年末のとある日の話し。
普段殆ど残業などは無く早く帰れるのが理由でこの仕事を選んだのだが
今日はやたらと仕事が多く22時を回ってしまった。
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今日は23時から観たい番組があったので急いで身支度を済ませクルマに乗る。
この環境の為この時間帯の番組を録画をするという習慣がなかった。
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流石にいつもより時間帯が遅い為順調にクルマは進む。
このままだとギリギリ間に合いそうだ…
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交差点の信号待ちをしてる時にふと思い出した。
確かここを右に曲がると近道だったよな。
普段その道は道幅が狭く、すれ違うのが面倒なので敬遠していた道だったが少しでも早く帰りたいので使う事にした。
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街灯は殆どなく辺りは真っ暗でひたすら田畑が続き
たまに静まり返った民家がある程度でクルマのハイビームだけが頼りの道だった。
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しばらく走るとそのハイビームを反射する人工物が映った。
どうやらバス停らしい。
と、その時バス停の他に人影がある事に気付いた。
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白いワンピースに麦わら帽子の細身の女性だった。
こんな時間になにしてるんだろ?
観光客かな?
時間的にバスも走ってないし教えてあげようかな。
などと考えその女性に向かい減速してる途中で慌ててアクセルを踏み込む。
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白いワンピースに麦わら帽…
.
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今季節は冬である。
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いや、待て。
そんな服装に見えただけかもしれないし、
本当にその服装ならなんらかの事情があってそうなのかもしれない。
などと引き返すべきか考えてる内にいつもの道路に合流する為左折した時だった。
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『ウゥゥゥ−!』
突然サイレント共に赤いランプがバックミラーに映る。
マジか…
よりによってこの急いでる時に…
さっきしっかり一時停止はしたしスピードも出てない。
思い当たる節はないが取り敢えず路肩に車を寄せて停車する。
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すると2人の警官がパトカーを降りて後ろから近寄って来る…
.
.
が、なかなか来ない。
サイドミラーを覗き込むとなにやら2人で話している。
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間も無くして警官が遠巻きに横に来て通り過ぎ、クルマを一周して又話し込む。
一体なんなんだ?
整備不良とかなのか?
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痺れを切らしてドアを開けると話し声が聞こえて来た。
若い警官『いや、絶対いましたよね。さっき』
年配の警官『うーん。いたと思ったが暗かったしなぁ』
俺『すみません。なんかありましたか?』
と2人に近づき話に割り込む。
年配の警官『あ、その…今確認したんですがお兄さん1人ですよね?』
俺『えぇ勿論』
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年配の警官『すみません。どうやらこちらの見間違いだったみたいです』
若い警官『え、でも…』
流石にこのやり取りを目の当たりにすると聞く以外の選択肢はない。
俺『一体なにを見間違ったんですか?』
年配の警官『いやぁそのぉ…』
見事なまでに歯切れが悪い…
それを観ていた若い警官が我慢しきれなかったのか
若い警官『信じられないかもしれませんが、おたくのクルマの屋根に白い服を着た女性が張り付いてたんですよ!』
俺『えっ?!』
年配の警官『とまぁ、そんな感じで停めさせてもらったんですけどね…お兄さんそこの道から出てきたって事はやっぱりあの使われてないバス停の道を走って来たんですよね?』
俺『あ、はい。途中にありましたね』
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あ!!
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この若い警官はさっき確かに【白い服を着た女性】と言っていた。
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年配の警官『実は…毎年この時期になるとこの辺りで車の屋根に女性が張り付いている!って通報があるんですよね。
で、確認するとみんなそのバス停の道を通ってるんですよ。
特に過去に何かあった場所でもないんですけどねぇ〜。
まぁ、そんな訳でお手数おかけしました』
と言い残して職務へ戻って行った。
警察官という職業はこういう事は日常茶飯事なのか?
少しの間頭の整理がつかずクルマに戻り屋根に手を付く…
ん??
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濡れていた。
よく見ればクルマ全体に水滴が付いている。
まるで夕立にあった後の様に…
作者ハロサン