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中編3
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孤独

「N君、すまんが安否確認に行ってもらえるか」

それが事の発端だった。

朝早くから着信が入ってるから、何かと思えばこれだ。社長曰く、2週間前からある男性の姿が目撃されないため、近隣の住民が連絡を入れてきたそうだ。

俺の他に担当の奴がいるのだが、まだ20代前半の新人ということもあったため、俺に頼んだのだろう。

そんなことを考えながら、俺は後輩のOと男性の自宅へと向かった。

玄関のドアをノックしてみる。

…返事なし。

「お邪魔しますよー」

一声かけて家に入ると、足元には約2週間分の新聞紙が山積みになっていた。

「…Nさん、これ、やばい感じですかね?」

と、Oは新聞紙を凝視しながら尋ねてきた。

「…まぁ、調べてみるしかないな」

俺も嫌な予感を感じつつ、とりあえず1階の部屋を2人で手分けして男性を探してみることにした。

1通り見ても男性は見つからないので、次は2階の調査をしようと思ったときだった。

…臭い。

腐ったような、酸っぱいような、焦げたような、口では説明出来ない、この世のものとは思えない臭いが2階から漂ってきた。

恐る恐る階段を上る。1段ずつ上るにつれて臭いがきつくなっていく。

やっとの思いで2階へつくと、5つほどある部屋のうちの1つの部屋のドアが妙な隙間を開けていた。

…絶対あそこだろう。

瞬時にそう思った。しかし、心の準備がまだ出来ていないため、あえて他の部屋から探索することにした。

案の定、4つの部屋には何もなかった。

「おい、O。あそこの開いてる部屋入ってみろよ」

「あ、はい」

我ながら俺はなんてせこい奴なんだろう、自分から言ったくせに急に罪悪感が湧いてきた。

Oが足を踏み入れた瞬間、

「ッ…!Nさん、いました」

Oの顔からして、きっとそれは「男性だったもの」なのだろう。

俺は部屋に入った。すると、そこにあったのはこたつに入ったまま横たわる男性だった。

恐らく死後2週間前後と言ったところだろう。目玉はぐじゅぐじゅに腐って、空洞ができている。こたつの電源は入りっぱなしで、何かが焼けたような臭いがする。

テレビも電気もつけていないため、こたつで寝ているときに死亡したようだ。

特にもがいたような跡はない…。

俺の脳裏に思い浮かんだのは、

孤独死。

本当にあるものなのかと俺は心底驚いた。

これらのことがほんの数秒で俺の頭を駆け巡った。

「O、警察呼べ」

「はっ、はい!」

いや、できるものなら見たくなかったが、O1人で来なくて本当に良かった。まぁ、最初に見せたのは俺なんだが。

あんな若いのからしたら、相当なダメージを食らうだろう。俺も日頃からスプラッタ映画を見ているから、多少は耐性があるとは思っていたが、やはり本物はダメだ。比べ物にならない。俺たちは確実に大きなトラウマを植え付けられた。

しばらくすると警察がやってきて、俺とOは事情聴取をされた。俺は割と冷静に答えられたつもりだが、Oはかなり混乱しているようだ。本当、社長どうしてくれるんだ…。

翌日、社長が俺の所へやってきて

「いやぁ、N君。昨日は本当に申し訳なかった、君にもO君にも悪いことをしたよ」

「いや、いいですよ。俺は大丈夫ですけど、Oはちょっと安静にした方がいいですね」

「そうだなぁ…。そういえば、N君。例の男性はやはり孤独死だったみたいだよ、N君もああなっちゃう前に、早く相手見つけないと!ははは!」

「…笑えねえよ!」

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