友達と呑みに行ったときのお話。
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その日は、バイト上がりに
アスカと呑みに行く約束をしていた。
俺はバイトが少し長引いてしまい
アスカを待たせる事になってしまっていた。
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駅に着いて辺りを見渡すと
壁際にアスカらしき人が居る。
しかし、俯いていてこちらに気が付かない。
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俺「アスカ!」
ア『…』
俺「おーい!アスカ!」
アスカは俯いている。
どうやらこちらに気付いていないようだ。
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俺は近づいていって肩を叩く
俺「おい!何してんの?」
ア『!!あぁ…遅いよ…お疲れ様(笑)』
顔色の悪いアスカが力なく笑った。
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俺「どうした?何かあった?」
ア『…呑み屋で話すよ』
とりあえずアスカと俺は
行き付けの居酒屋へと向かった。
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ある夏の日の金曜日の19時。
私は友達と呑みに行く約束をして
待ち合わせ駅の壁際で待っていた。
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もうそろ着くかな~?なんて思いながら
スマホに目を通した時
shake
俺「ごめん!バイト終わらない!少し遅れそう」
ア『まじか~…仕方ないか…』
暇潰しにふと、駅の構内を見渡す。
疲れた顔のサラリーマン、これからお仕事らしきお姉さん、テンションがやけに高い学生、買い物帰りの主婦…様々な人が行き交う。
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私は人間観察が好きだった。
けど、視える人だった私は
たまに人ではない“ナニカ”を
見つけてしまうこともある。
その“ナニカ”は気付いてることに
気が付くと憑いてきてしまうから
見つけたら気付いてないフリをする。
それが私の対処法になっていた。
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ふと、駅直通のデパ地下の方を見ると
青いワンピースで痩せ細っている女性
黒いストレートの長い髪。いかにもだ。
後ろ姿だったのでしばらく観察していると
目の前から急ぎ足のサラリーマン
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ア『(あ~…ぶつかる…)』
案の定、サラリーマンは女性をすり抜けた。
ア『さっきの人憑かれてないかな・・・』
通り過ぎていったサラリーマンを探す。
待ち合わせなのだろう。改札付近に姿があった。
ア『憑いてないか。良かった』
振り返りもう一度女性を確認しようとした
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ア『(あれ?まだいる。)』
なかなか消えない女性をしばらく観察していた。
青いワンピースの女性が前方から現れた男性と
腕を組んでこちら側に歩いてきた。
ア『あれ・・・生きている人間だった・・・?』
shake
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そうか。やってしまった。
私はとんでもない勘違いをしていた。
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見てはいけなかった。
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≪さっきのサラリーマンを≫
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改札付近を見渡す。彼は居ない。
チラリと横目で隣で壁にもたれ掛っている人を見る。
この季節には合わない紺色のロングコート
間違いない。こっちが”ナニカ“だったのだ。
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気付かないフリをするのにスマホをいじる
横から声がする
≪寒い…あぁ寒い…寒いよ…≫
緊張と恐怖で身体が震えそうになる。
≪寒い…何でこんなに寒いんだ…寒い≫
聞こえる声はだんだん大きく荒くなる。
声をかき消すためにイヤホンで音楽を聴く
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≪~♪……寒い…寒いよ…≫
音楽に声が混ざりだす。
額に汗が滲む。声をあげそうになる。
ア『(早く!!早く来て…!!)』
目をぎゅっと瞑り俯いていた。
すぅーと隣から気配が無くなった。
イヤホンを外したその時
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≪本当は聴こえているんだろう?≫
shake
≪寒いですよね?・・・ねぇ!!!!≫
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怖くて怖くて気がおかしくなりそうだった
うっすら目を開けて見ると
目の前で俯く私を覗き込んでいるのが分かる
ア『もうダメかもしれない…』
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不意に肩を叩かれる。
shake
俺「おい!何してんの?」
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そんなときに俺が来た。
顔をあげるともう彼は居なかったらしい。
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ア『って事があったのよ…』
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そう話すアスカはずっと
寒い・・・寒い・・・と言いながら熱燗を呑んでいた。
作者夢
ご覧いただきありがとうございます。
後日、判明したのですが
その駅に彼はずーっと居るそうで
視える人の間では「見てはいけないモノ」として
有名だったそうです。
貴方にも見える行き交う人。
本当に”生きている人間”なのでしょうか