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短編2
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風がついて来る

子どもの頃の話です。

今から思うと、私は凄く好きな事に、のめり込むタイプの人間だったと思います。

家が貧乏だったせいか、遊びといえば、魚とり、虫とり、何故あんなに熱心に山や川に入って行けたのか、自分の事ながら、笑ってしまいます。

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私の経験の中で不思議に思って、今だに、よくわからないもののひとつに風がついて来る経験があります。

虫とりでの経験ですが、京都のある有名なお寺の裏山が、偶然私の虫とりのコースと重なっていました。

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私はその裏山へは北山の林道からわけ入る形で入って行きました。

入ってすぐに、くぬぎの大きな木があり、その木はいつも、甘い樹液が出ていて、私の好きなブンブンやベタがいました。

時々、ヒラタクワガタやボウズも、いるのですが、そういう大物がいる時は、決まって隣に、スズメバチが一緒にいました。

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その木をやり過ごして、山を登ると、二、三本細いくぬぎの木があり、その木は蹴って揺らすと、不思議とカラカラと音を立てて、クワガタが落ちてくる木でした。

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そして、その木をやり過ごすと、山の斜面を見渡せる場所に出て少し明るくなり、お寺の裏に出ます。

ここにも、ベタやわりと大きなクワガタな

どがよくいました。

細いくぬぎの木でしたが、二、三本樹液がいつも出ている木があり、そこを折り返して帰るのが、私の虫とりのコースでした。

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ちょうど、此の折り返しの際に、不思議と

頭の上の木々が、決まった様に、ザワザワと揺れ、私の歩く上を風がついて来ました。

不思議と怖くは、ありませんでしたが、風は、私から離れることは、ありませんでした。

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あの、並走しに来る様な風は一体何だったのか、今だに分りませんが、悪いものではなかった様に思います。

同じ様な経験をされた方はいらっしゃいませんかね。

半世紀前の話しですがね。

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