

地面を這いずる不気味な気配が足元に充満し始める。

ダンピールは銃を抜き構える

「そろそろ姿を見せたらどうだ?」

鋭い耳鳴りがレオンを襲う

「ッ!なんだこれ!?」

ダンピールは目を細め暗闇に目を凝らす。

ゆっくりと暗闇から姿を現したのは

目を赤く光らせた一人の男

「この道は資格ある者しか通ることは許されない」

レオンは耳鳴りに襲われ男の声が聞こえない。

ダンピールは笑いながら

「では、お前にはその資格があるとでも?」

レオンを襲う耳鳴りは男の声である。

目を赤く光らせる男は銃を抜き、ダンピールに向ける。

「そんなのは関係ない。力を示せ」

ダンピールは鼻で笑い、銃をしまう。

「力を示せ…か。いいだろう。」

ダンピールは右手を男に掲げ

ゆっくりと瞼を閉じ、瞼を開いた。

開かれた瞳は青く光る

辺りの木々が青い炎に包まれ、空には

紅い雲が浮かんでいた。

ダンピールの足元は真っ赤な血でぬかるんだ地面。そしてここで果てた者の亡骸の山。

死と再生が幾度となく繰り広げられ

ダンピールと男を飲み込んでいく。

精神は蝕まれ立っていることがやっとのはずである…。

次の瞬間には男は地面に手を付いた

ダンピールの瞳は普通に戻り

「どうだ?これで示せたか?」

男は笑いながら

「なるほど…たった数秒であれほどの幻術に…ウッ…」

現実からかけ離れた世界に晒された者が、力の無い人間なら壊れてしまうだろう。

レオンは未だに耳鳴りに襲われ急に

耳鳴りが止んで辺りを見渡す。

「ん?あれ?止んだ?」

music:1

地面に手を付いた男は立ち上がり

左手を上げる

「資格を持つのに相応しい者だと、認めよう…だが、ここから先の道程は一筋縄ではいかない…」

左手を上げた男の背後に15人程の黒尽くめの集団が何処からともなく現れた。

ダンピールは笑いながら

「お前達は、レイブンクロウだな?」

唯一の素顔を見せている男は頷き

「1ヶ月前から奇妙な集団がウロウロしていると聞いて、急遽活動を再開した」

ダンピールはポケットに手を入れ

「1ヶ月前?妙だな…吸魂鬼が日本に姿を現したのと同じ時期だ」

男は左手を降ろし

「やはりな…怪物や魔人が頻繁に目撃されるようになったのは、さっきも言った奇妙な集団が現れてから数日後だ…」

レオンは黒尽くめのリーダー格の男の名を思い出すように

「あなたは…メッシュ様では?」

メッシュはレオンに視線を向け

「お前達は?」

ダンピールはレオンの肩を叩き

「私はダンピール。彼はカフマンの身内で、レオンという」

メッシュは右手を挙げると背後に待機する黒尽くめの集団が一斉に飛び去った。

「ダンピール?カフマンだと?そうか…それは失礼なことを…」

メッシュは深く頭を下げるが

ダンピールがメッシュの肩を押さえ

「謝る必要はない…それより人魚の情報は何か無いか?些細なことでもいいんだが…」

メッシュは顎に手を当て

「人魚が、この街にいるとしか分からない。」

ダンピールは溜息を零し

「そうか…人魚ではなく、マーマンという怪物の情報はどうだ?」

メッシュは腕を組み

「マーマンは必ずサハギンを連れていることは間違いない…だが、その規模は計り知れない。高い知性を併せ持っているとしたら非常に厄介な怪物だ」

マーマンは通常であれば単独での狩りを好むが、知性を併せ持っている個体はサハギンを連れて狩りを行う。

人魚とは異なり人間と同じように二足歩行で歩き、陸地に縄張りを作ることも稀では無い。

しかし、外見は人魚と類似する特徴が多くある為、マーマンを人魚と総称する場合がある。

体長2〜3.5m

未だ判明していない謎の多い怪物でもある。

また沼地に生息する個体も目撃されており、海に生息する個体と違って硬い鱗で覆われている。

メッシュは懐から紅く輝く宝石を取り出した。

「それと、これを持っていくといい。サラザール家に行くなら、必ず必要になる」

ダンピールは紅く輝く宝石を受け取り

「必要になる?どういうことだ?」

メッシュは微かに笑いながら

「サラザール家の屋敷に着けばわかる、くれぐれも失くさないように」

ダンピールは宝石を胸ポケットに入れ

「わかった。お前は、これからどうするんだ?」

メッシュは地面を軽く蹴り自分の身長よりも高い位置にある木の枝に止まり

「私達はやるべきことが残っている」

ダンピールはメッシュを見上げ

「わかった。また何処かで会おう」

メッシュは静かに頷き消え去った

次回…人魚伝説X-4 瘴気

二人を試すかのように腐海の森が、瘴気を撒き散らし始める。

二人は無事にサラザール家の屋敷に辿り着くのか?

To be continued…

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