あのぅ突然で驚かれてしまうと思うんですが、
香織さん!ぼ、僕と付き合ってください!
~
アタシ正直言って『はぁ??』って思ったわ。
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こんな告白、今時の小学生位じゃないの?
でもさぁ、悪い気はしないのよね~~。
~
アタシは、少し照れた風を装った。
まぁ、慣れてるしね。咄嗟にでも演技ぐらいできるわ。
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え?って、ちょっとだけ驚いた顔してさぁ、
毎朝、丹念にツケマとマスカラで渾身の瞬き。
パチパチって、一番可愛く見える角度でね。
えー?何?コイツ、マジ照れてんじゃねぇの?超ウケるんだけど!
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あ、あの。やっぱり僕なんてダメですよね?
~
えーー!ソコ?これで諦めんの?全くもぅ。
何?その媚びた様な上目遣い。子供かっ?
こないだ彼氏と別れたばっかだし、暇潰しには丁度いっかぁ~
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アタシは、周りの茶髪には混じらないように、黒髪を丁寧に長くしてた。
やっぱ目立つし、清楚感が格段にパネェ。
少し長めの前髪を、ちょっとだけ直す振り。
~
あ。ごめんなさい!ちょっと驚いてしまって!
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でも、でも、嬉しいです!だけど・・その・・
あんまり急だったので、少し考えさせて頂けませんか?
~
アタシは、両手をパタパタと胸の前で振って、あくまでも堅い女には見えないようにした。
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ごく自然に驚いてみせ、高嶺の花じゃ無い事もアピールしなきゃじゃん?
もう既に身に付いてる、このナチュラル感。
元ヤンだなんて、微塵も感じさせないように。
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こないだまでの彼氏も、昔の写真見られてさ。捨てられたんだよねぇ。
で、アタシは昔のモノを全部捨てた。
目指すは、セレブな生活が送れる相手。
贅沢三昧、してみてぇじゃん? 値札も見ずに買い物してみてぇ~!!
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そういや、コイツの実家も金持ちだったよね?
おーー。こりゃ、まさかのまさかっすかぁ~?
ちょっと、真面目に考えなきゃ、大きな獲物を逃がしちゃうよね~
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そんな事を考えてる内に、食事に誘われた。
~
ダメ元で予約していた店があるんですけど、雰囲気がいい感じなんです。
良かったら、食事だけでもどうですか?
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え!マジ?ちょ~っと先に言ってよねぇ~?
私服が今日に限って、ちょっとダサいんだよ。
~
少し困った風に眉根を寄せてみる。
折角なのに、私ったら今日は外食に行けるような恰好じゃなくて・・
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え?香織さん、食事ご一緒してくれるなら、ショッピングもどうですか?
もし気に入った服があったら、是非プレゼントさせて下さい!
~
うっそ!?何?いきなりの展開!?スゲー!!いやいや。ちょっと待てアタシ。
これで食いついたら軽く見られんじゃねーの?
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でも・・意外に強引な誘いにアタシは乗ることにした。
服に合わせて靴・バッグ・アクセサリー・・。
トータルコーディネートされて、豪華な食事を堪能し、その夜は、それで終了。
~
アパートに戻ると、自然と笑みが零れる。
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・・ふふっ!うふっ!あははっ!や~だもぅ!
ラフな部屋着に着替えてベッドに転がる。で、指に光るリングをキラキラさせてみる。
~
香織さん、このリングも似合いそうですよ? だって!!
やっぱ、金持ちだわ。うん!間違いない!! 今夜アタシに使っただけで軽く30万は出してる
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・・そんで、付き合うことにしたんだよね。
櫻井俊介。。ねぇ。。
付き合い始めは、それこそアタシをお姫様の様に扱って、君はもっと素敵な所に住むといいよ。ってさぁ~
あの安アパートから、かなり高級なマンションに引っ越した。
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勿論、金は彼が出したし、家具等もドン引きするような物を次々と買ってくれる。
~
いずれ、一緒に住むんだから。ってさ。
すげー!アタシ、マジでセレブ街道まっしぐらじゃん!
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マンションに一緒に住むって事は、同居じゃねぇだろうし。気ぃ使わなくて良さそうじゃん?
まぁ、一回実家に挨拶しに行ったけどさぁ、同居したって、干渉してくるような親じゃ無かったしな~
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ウチの母、この店の和菓子が好きなんだよ。
って先に聞いてたし、全ては俊介に任せておいたら、ご挨拶用の服装とか全部揃えてくれたし
あの豪邸!マジスゲーし。あっちに住んでもいいんだけど。
ま。一緒に住んだら何かと問題も出てくんだろうから別居のが都合いいわ。
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ま。。問題はウチの実家だったな・・。
普通のサラリーマンだし。母ちゃんも田舎丸出しだし、お茶請けが漬物だしさぁ。。
連れて行くまでは、ホント気が引けたよ。
でも案外気に入ったみたいでホッとした。
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あぁ。僕さ、こういう長閑な環境好きだよって
もう、良好なんてもんじゃない。
想像を遥かに超えた、結婚生活がアタシを待ってる。
~
でも、やっぱ馴染みきれね~んだよなぁ。。
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俊介の前で、胡坐かいてTVなんて見れねぇし。
お母様の前では、ずっと緊張しっぱなしだし。
~
櫻井家では、女性は美を追求すればよいのよ。
…内心、はぁ?ってキョトンだろ??
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家事なんてしなくてよくて、エステやネイル、
美容室。。とにかく『美しくあれば良い』のが家風なんだってさ。
毎日のサロン通いが日課って、どんだけだよ。
でも俊介は普通の生活を望んでるから、実家は嫌い。
でもって、高級マンション。てな事になった。
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・・俊介に言われたんだよね。
次も母と会う時は<美しく>なきゃダメだよ。
だから、手荒れも肌荒れも厳禁。
君はとても綺麗だから、心配ないかもしれないけど、念のためいつも綺麗でいて?
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・・まぁ。素直に言う事聞いたよ。
肌ケアに髪のケア、出来るだけ<美しく>
~
それが・・・こんな事になるなんてさ。。
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お母様が、ある日突然訪ねてきた。
相変わらず圧倒的な美しさだ。とても還暦を過ぎてるようになんて見えない。下手すりゃアタシより若く見える。
~
香織さん?おでこに何か吹き出物があるわね?
私の行ってるサロンへお行きなさいな?
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吹き出物?嘘?今朝見た時は無かったのに。
けど、半ば強引に連れて行かれた。
~
支配人らしき人物と少し話して、お母様は戻ってきた。香織さん?今日から毎日こちらへ通うのよ?…当然拒否権はない。
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アタシを残して、お母様は別のサロンの予約があるって帰っちゃった。
~
櫻井家の一員になるためには、美しくね?
それ言われたら、従うしかないじゃんよ。なんたって、櫻井財閥の一員に加わるチャンスだもん。
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スタッフ全員が頭を下げて、お母様を見送った後、お茶が出てきた。
ティーカップだけで諭吉何人いる?って感じ。
~
香織様、お味は如何ですか?お口に合えば次からも同じものに致しますが、ご要望があれば別の物を手配致します。
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えっ?あ。あぁ・・とても美味しいです。
~
嘘。正直さぁ、味も香りも分かんなかったよ。緊張しすぎだっての!
生温いのだけは気になったけどさ。人肌で飲むもんなんかな?
でも、このカップの底に転がってんの何だろ?
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・・あのぅ。。すいません。
~
はいっ!何か不手際が御座いましたか?
支配人がすっ飛んできた。
いえ!そんな不手際だなんて!!この、虹色の玉は何かしら?って思いまして・・
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あぁ!香織様は初めてご覧になったんですね?これは美を促進するサプリみたいな物ですよ。
お茶と一緒に飲み込んで下さいませ。
大丈夫で御座いますよ?櫻井薬品の研究部から直接仕入れておりますし。
・・へぇ、櫻井財閥って薬品も開発してんだ。
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あら、知りませんでした。ごめんなさい、つまらない事を聞いたみたいで。
~
支配人の笑顔が、取り繕った営業スマイルなのは気に入らないけど、通ってみっか・・。
別にアタシが支払う訳じゃねぇみたいだしさ。
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俊介に話すと、汚らわしい物でも見るような目つきになった。あれほど気を付けてって言ったのに。って。
…アタシ何か悪りぃ事でもした?
~
その日から、俊介は殆どマンションに来なくなった。
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ま~毎月、生活費として振り込んでくれるし、何不自由なかったけどさ。
~
サロンに通いだして2か月位だったかなぁ?
何か髪が大量に抜けるようになってきてさ。心配になってスタッフに聞いたんだよね。
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したら、大丈夫ですよ。とっても順調ですし、髪が抜けるのは新しく素晴しい毛が生えてくる準備ですから。ってさ。
違和感は感じたけど、気のせいで済ました。
肌もサロンに行くたびに乾燥する気がしてさ、それも聞いたよ。けど、髪と同じく肌も生まれ変わるから心配ないって
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ある日、いつものようにサロンへ行こうと鏡を覗いて驚いた。
なんか顔が突っ張るな~って思ったら、ミイラみたいになってんの!
驚くなって方が無理だよな。。
ぜってーあのサロンのせいだって思ってさ、マスクにサングラス、帽子を目深に被って出かけたよ。
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到着したら、支配人が出てきて言いやがった。
そろそろだと思いましたよ香織様?
~
一体、どういう事ですかっ!
大きな声を上げたアタシを別室へ案内した。 奥様に御連絡を入れますので、お茶を召し上がりながらお待ちください。
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暫くして、お母様がこの上なく上機嫌でやってきた。
・・お母様・・私、、私、、こんな姿に。。。泣き崩れるアタシを宥めながら、あの豪邸に連れて行かれた。
~
香織さん?今日から貴女はここで暮らすのよ?
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どういう事なのか説明を求めたら、さっぱり顔を見せなくなっていた俊介が来た。
っ!俊介さんっ!ねぇ!どういう事なのっ?
~
香織。だから言っただろ?美しくしてろって。母から君を守ろうと思ったのに台無しだよ。
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益々、訳わかんない事言ってる。
母から守るって何?お母様が、私をどうするっていうの?アタシは絶叫に近い叫び声を上げた
~
君こそ、どうして内緒にしてたんだよ?見抜けなかった僕のせいにするかい?
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そういって、バサッと叩き付けられた物。
≪月華蘭陵≫ ソレを見て戦慄した。
・・これ、どうして?・・
それはこっちが聞きたいよ。君は心の底まで、美しい人だと思ってたのに。
…彼の言葉が遠くから聞こえるようだった。
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≪月華蘭陵≫それは、レディースやってた頃のアタシのチーム名だ。
~
香織?いや、、月華の初代総長って言った方がいいのかな?
~
アタシは、あちこち血が染みついた白い特攻服を握りしめていた。
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コレ、引退パレードの時二代目に渡した筈・・唯奈のヤツ、アタシを売りやがったな。。
~
けど、怒りより驚きの方が大きかったか。
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君が母に促されてサロン行ったって話したろ? それで判ったんだよ。君が心底美しい人間じゃないってことがね。
で、僕はここへ来た。母から調査結果渡されて どれだけ僕が落ち込んだか、、。
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ちょっと待って!俊介さん!
私、過去を全部捨てて来たのに、こんなのっ! ・・あんまりだわ!言葉遣いだって直したし、もう昔の私じゃ無いのに!
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香織?母は、生まれつき心が読める人なんだ。君は初めて此処へ来た時に、『スゲー!どんだけ金持ちだよ?』って心で思ったろ?
母には全部分かってたんだよ。君の心までは美しく無い事をね。
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僕が、金目当ての性悪女に騙されないように、いつも目を光らせてるんだ。でも、誰一人心から美しい人がいない。
悲しいよな・・。
僕は、母が鬱陶しくて堪らなかったんだよ。
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いつもいつもケチをつけて別れさせられてさ。だから君とはマンションで暮らそうと思ってたのに。
君は、、あのサロンで何を飲んだ?
ウチの研究所で作られたサプリってヤツだろ?
アレが何で出来てるか、教えてやろうか?
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イヤよ!聞きたくない!訳が判らないわっ!
~
君は、知っておくべきだと思うよ?次は君なんだから。
・・・え?次って・・ナニ??
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クスクスと笑うお母様に視線を持っていく。
香織さん、この子の言う通りよ?貴女は知らねばならないわ。
さぁ、いらっしゃい?
・・アタシは、まるで糸に引かれるようにフラフラと付いて行った。
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・・こんなところにエレベーターが・・
お母様と俊介さんに支えられ乗り込むと地下へと降りて行く。
どこまで下へ行くんだろう?音もなく振動もないエレベーターが止まったのだろう。
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開いたドアを抜けたら、そこには確かに研究所があった。
真っ白な世界、ガラスの研究所だった。
幾つもの部屋に、一つずつ茶色い丸太のような物が置いてある。
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プレートには名前が付いてる。
TOKI・SACHI・ANNA・YUINA・・KAORI
・・え?YUINAって・・唯奈? アタシの心を読んだんだろう。。
そうよ?貴女の前の子。顔だけは可愛かったのに、残念ねぇ~
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YUINAの部屋には、木が丸まったような・・
変なモノが置いてあり、管が幾つか付いてる。
・・何?これ・・
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暫く立ち尽くしていると、ソレが蠢いた。
モニョ・・モニョ・・グェェ~~。。
おぞましい吐瀉の音と共に虹色の玉が吐き出された。
!!!っ!!!
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さすがに、もう解ったかしら。香織さん?
貴女がサロンで飲んだお茶とサプリは、唯奈さんよ。
彼女が吐き出す玉がサプリ。
お茶は彼女の排泄物よ。美味しかったかしら?
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本当に心から美しい人はね、あのお茶とサプリが見事に美しさを引き出す妙薬になるの。
逆に、心根の汚らしい人は、・・まぁ。見ての通りね?
あのサプリの中には寄生虫がいるのよ。少しずつ侵食していくって訳。
で、あのネバネバした液体はね、サロンで扱う美容液の原液。
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って、涼しい顔してグロイ事言うよねぇ・・。
アタシは急に吐き気がした・・。
・・う”・・
口を押えようとしたら、コロンとした物が掌に落ちた。
~
まぁ!始まったわ!!さぁ!準備なさい!!
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・・お母様・・?
ふふっ。。もう、お母様じゃなくてよ?
さぁ、最初の脱皮の威力は私が戴くわ。
~
アタシを白衣の人間数名が取り囲み、あっという間に服を剥ぎ取られ、部屋へ放り込まれた。
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対面に、輝かんばかりの艶やかな肌をした、お母様が裸体を晒している。
アタシは・・バリバリと木の皮のようになった皮膚を剥がされた。
痛みは無い。寧ろその逆だ。
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ミリミリと音を立てて軋む身体から、表皮を剥いでもらうことで楽になる。
お母様の全身にアタシの体液が塗り込まれる。
・・やっぱり初物は格別ねぇ・・それも100%ですもの。
恍惚とした表情だけが、印象的だ。
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ガラス越しに見えた俊介さんは・・
明らかに軽蔑の眼差しを向けている。。
~
あ~ぁ。セレブな生活が出来ると思ったのに。
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「そうね?これもセレブな生活よ?私達のために貴女は、ただ何もせず本能の赴くままに吐き出し、排泄すれば良いのだから」
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あのぅ突然で驚かれてしまうと思うんですが、香織さん!ぼ・僕と付き合ってください!
~
あ、あの。やっぱり僕なんてダメですよね?
~
こないだ彼氏と別れたばっかだし、暇潰しには丁度いっかぁ~
クルクル回るのは、最初の告白。。嬉しかったなぁ。。楽しかっt・・・
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アタシは、もう考える事さえ出来なくなった。
【終】
作者退会会員
こよりさん♪
アワード、おめでとうございました(*^^*)
ささやかながら、オマージュ作品をと思い・・・あはっw
今度は、脳みそ溶けまして、鼻から出てます~~
ご査収いただければ幸いです♡”
完フィクで~~す。