短編1
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ある手記にて

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ある手記にて。

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あの子を殺されてしまった。

とても現実とは思えん。

あんなに喜びながら「癌が治るんだ。かなり痛みもなくなった。これも新しい薬のおかげだ。」と言っていたのに。

『新しい薬』とはモルヒネのことだ。

しかしやはり許せん。

効く薬があまり無く体力の無い子どもだからと言って手術もせず放置するのか?

もっと気にかけてやれば良かった...

一番悪いのは私だ。

ちくしょう!

父親のくせに我が子の命すら守らないだと。

何もできないくせに、あの子に負担をかけたくせに何が父親だ!

あの子の命の責任があるのに。

周りの人は「気にしなくていい、あなたは悪くない。」と言っておられる。

しかし私が悪い!

私が...

いや、よそう。

こんなことを書いてもあの子は帰ってこない。

私があの子の(判読不能)

罪は償わないといけない。

必ず。

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この手記が公開前、父親が亡くなった。

心筋梗塞だった。

また看護婦の間でこんな噂が広まった。

「昔いたあの可愛い子どものお父さん、奥さんがいなくなり子どもが癌になったショックでアル中になってたって。しかも薬物にも手を出していたらしくお金がぜんぜん無かったってさ。」

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