あれは高校生の頃、友人のKと体験した話し。
暇を持て余していた僕と友人Kは自分達の住む、京都の町を探索してました。
京都に来た事のある方なら分かるかと思うのですが、歩いていると「こんな所に?」と思える場所にひっそりと祠やお地蔵さん、慰霊碑等が見られます。
普段気にせず生活していた僕達も、そういった発見に妙な好奇心が芽生え競い合う様に探索してました。
暫く探索を続けていると「何かあるで!」と興奮したKが僕を呼びました。
Kの方へ行くと、小高い山の入口に鳥居があり、その奥に山へと登る道が続いてました。
K「どうする?行ってみる?」
僕「別にする事もないし、散歩がてら登ろか?」
そんなやり取りをし、僕達二人は鳥居をくぐり、山へと続く道を登り初めました。
10分程歩くとすぐに行き止まりになり、少し開けた場所に出ました。
見渡す程の広さも無く、真ん中にポツンとある祠が目に入りました。
ここで普通の怪談話しであれば、空気が変わったとか、祠をあけた、御札をはがした等、何かしらそれらしい事があると思うのですが、僕達は肝試しに来た訳では無くただの散歩。
当然何もせず、祠にも近づかず来た道を引き返しました。
??「キタキタキタ」
不意に声がしました。
K「今の声、男?女?」
僕「分からんけど何か聞こえたな?」
K「よう分からんけどとりあえず降りよ」
声が聞こえた気はしたものの特に気持ち悪いとかそんな感じは無かったので僕達は来た道を普通に戻ってました。
暫くあるくとKが「右腕が動かへん…」と。
僕「何の嘘やねん(笑)」
K「いや…ほんまに…」
突然の事で僕もKも焦りはしましたが、山頂の祠が関係してるなんて全く考えもせず、とりあえず病院へ駆けつけました。
診察結果、異常無し。
僕「…」
K「…」
僕「あの声か?」
K「そんなマンガみたいな事ある?」
僕「けど何か声してたやろ?オバケとかあんまり信用してないけど、何かあったんてそれ位やん?」
K「じじいに見てもらうか…」
Kのおじいさんはその頃、お寺の住職をしていました。
皆さんお寺の名前を聞いたら殆どの方がご存知な位、大きなお寺です。
病院を後にした僕達はそのままお寺へと向かいました。
Kのおじいさんに事情を話すと即答で
「ワシは幽霊の類いは信用しとらん!相談なら他へせぇ!」と…
それでもやはり孫のKが心配なのか
「ワシは信用しとらんけど、そっち専門でやっとる知人がおるし紹介したるわ」と何処かへ電話をかけに行きました。
暫くするとおじいさんが戻り
「良かったなぁ。丁度近くにいるし、すぐ来てくれるやて」とだけ言い去って行きました。
おじいさんの知人を待っている間、Kの腕を揉んでみたり、持ち上げてみたりしてみましたが、糸の切れた人形の様に何の抵抗も無く、痛みも無かったそうです。
そうこうしてる間におじいさんと中年の男性Oさんが僕達の元へやって来ました。
OさんはKを暫く見つめ、右腕を触っていましたが、首をかしげ「特に霊的な物は感じません。むしろ守護霊もしっかりとしており、問題は無いように感じます。」と。
僕「僕らも霊とか信用もしてないし、肝試しに行って悪さした訳でも無いんで何かが憑いたとかは思ってないんです。ただ声がしたような…」
Oさん「声?」
一部始終をOさんに説明すると
O「今からそこに行きましょう。そこに何かがあるはずです。」
と、もう一度あの場所へ行くことになりました。
移動中の車内で聞いたのですが、Oさんは陰陽師の家系らしく、霊的な相談もしょっちゅう受けているそうで、僕とKは「陰陽師」というフレ―ズにテンションを上げていました。
そうこうしている間にあの場所へ到着しました。
Oさんはすぐに鳥居に手をかざし、目を閉じ暫くその場にじっとしていました。
O「特に何も感じませんねぇ」
そう言って鳥居をくぐり山を登って行きました。
僕達もOさんの後に続き山を登りました。
頂上の祠前に着くとOさんは先程の様に手をかざし、目を閉じ暫くじっとしていました。
O「やっぱり何も感じません。悪い気も良い気も何も。ここには何もいませんねぇ。」
右腕の症状の解決はしてませんが、霊的な物は関与していないという事に僕達は少しほっとしました。
と、その時…
??「キタキタキタ」
僕、K「これや!」
O「!?二人が聞いたのはこの声?」
僕「そうです!Oさんも聞こえます?」
そう言ってOさんを見ると顔面蒼白で、ガタガタと震え歯がガチガチと音をたててました。
僕「大丈夫ですか?Oさん!」
僕はこの時、「Oさんの目にはとんでもない者が見えているんやろなぁ」と思っていましたが、そうでない事がOさんの言葉で分かりました。
O「自惚れてるわけではない、でも、厳しい修行に耐えて今ではそれ相応の力は身に付けている。悪霊ごときならすぐに封印も出来る!
でもこいつは…
姿すら見えない!
気配もない姿も見えない!
こんな者がこの世に△×◯×…」
Oさんはこの後半狂乱になり、僕達を置いて山を降りました。
中途半端に感じるかもしれませんがこの話しはここで完結です。
Kの右腕は治らないまま。
Kのおじいさんに聞いたのですが、Oさんはあの後、心が壊れてしまったそうです。
遊び半分での肝試し、祠やお墓へのいたずら。
それに対する報復なら理解も出来る。
でも、そんな事関係なく害をなす姿も見えぬ者も存在するんですね。
作者かい