うちの母は霊感が強い。
妹は霊感の強い人間と一緒にいるとソレに影響される。
俺は幸か不幸か全くない。
nextpage
wallpaper:3025
この三人で食卓を囲んでいるとしばしば会話から置いていかれる。
我が家は昔ながらの古い平屋なので台所にテレビはなく、必然的に話す事が習慣になっていた。
例えばこうだ…
nextpage
妹『昨日テト来てたね』
テトとは三年前まで室内で飼っていたトイプードルの名前だ。
母『足音してたもんね。お盆近いからかなぁ〜元気だよって言いに来たん違う?』
普通ならここで『えっ!』ってなるんだろうが我が家は違う。
nextpage
wallpaper:125
この家族と言う閉鎖的で濃密な関係性は世の中での非常識が常識として刷り込まれる事が多々ある。
家族の中ではご飯をお代わりをして『あんたはよく食べるわねぇ〜』とか言われてるのに
ある日友達の夕飯にお呼ばれして、その家庭のご飯の茶碗が大きい事にびっくりする…そんな感じだ。
nextpage
俺自身テトを可愛がっていたし、
そんな形でも感じる事が出来る事を羨ましく思ったりもする。
まぁ〜死んだ犬が来て元気だよってのもおかしな話ではあるが(笑)
wallpaper:2061
ある日家族三人で街の商店街で買い物をした帰りの時のことである。
街とはいえ田舎の商店街なので人はまばらだ。
wallpaper:3495
横断歩道の信号待が青に変わったので渡っていると母と妹が遅れている事に気付く。
振り返ると横断歩道の真ん中で立ち止まってる。
渡り切って待っていると遅れてやって来た。
nextpage
俺『なにしてんの?』
母『いや、知らないおじいさんにお久し振り。良いお天気ですね。って話しかけられたから…』
nextpage
勿論横断歩道を渡ってる時に人とすれ違ってはない。
という事は…そういう事である。
nextpage
母『でも誰だか思い出せなくて…取り敢えずそうですねぇ。って答えたらでもこの後雨が降るとか言ってくるし、ちょっとボケちゃってるのかね』
wallpaper:149
空を見るがすこぶる快晴だ。
俺『そんなんや?見えるのも大変やなぁ』
と軽く流して駐車場へと歩き出した。
nextpage
しかし又しても二人が来ない。
え?まさかその幽霊にしつこくナンパでもされてるのか(笑)
と思い振り返るとなにやら真剣な顔で妹と話していた。
nextpage
俺『え、なに?まだおるの?』
母『さっきのおじいさんあんたに見えてないって事は向こう側の人って事やんね?』
俺『なにを今更(笑)』
母『いや、二人して話してたけど全く気付かなかったから…』
nextpage
wallpaper:125
なにやら話を聞くと
【向こう側の人】と
【こちら側の人】を
見間違うのが初めてだったらしい。
いくらはっきり見えていてもなんとなくどちら側か判るのがデフォルトなんだそうだ。
nextpage
しかもそれだけ実体化出来る
=強い思念がある
=危険
という方程式が今までの経験から出来上がるとの事で、そのおじいさんの
『この後雨が降る』
は何かを意味するんじゃないか?
だから急いで帰ろうという事になった。
nextpage
wallpaper:3494
言われるがまま早歩きで駐車場に向かい丁度車に乗った時である。
ポツポツと水滴がフロントガラスを打つ。
あれだけ快晴だったのに本当に降るとは…
nextpage
まさかそのおじいさんの
『この後雨が降る』
は文字通りの意味?
だとしたら結果ちょっと親切な【向こう側の人】だったって事になるが…
nextpage
その後無事家に到着し、特になにもなかった。
降った雨もゲリラ豪雨とかではなくにわか雨程度で直ぐ止んだ。
.
正直、実際の体験談ってのはこんなものである。
.
wallpaper:1
ただ…
.
nextpage
そんな形でも感じる事が出来る事を羨ましく思ったりもする…
この言葉は撤回しようと思う。
nextpage
なぜなら今現在なにも起きてないだけ
これから先なにが起こるか分からない。
それは普通に生きててもそうな訳で…
nextpage
wallpaper:3496
『この後雨が降る』
nextpage
たったこれだけの何気ない言葉を
【向こう側の人】
から聞いたという事だけでこれから先は何気ない言葉ではなくなるのだから…
作者ハロサン