すごいお調子ものだった小野くんが亡くなって、実家にお線香をあげにいきました。
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彼のお母さんが迎えてくれたんですけど、
おばさん、悲しいことがいっぱいあったせいでしょうね。とってもつかれて見えました。
何かしてあげたくて、あれこれお話してたら、
小野くんは人を笑わせる天才だった、という話になったんです。
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「そういえば小野くん、中学のとき焼却炉でこっそり焼き芋して、教室で密売して、校長先生に摘発されてました。あれは本当におかしかったですねー」
そしたらですね、
なんとそれまでぐったりしてたおばさんが、くすくす笑い出したんです。
「しめたー」と思いましたね。
頭をフル回転させて、小野くんのろくでもない思い出をサーチしました。
「そういえば小野くん、教室に持ちこんだトランプを先生にみつかったとき、
先生に千円札をにぎらせようとして、ガチで説教されてました」
「小野くん、ドライブスルーを竹馬でスルーして、店員さんにスルーされてました」
「小野くん、体育祭の棒たおしに女性用ブラとパンティーだけで挑んで、
競技がおわってみんな散ったあとの運動場に、ひとり全裸でうずくまってました。
ヤンキーすら逃げる”オーガ”というあだ名の体育教師やってきて、自分のジャージを脱いで、そっとかぶせてあげてました」
おばさん、お腹を抱えて笑いころげてました。大成功でした。うれしかったですねー。
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そこでおばさんは「あっ」と口をおさえて、
「そういえばあの子、火葬の前に、お棺のふたを開けたらね、笑ってたのよ。
――猿みたいに顔をくしゃくしゃにしてね。ホントお調子ものよねえ」
そう言って、目尻の涙をぬぐいました。
蟻の這うような悪寒が背筋をかけあがってくるのが分かりました。
作者Glue
ふぃ、ふぃ、フィークション!
はーい!みなさまこんにちはー。
だんだん寒くなってきました。風邪さんに注意しましょう。