こんばんは。弁当屋の山本です。
今日お話ししたいのは、ほんの少しだけ奇妙な配達について。
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うちの店では近くの家に限り、配達のサービスをやっているんですが、
やはり近所といっても初めての配達先のときはカーナビが欠かせません。
特にその日はいつもより少し遠くの目的地だったので、時間に余裕を持ってカーナビセット、車で出発しました。
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時刻は5時過ぎ、少しだけあたりは薄暗かったと思います。
いつも通りカーナビ音声を便りに運転していましたが、不可解な現象が起こりました。
そのカーナビがいきなり夜モードに、(つまり全体的に黒色で暗いところで見やすいモードのことですが、)変わってしまったんです。
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いつもならこの時期は19時に変わるようにしているので少しおかしな状態。
まあ、でもこのくらいの誤動作はいちいち気に止めないんですが、車の外の様子も少し変。
なんだかどんどん山の中に入っていってるんです。
人も家も姿が見えません。
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shake
「ぐぁー、ぐぁー」
虫か鳥かの鳴き声がいきなり大きくなり
「この先500meter目的地です」
そんな、どこにも家はなさそうなのに。
一本道で左も右も木でした。
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なんとなく気持ちが悪かったんですが、まっすぐ車を走らせると、
「この先100meter目的地です」
行き止まり、正確に言えば道がフェンスに遮られ
『私有地につき進入禁止』
の、立て札が。
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配達先のお客様に電話をかけてみました。
「すみませんお客様、配達に参りました山本です。」
「あ、すみません。今出ます……あれ、どこにいますか?」
「ええと、フェンスの前と言えば分かりますかね?」
shake
「……迷ってないで早く来い!」
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いきなり電話を切られてしまった。
もしやこのフェンスの中が目的地では無いのか。
恐る恐るもう一度電話をして、少し遅れそうなことを謝ったんですが、
もうお客様はそんなに起こっていないようでした。
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さて、私は、お客様から聞いた通り、ナビの目的地住所の一部を少し変え、再出発しました。
何故かナビは引き返すように案内します。
僕はナビの通りに運転し、いつの間にかナビ画面が昼モードに戻っていました。
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その後も案内に従って進んでいくと普通に団地へたどり着き、また普通に民家に到着しました。
チャイムを鳴らしましたら、穏やかそうな男性が出てきます。
「すみません。遅くなりました。」
「いやいや、大丈夫ですよ。」
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優しいお客様で良かったと思い、男性と話します。
「山の奥で行き止まりになったときにはどうなることかと……」
トン
いきなり男性が弁当の袋を落としました。
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そしてキッと私を睨み付けます。
「ウルサイウルサイウルサイ」
「どうなさいました!お客様!」
「ケンキュウシツ!オニ!オニ!」
騒ぎを聞いて家から出てきた女性が男性を抱きしめました。
「貴方!大丈夫だから!」
男性は少し落ち着きを取り戻したようです。
私はただただ突っ立っていましたが、
「山本さん、私たちは大丈夫なので帰って下さい。」
そう言われて車に戻りました。
その後私は何事もなく店に帰ったので、この話は特にオチもなく終わりです。
私自身は特に変な体験はしてません、が
車に乗り込むとき、女性が何やらこちらの上の方をを見て
怯えた表情を見せたのが、少しだけ気になります。
作者和一
3作目!
疲れた…