ワカさんから聞いた話だ。
時間軸的には前の話からだいぶ経った頃。
色々あって俺はワカさんに懐いていた。
別に恋愛的な感情ではなく、人間としてワカさんに興味があったからだ。
サークルの集まりでなかなか他のメンバーが揃わなかった時、暇つぶしにと話してくれた。
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私昔からおばあちゃんっ子だったの。
親が忙しくてよく面倒見てくれたのがおばあちゃんだったから。
幼稚園、小学校、よくおばあちゃんの家に預けられて、中学や高校に上がっても、自分からよく会いに行っていた。
ある日、おばあさんが夢に出てきたの。
おばあさんと外に出かける夢だった。
私が高校に上がる頃、おばあちゃんは足を悪くしてたから一緒にお出掛けは久しぶりで、うれしくて。
しばらくしておばあさんが寒いって言うから、私は上着を買ってきておばあさんに掛けてあげた。
『ありがとうね。○○ちゃん。(ワカさんの下の名前だ)おばあちゃんは○○ちゃんが大好きよ。寂しくなったら、また会いに行くからね。』
そう言って、おばあさんは消えた。
ぱっと目の前から消えたの。
まあ夢だし、不思議でもないね。
そしたらお母さんから電話が来たの。
“おばあちゃんが亡くなった”って。
そこで目が覚めて、寝起きの私はぼろぼろ泣いてた。
なんだかリアルで、怖かった。
*****
「ま、おばあちゃん今も元気だけど。」
「へー。でも、なんだか嬉しいっスね。」
「え?死んでるのが?」
「いやいや。そっちじゃなくて。聞いたことありません?夢に出てきた人は、自分に会いたがってる人って言うのもあるらしいっスよ。おばあさんもワカさんが好きだって事じゃないスか?」
「…へえ。」
俺が言うと、ワカさんは少し笑った気がした。
このぐらいの時に気が付いたのだが、ワカさんは真顔が怒って見えるだけで、実際毎回不機嫌という訳ではないらしい。
睨んで見えるのは、目が大きいからそうみえるだけだった。(もちろん、マジ睨みもあるが)
俺が思いふけっていると、ワカさんがまた口を開く。
「でもさ。」
「はい?」
「夢の中でおばあさんが出たって言ったじゃない?」
「はい。」
「そのおばあさん」
私のおばあちゃんじゃなかったんだよね。
「……え。」
「よくよく考えたら、知らないおばあさんだったの。夢の中では、完全におばあちゃんだと思ってたけど。」
俺がキョトンとしたのを見て、ワカさんはまたふっと笑った。
「…ね、古賀。“寂しくなったら”って、“どっちが”だろうね。」
そう言ったワカさんの笑顔は、嬉しくて溢れた笑顔というより
いたずらっぽく、意地の悪い笑顔だった。
作者みっきー-3
“ワカ”は名字から取ったあだ名なのです。
え、ワカさんって泣くの?とは本人には言えませんでした。
こんにちは。五度目まして、みっきーです。
初めましての方は初めまして。他の投稿を見て頂いている方はいつもありがとうございます。
今回はとってもショートなお話になってしまいました。
以前の夢の話を投稿して思い出した話です。
自分は少しぞくっとしましたが、ワカさんはケロッとしてたので多分大丈夫なんでしょう。
タグにワカさんシリーズとつけることにしました。
今後も頑張ります。