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長編9
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祓い屋「匠」〜侵食〜

トントントントン!!

ジャ〜!!

カチャカチャ。

……ん?

何の音だ?

俺は眠たい目を擦りながら、枕元の時計を見る。

まだ六時じゃねぇか?!

ったく…。

何処の馬鹿が朝っぱらから騒いでやがる。

バァン!!

匠「うわぁっ!!」

勢い良く寝室のドアが開かれ、その音に思わずさけんでしまった。

蛍「匠〜!いつまで寝てるの?

もう朝だよ?

朝ごはん作ったから食べよ?」

匠「お前なぁ…。

ビックリさせんじゃねぇよ…。」

俺はダラダラと歩き、朝食が並べられたテ―ブルへ向かう。

蛍「今日学校の帰りに友達と遊びに行きたいんだけど、ちょっとだけ遅くなってもいい?」

匠「男か?(笑)」

蛍「そんな訳ないでしょ!」

匠「なんだつまんねぇなぁ。

分かった。あんまり遅くなるなよ?」

蛍「うん!

ありがとう(笑)

じゃ私、部活あるからもう行くね。

洗い物は置いといてね。

いってきま〜す!」

蛍は元気に出掛けていった。

一人が長かった俺には、蛍との暮らしは新鮮で大変で、でも充実していた。

蛍もそうなんじゃねぇかな?

祓い屋なんて仕事をしている以上、危険な目にも合って来たが、家に帰れば蛍が居た。

それだけで十分だった。

勘違いするなよ?

恋愛感情なんてもんじゃねぇ。

それ位、充実してたんだ。

あっという間。

本当にあっという間に、六年が経っていた。

出会った時は、十歳だった蛍が今は十六歳。

変わらず、優しく明るく育ってやがる。

「ずっとこのままでいいよなぁ〜。」

俺はそう呟いた。

その後、依頼があった俺は外出し、八時頃帰宅した。

蛍はまだ帰ってねぇのか。

ソファーに腰掛けた俺は、早起きのせいか、そのまま眠ってしまった。

蛍「ただいま〜!!」

…ん?

蛍が帰って来たか。

時計を見ると21時。

匠「何だ?

えらく早いじゃねぇか?

男に振られたのか?(笑)」

蛍「そんな訳ないじゃん!

それよりアタシ今、物凄く気分がいいの!」

匠「蛍…?」

俺は帰って来た蛍の言動に何か違和感を感じ、目を向けた。

?!

匠「蛍!お前…それどうした?!」

蛍「なに〜?どうかしたぁ〜?」

匠「何って!お前その目!何があった!」

蛍の目が、髪色とおなじく透き通る様な青に変わっていた。

蛍「あぁこれ?綺麗でしょ?

カラコンじゃないよ?(笑)

正真正銘、アタシの目!」

俺は蛍に駆け寄り問い詰める。

匠「お前、何処で何をして来た!」

蛍「ちょっ!ちょっと!痛いって!

せっかく気分良く帰って来たのに何なのよ!」

やっぱりおかしい…。

青く変色した目は勿論だが、この言動、明らかにいつもの蛍じゃねぇ。

俺は、渋る蛍を更に問い詰め、今日あった事を聞き出した。

蛍を含む五人で、学校帰りにファミレスに寄って、何をするわけでもなくただ話をしていたらしい。

すると友人の一人が、近くの廃ホテルへ肝試しに行かないか?と提案して来た。

女性ばっかりだったのだが、時間も早いので特に危険は無いだろうと、友人達は賛成した。

だが、蛍は、俺が常日頃からそういった場所へは行くなと忠告している事と、自分に特別な力がある事で、行くのを拒んだ。

だが、友人達はすっかり肝試しモ―ドに入っており、蛍は半ば強引に連れて行かれたらしい。

バスに乗り、歩く事、三十分。

目的地の廃ホテルに近付いた時、蛍は嫌な空気を感じ取っていた。

そして廃ホテルに到着した時、蛍は確信した。

「間違い無くこの廃ホテルにはいる。

それも、凄く性質の悪いモノが…。」

そう確信した蛍は、再度、友人達に引き返す事を提案した。

だが、さっきと同じ様に友人達は蛍の言葉に耳を貸さなかった。

そして、遂に友人の一人がホテルへの扉を開けた。

ゆっくりと中に入って行く友人達。

蛍は一番最後にホテルへと足を踏み入れた。

ホテルへと足を踏み入れた瞬間、蛍は妙な違和感を感じた。

が、その違和感の正体は分からない。

先に進む友人達の後を追い、二階へ上がる階段前に差し掛かった時、蛍は違和感の正体に気付いた。

さっきまでは…このホテルに入るまでは、すぐにでもこの場から立ち去りたかった。

でも今は違う。

殺したい。

殺してやりたい。

友人達の事ではない。

このホテルに住まう何者か。

ソイツを見つけ出し、殺してやりたい。

蛍はそう思う様になっていた。

友人達が二階へと上がる階段前を通り過ぎ、一階の奥へと足を進め出した時、蛍は衝動を抑えられ無くなっていた。

違う!そっちじゃない!

殺したい!殺したい!殺す!殺す!殺す!!

その衝動が爆発した時、蛍は先に進む友人達に背を向け、二階へと駆け出した。

階下から友人達が蛍の名を呼んでいる。

だが、蛍の耳には届かない。

二階、三階へと上がる度に、ソイツの気配が強くなる。

蛍はそれが嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。

早く!早く!

蛍は一気に最上階である、五階フロアまで駆け上がるとゆっくりと歩き出した。

五階、最奥の部屋。

部屋の前で立ち止まった蛍は、乱暴にドアを開けた。

み〜つけた〜(笑)

真っ暗な部屋の中、カ―テンの閉められた窓辺にソイツはいた。

恐らく女性なのだろうが、髪は半分抜け落ち、顔は焼け爛れ、くりぬいた様に両の眼球は無かった。

普通の人間ならば、腰を抜かす、失神する、絶叫をあげ逃げ出す。のいずれかだろう。

だが、蛍はソイツを見て嗤っていた。

まるで何年も探し続けていた恋人と、運命の再開を果たした如く、蛍は高鳴り、高揚していた。

もう一回殺してあげる(笑)

蛍がそう言うと、ソイツがゆっくりと蛍から遠ざかる姿勢を見せた。

瞬間、蛍は一気に駆け寄り、ソイツの髪を鷲掴みにした。

蛍はソイツの顔前まで顔を近付けた。

もう一回殺してあげる(笑)

そう言うとソイツの顔を殴打した。

何度も、何度も、何度も。

ソイツが消滅するまで蛍の暴力は続いた。

その話を楽しそうに嗤いながら俺に聞かせる蛍。

そして、最後に蛍は言った。

蛍「あの汚い女、凄く怯えた目でアタシを見たの(笑)

あっ、でもあの女、目ないんだ!(笑)」

そう言うと、「今日は疲れたからもう寝る」と部屋へと入って行った。

俺は煙草に火を着けると、ゆっくりと煙を吐き出した。

両頬を涙が流れていく。

嗚咽が抑えられない…。

蛍に気付かれないよう、クッションに顔を沈め、泣いた。

泣き尽くした。

止まらない涙を流したまま、俺は電話を手に取る。

匠「あぁ、俺だ。」

??「ヒヨっかい?何だよこんな時間に!」

電話の相手はババアだ。

匠「ばあさん…。蛍が…。」

婆「始まったんだね…。」

俺は暫くババアと話し、電話を切った。

次の日、俺と蛍は遊園地に来ていた。

昨日とは違い、今日はいつもの蛍だ…。

蛍「匠!ジェットコースター乗ろ!(笑)」

匠「俺、高い所ダメなんだよなぁ…。」

蛍「大丈夫!私が一緒だから!

だから乗ろうよ!」

匠「ったく。お前が一緒だろうがこえぇもんはこえぇっての!」

蛍は俺の隣で、キャ―キャ―言いながらジェットコースターに乗っていた。

その後も蛍がせがむもんだから、絶叫と言われる乗り物には全部乗せられたよ。

笑っちまうのが、俺達二人でお化け屋敷に入った事。

二人共、身体の中に化けモン宿してるってのにお化け屋敷はないよな?(笑)

蛍は作り物の幽霊見て、泣きそうになってやがった。

夕方まで遊園地で目一杯遊んで、晩飯はお決まりのハンバーグ!

幾つになっても、子供みてぇに本当嬉しそうに食いやがるんだよ。

二百グラムが食いきれねぇって嘆いてたなぁ。

その後、店を出た俺達はババアの家に向かった。

ババアは家の前で俺達を待っていた。

婆「蛍ちゃん…。よく来たねぇ…。」

そう言うとババアは裏庭の方へ歩き出した。

匠「蛍?行こう。」

蛍はキョトンとしていたが、ゆっくりとババアの後に続いた。

池に到着したババアが蛍に言う。

婆「蛍ちゃん?水に足を浸けてくれるかい?」

だが、蛍は首を横に振る。

匠「蛍…。」

蛍は下を向き、小刻みに震えている。

その時、ババアが池の水を蛍に浴びせた。

「ぎぃぃぃぃぃぃ〜!!」

蛍から発せられた悲鳴の様な声。

それは明らかに蛍の声ではない。

パァ―ン!!!

乾いた音が響く。

ババアが手を打ち、不動の法をかけた。

蛍の両腕が拡がっていく。

これで蛍は暫く身動きがとれない。

婆「ヒヨっ子!

ぐずぐずしてる暇はないよ!

私は術式の最中だ!

動けるのはお前だけだよ!」

覚悟は出来ていた…。

こうなる事は分かっていた。

ここに来るまではそう思えてた。

でもよ?走馬灯みてぇに流れんだよ。

初めて会った時、椅子に座って涙を流しながら微笑んだ蛍の顔…。

他人には見えねぇ犬を嬉しそうに撫でる蛍の顔…。

キャ―キャ―言いながら楽しそうに笑う蛍の顔…。

子供みてぇに旨そうにハンバーグを頬張る蛍の顔がよぉ…。

俺は動けなかった。

立っていることすら出来なかった。

婆「ヒヨっ子!!なにしとるか!

お前は蛍ちゃんを本当の化け物にしたいんか!!

今ならまだ蛍ちゃんの人格を残してやれる!

はよせんか!!」

蛍…。蛍…。

その時、周りの空気が震え、ババアが後ろへ飛ばされた。

ババア?!

?!蛍は?

すぐに蛍に目をやると、蛍は山の更に奥へと駆けて行く。

ババアはすぐに立ち上がり、蛍の後を追って行った。

俺もいかねぇと…。

分かってはいるが、身体が動く事を拒む。

動け!動け!

俺は拒む身体を無理やり動かし、這うように二人の後を追う。

早く!早くいかねぇと。

涙で前が見えず、身体も動く事を拒み続ける。

「ぎゃあ〜!!」

?!悲鳴?!

俺は必死で声がした方へ向かう。

?!

地面に座り込み、腕を抑えるババア。

それを見下ろす蛍。

蛍はババアを見下ろし嗤っている。

おいおい…。

これじゃあ、俺と同じじゃねぇか…。

過去の記憶が甦る。

母親を殺した俺。

死に行く母親を見ながら嗤う俺。

蛍も俺とおんなじになっちまうのか?

あんなに優しい蛍に人を殺させんのか?

蛍…。蛍!

蛍はゆっくりとババアに向かって手を伸ばす。

俺は二人の元へ駆け出そうとした。

「いっ!」

俺の左肩にある忌まわしいアザに激痛が走る。

痛みで動く事が出来ない…。

くそ!こんな時に何だよ!

蛍が…蛍が人殺しになっちまうんだよ!!

俺の邪魔してんじゃねぇぞ!

くそが!!

俺は身体中に力を込め、崩れかけていた身体を起こした。

ババアの首に蛍の手がかかる。

?!

次の瞬間、俺の腕は蛍の胸を貫いていた。

蛍の身体を傷付けてはいない。

俺の霊体で、蛍の核もろとも蛍に宿るモノを貫いた。

これで蛍に宿るモノは消滅する。

だが、それは同時に蛍の死を意味した…。

ゆっくりと崩れ落ちる蛍を抱きかかえる俺。

匠「蛍…。蛍!」

蛍「匠?どうし…たの?

何で泣いてる…の?」

匠「泣いてねぇ…よ…。

蛍…。ごめんなぁ…。」

蛍「ど…どうしたの?

きょうのた…たくみ変だよ…?」

匠「何でもねぇ…

何でもねぇよ…」

蛍「私…ど…どうしたん…だろ?

何だか…か…身体があったか…いんだ…。

風邪で…もひいちゃった…かな?」

匠「あぁ…。遊園地であんだけ馬鹿みたいに騒いでたら、そら疲れもでるよ!

ほんと…馬鹿みてぇに騒ぎやがってよ…」

蛍「そうだ…ね(笑)

疲れてるの…かも…。

ちょっと眠くなって…きちゃった…」

匠「あぁ…

ゆっくり寝ろ…

俺が起こしてやるから…

今はゆっくり…」

蛍「じゃあ…ちょっとだ…け寝るね…。

匠?私がおき…たら…

ハンバーグ食べにい………」

匠「あぁ!毎日でも、三食ハンバーグでも構わねぇ!だから…だから死ぬなよ!

蛍!蛍!

死ぬなよ〜!!また俺が一人になっちまうだろうが…。」

蛍はそのまま目を覚ます事は無かった。

髪は艶のある綺麗な黒髪に戻り、最後はちゃんと蛍のままで…。

「匠?ハンバーグ食べに行こ?(笑)」

Concrete
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mami様。

やっぱり気になりますか?
そうですよね…。
気になりますよねぇ…。
そうですか…。

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セレ―ノ様。

プッ、プレッシャーなんて、か、感じませんよ(;´д`)

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珍味様。

だって…だってぇ〜(T-T)

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むぅ様。

コメントありがとうございます!
本当になんという事でしょう…。

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