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中編4
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人魚伝説 X-4

人魚伝説 X-4 瘴気

music:2

腐海の森は侵入者を許さない。

木々が意思を持ち、血に飢えた獣を解き放つ。

静寂に包まれた森に二人の足音だけが響き渡り、血に飢えた獣が近付く。

ダンピールは足早に腐海の森を突き進む。道なき道を進み、目の前に現れた腐海の森で朽ち果てた者の亡骸の山。

ダンピールは亡骸の山を見上げ呟いた。

「この異臭…それに引きずり出された臓物…」

レオンは効き過ぎる嗅覚のせいで鼻を抑える。

「この臭い…以前にも嗅いだことが」

レオンが散らばった骨を踏み砕くと

砕いた音が辺りに木霊する。

その10秒後…地響きと共に無数の百足が押し寄せてきた。無数の百足といっても誰もが知る百足ではない。

体長60㎝で動く物を片っ端から食い散らかす害虫である。

フレッシュビートル

腐海の森の独特な土壌の性質と密接な関係にある。土壌に含まれた有害物質を吸収して身を守るが…稀に巨大な個体に成長することがある。

「新鮮な肉を求める者」と呼ばれる

ダンピールは押し寄せてくる百足を一匹一匹を短剣で切り裂いていく、レオンは鋭い爪で引き裂いていった。

「もう終わったか?ここまで異常成長した百足は初めて見たが…」

「もっと巨大な百足と戦ったことを思い出しましたよ…」

ダンピールは笑いながら

「一人でか?」

レオンは体を震わせ

「いや…カフマン様と二人で倒しましたが…被害は相当なものでした。」

ダンピールは感心しながら

「被害が出たのは仕方ない。お前達が倒さなければ被害はもっと出ていただろうからな」

百足の死骸を踏みながら腐海の森の奥へと進んでいく。

やがて…

二人は霧で微かに見える館を発見する

「これがサラザール家……デカイですね」

ダンピールは静かに見つめ頷く

「サラザール家の館は、いつからそこにあり、誰が建築したのか分かっていない。」

レオンは首を傾げ

「え?どういうことです?」

ダンピールは懐から分厚い本を取り出し、本に書かれた文章を読む。

サラザール家の館の歴史は古いが詳しいことは一切不明である。

悪霊の館と呼ばれていたが後に、

サラザール家の初代イリム嬢が全体的な改装を施した。

サラザール家は本来、マフィアに似た組織であるが、怪物を中心とした様々な厄介ごとを請け負う何でも屋である

古代種の怪物について多くの知識を持ち、それの対処の仕方も知っている。

古代種とは人魚、竜、亜人などを指す。

サラザール家には真眼と呼ばれる力を持つ女性が何代も渡って受け継がれている。

現在

「イリーザ・サラザール、記録抹消」

レオンは名簿一覧に記録抹消という一覧を見つけ質問する。

「記録抹消とは?」

ダンピールは本を閉じ

「サラザール家の叛逆者の名だ」

「叛逆者…」

辺りの霧が一段と濃くなってきた…濃い霧の中から漂う瘴気にダンピールは気付く。

「珍しい巡り合わせが多いな」

濃い霧の中で蠢く影、森の中でソレに出会えば生きたまま菌の塊にされる。

マンドラゴラ

頭部に百合に似た花を自生させ、その花が放つ花粉は吸い込んだ相手を麻痺させ、幻覚を見せる猛毒を持つ。

身動きが出来なくなった相手を捕獲し

菌糸を相手に振り掛け菌糸が腐らした部分を喰らう。普段は体から霧を噴出させ姿を隠すが、獲物を見つけると赤ん坊の鳴き声に似た声を発し獲物に近付く。つまり、声を聞いた者が死ぬというのは確実に捕食されるからに決まっているからだ。

ダンピールは短剣と銃を引き抜く

「マンドラゴラ…厄介だな」

レオンは体に力を込める

「俺がやります」

レオンの瞳の色が紅く光る。

マンドラゴラは体を左右に揺らし距離を詰めてくる

マンドラゴラが獲物を仕留める為に振り撒く花粉にレオンの意識がボヤけ始める。

「頭が…これはヤバイ…」

指先が痺れ寒気がレオンを襲う。

ダンピールは溜息を零し

人差し指と親指の二本の指を

立ててトンボを捕まえるようにぐるぐると回し、手の甲をマンドラゴラに向け人差し指を天に向ける

「さあ…夢の世界に落ちろ…」

マンドラゴラはダラリと腕を垂らし

眠たそうな表情をして地面に潜り

百合に似た花だけが残った。

レオンは全身の痺れに歯を食いしばり

耐えていた。

「すみ…ません…」

ダンピールは笑いながら小さな小瓶を取り出し、その中身の液体をレオンに飲ませる。すると、レオンを襲う痺れは消え去り安堵の表情を浮かべた。

「助かりました…ありがとうございます」

ダンピールは森の奥深くを眺め

「サラザール家まであと少しだ。お互い協力して前に進もう。」

レオンは頭を掻きながら

「あと少しですか…頑張りましょう。」

二人はマンドラゴラの百合の花を見ながら、その場を離れた。

次回…人魚伝説 X-5 叛逆

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