田舎の夏休みは本当に何もやることがない。都会から来た大学生達が、肝試しをしにS県のど田舎の廃寺に車を走らせた。本当に何もない…あるのは畦道と山とぽつんぽつんと明かりのついた古家だ。
「ヒロ、ここまでしか車で行けないーどーする??歩いて1時間近く掛かる…」「えーーーっ!!?そんなかかんのかよ…でも俺たちオカルト研究部はそんな事では屈しない!!」「ヒロ先輩もケンタ先輩も元気っすね…ヤバw俺1番年下なのに、歩ける自信ないっス」この大学生の運転手ヒロとオカ研部長のケンタと1番年下のセイタと3人で、近くの公園の駐車場に車を残し廃寺を目指した。
歩く事30分にしてセイタが弱音を吐き出した…「俺…そろそろギブですw」
「はえーよ!!」先輩方2人の声がシンクロする。
「最年少頑張れよw」「ヒロ先輩もケンタ先輩も高校の時は野球部だったから、体力には自信があるんすね??わかります!!」そんな会話をしてる時に、深夜帯にパーカーのフードを目深に被り俯いてブツブツ言いながら歩いてくる男がこの大学生達に「こんばんは」と挨拶をしてきたので、3人は「こんばんは」と挨拶を交わした。何事もなかったかのようにそのあとは通り過ぎる。特に気にしていないふりをしていた先輩2人と露骨に「きっも」って言い放つ後輩「馬鹿聞こえるぞ!!!!」とまたシンクロした。
あと10分で着くであろう廃寺が木々の奥の方でぼんやりと見えて来た。
「おー見えて来たぞぉ!!後輩!!」部長のケンタが言う。周りは生い茂った木々に生温い気持ちの悪い風が吹いている。「ケンタ先輩張り切りすぎwwもー俺ちょっと休みたいもん!!」そんなセイタに何故かケンタは飴を貰った。でも美味しかった。
「全員集合!!点呼取りまーす。高木ヒロくん」ハイ
「浅見セイタくん」はーい
「で、日野ケンタ!はい…3人いるね!?じゃー廃寺行きますか!!」で境内に入った。石畳がボロボロで凄く歩き辛い。暫く歩いてウロウロしていると何処からか、女の子の声が聞こえて来た気がした。すすり泣くような感じの声だった。「誰かいるんじゃ…誰かいます??」遠くの方から微かな声で「助けて」って聞こえたような気がしたので、とりあえず寺周辺を探してみることにした。誰もいないみたいだ…
3人は探索に探索を重ねたが、特に怖いこともなかったので帰ることにした。
また車まで歩くことを考えると萎えて仕方がないと後輩のセイタは思っているに違いないと先輩2人は心の中で呟いた。車に戻りまた東京まで帰ってく。途中でパーキングエリアに行って3人でくっちゃべりながら、廃寺の感想と部活動の事を話し合った。やがて朝が近づいた。
「もー朝っす…おはようございます。」大学生3人は眠いながらも運転を続けて東京まで辿り着き、各々の家へ帰り爆睡する。
みんな疲れてたから泥のように眠った。それからセイタが起きたのは午後1時ごろ…凄い勢いでセイタの母が起こして来たのだ「セイタ!!大変だよ!!起きろ!!セイタ!!」母親に起こされ、母親の言われるがまま自分の部屋のテレビをつける。『昨夜未明S県の廃寺で少女の遺体が発見されました。犯人は以前逃走中で目撃情報はないと発表されております。警察では情報提供を呼びかけております。情報提供お願いします』
慌てて、セイタは先輩2人に連絡を入れる。話をした結果、3人で警察に話しに行く事で同意した。
大学のサークルとしてオカルト研究部の部活の一環でS県の廃寺に行った事。その山道で怪しい男にあった事。廃寺で女の子の声が聞こえたけど、誰もみなかったことも警察は当然、この大学生も疑うことはしたけれども何度も事情聴取やらなんやらで、疑いわ晴れた。
フードを目深にかぶるその怪しい男は、未だ見つかっておらず自分らも殺されてたかもしれないと思うとゾッとする。この事があり、心霊スポットの遠出はしない方向でオカルト研究部は存続をしている。
心霊スポットに行っても1番怖いのはやっぱり人間だった。そう3人に思った。
作者万事屋千絵ちゃん