中編3
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もう来ないで。

私の実家の近く、目と鼻の先程に近所では有名なマンションがある。

どう有名かと言うと、過去に自殺者が三人。二人は首吊り、一人は飛び下り。週に一度は救急車やパトカーが停まっている。

母が近所で聞いた話によれば、妻が夫を喧嘩の末に刺した等もあるらしい。

ちなみに10世帯程は住んではいるようだ。ただ、結構な階数と部屋数があり、小学校や中学校、高校も近くにあるにも関わらず入居者が少ない。

今の実家に住み始めて二十年近くなるが、そのマンションから若い人が出てくるのを見たことがない。独居老人のようなお爺さんが、3人程出入りしているのを見た位である。二十年住んでいてだ。上の階の方に、若い人が住んでいそうなカーテンをつけている部屋が見えるのに、お爺さんしか見ない。夜中や昼間にコンビニに行くのに、どんな時間に通っても見たことがない。

古いのもあり、なんとも陰鬱な雰囲気が昼間も夜間も漂っている。

道路に面した生け垣は、伸びてくると手入れが入っているので、一応は管理人が放置しているわけでもなさそうである。

ここまでがそのマンションの、私の知っている限りの情報だ。

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私が大学二年生の夏。丁度お盆の頃だった。

いつも通り東京駅から出ている夜行バスに乗って、二時間半バスに揺られ、最寄りのバス停で降り、そのマンションの前を通った時のこと。夜中の12時の最終だったので、そのときにはもう深夜3時に近かった。

暗くて人通りの無い道を、足早に実家に向かっていると…

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あれ?んん?人??

そのマンションの屋上に、真っ黒い影のような靄のようなものが見えた。

なんだあれ??と思って見ていると、その黒いものが落ちた。下にフワッて感じで落ちた。

あ、これ見たらヤバイやつだったーーーー!!!!

ほぼ駆け足で実家の自分の部屋に戻り、とりあえず家帰れたし大丈夫だろうと、なんだかんだ寝る準備をして、布団に入った。この時、もう日が昇り始め、朝の4時になっていた。

左耳を下にして、横向きでいると、不意に枕から

《ブツブツブツブツブツブツ…ブツブツブツブツブツブツ…》とよく聞き取れない程の音量で何か聞こえた。

んんー?と思いよく聞いてみると、お経?のような念仏のようなよくわからないものだった。

うえ~気持ち悪っと思いながら、今度は右耳を下にして、向きを替えた。

「また来るよ。」

とはっきりと男の人の声が聞こえた。

うっわ…さっきの黒いやつか…こちとら眠いんじゃー!二度と邪魔しに来んな!!と無理矢理寝た。

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昼過ぎに起きて、母の所に行くと、前の話(誰かに聞いてほしかった)で出てきた母の彼氏Bさんがいた。

するとBさんが、「プリンちゃん、プリンちゃん。昨日の帰りに、あの角のマンションで、何度も飛び降りてる黒いの見たんだよー!」

「え!?Bさんもですか!?私も昨日の帰りに黒いの見ました…なんなら憑いてこられて、枕元でまた来るとか言われたんですけど…」

「お盆だからね~色んなものが帰ってきてるよね~」

それを見たのは1度だけ。

もう二度と来てほしくない。

終わり

Concrete
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