短編1
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50年前のはなし

私はまだ学校へ行く前の小さな子どもでした。

和歌山のおばあちゃんとおっちゃんの家に行けるので私は楽しみにしていました。

私は家が貧乏だったので、呉服屋で商売をされている、おばあちゃん達の裕福な生活が羨ましくて、美味しいものをいっぱいたべせてもらいました。

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御飯を食べ終えて、テレビを観ていた時でした。

おばあちゃんが突然、思い出した様に、話し出しました。

昔しなぁ、聞いた話やけどなぁ、船で海を航海したはるとなぁ、海から声がしてくることがあるらしい、ていうたはったわ。

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なんでもなぁ、海からなぁ、水が欲しいとか、畳が欲しいとか、声がしてくるらしい。

昔の船頭さんは、そういう時は、絶対に逆らわんと、言われた通りに海へ、飲み水や

畳とかを、投げ入れはったらしい。

そういう風にして、海の神さんや魔物から船の安全を願って旅を続けたらしい。

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ふーん、そんなことが昔からあったんかぁ。

私は不思議なことや時として、理解できない、不条理なことが目の前に現れても、頭ごなしに否定するのは必ずしも、良策では無いかもしれないなぁ、と子どもごころに思いました。

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ちょっとした神様への気遣い、

ハイキングで、山でお酒を飲む時に、ひとくち目を山の神様に飲んで貰ったり、入ってはいけない神聖、或いは忌避な場所を避けるといった

ことは他ならぬ、50年前のこの話から現在まで続いているのかもしれません。

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