これは俺が大学生だった頃の後輩の話。
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俺は 「イベント愛好会」 というサークルに所属していた。
その名の通りあらゆるイベントに参加し、その感想を
動画や写真を加工し、HPを更新するというモノだった。
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イベントといっても皆がイメージする 「追っかけ」 とか
そういう類では無く、○○祭、○○フェスタ、主にそういうイベントに出かける。
美味しいものを食べ、飲み、遊びまくる・・・天国のようなサークルだった。
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そんなサークルだからか愉快な奴が多かった。
明るく、アクティブでノリの良い男女ばかりだが、
たまに空気の読めない・・・いわゆる 「バカ」 も居た。
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俺の可愛がっていた後輩の 「タツキ」 はまさにそんな感じで
ここで笑うか?このタイミングで・・・って時も爆笑するような奴で
けど、憎めない人懐っこさと愛嬌で周りからは割と愛されていたし
そんなタツキを俺は一番に可愛がっていたと思う。
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ある日、バイト終わりにタツキから呼び出された。
タ 「どうしても相談したいことがあります」 と。
俺はいつものファミレスで落ち合うことにした。
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俺 『おぅ、お疲れ。なんかあったか?』
タ 「お疲れ様です。実は・・・・」
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タ 「彼女が倒れて、意識不明の重体なんです。」
俺 『え・・・こんなところに居て良いのか?』
タ 「それは大丈夫です・・・今日はもう会ってきたので(笑)」
こんな悩みを抱えていたなんて気づかなかった。
どんな時も、話してる時のタツキ笑顔だったから。
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俺 『相談はそのことか?』
タ 「いえ・・・・あの、俺っていつもニコニコしてて変ですか?」
俺 『はぁ?(笑)それは、お前の良い所だろう』
タ 「良い・・・トコロ・・・ですか・・・(笑)」
タツキは笑顔のまま話し始めた。
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前に付き合っていた彼女が自殺したんです。
原因は・・・多分、俺が別れたいと言ってから
精神的に病んでいたからだと思います。
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僕の顔色を伺ってニコニコしてる彼女が嫌で
どんどんウザったく感じる様になってしまって
一緒に居ても溜め息ばっかりで、つまんなくって。
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でも、僕がつまらなそうな顔をする時だけ
「そんなのタツキじゃない・・・笑って?いつもみたいに笑って!笑って!!」と
彼女はすごく怒るんです。
それにも嫌気がさして、突き放して、着信拒否にしてしまったんです。
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でも、別にストーカーになったとかそんなのじゃなくて
何事もなく終わったんですが・・・
彼女が亡くなってから後日、彼女の弟さんから彼女の日記を受け取りました。
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中には、僕への純粋な想いと思い出がいっぱい書き綴られていて
なんだか思い出すと悲しくなって、泣いてしまったんです。
どんどん読み進めて、最後のページには
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「なんで そんな顔するの なんで 笑ってくれないの なんで 笑って 」
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「私の命に代えても 笑っていて欲しいの タツキ 笑え タツキ 笑え ずっと 泣くな 笑え」
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「タツキ 笑って ずっと 笑っていて もう 泣けない 怒れない 笑うの タツキは 笑う」
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「私の為だけに 笑うの」 と書いてあったんです。
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ねぇ 先輩・・・
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こんなに苦しくて、悲しいのに
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わ、笑ってしまうのは ぼ、僕が オカシイからなのかな・・・?
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タツキから目を逸らし、外を行き交う人を見ながら 『さぁな・・・』と言うのが
精一杯の答えだった。
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苦悩に満ちた顔で、涙を流しながら、笑っていたタツキの顔が忘れられない。
作者夢